響12年、ヨーロッパ先行発売
響12年/700ml/43% |
まず響12年。響ブランドには17年、21年、30年の3製品があるが、12年はまったくの新製品ということになる。ところが12年は5月中旬から欧州で先行発売される。日本発売は秋以降で発売日、価格はまだ公表されていない。日本人よ、待て、という珍しい製品の登場だ。
すぐにでも入手したければ5月中旬以降にでもヨーロッパ旅行をして買い求めるしかないだろう。おそらくイギリス、フランスあたりならば入手しやすいはずだ。
ニュースリリースを要約すると、トップノート(最初の香り立ち)はフルーティ、つづいてハチミツやカスタードクリームの甘い香り、味わいは柔らかい甘みが特長的で、サントリーの真価ともいえるエステリー(花や果実を想わせる甘い香味)な感覚にあふれていることだろう。そして余韻は軽い酸味とスパイシーさ、となる。
キーモルトは梅酒樽後熟原酒であるから、トップノートのフルーティさ、余韻の酸味は梅酒樽原酒由来のものといえる。
梅酒樽熟成原酒とはどんなものか。大多数の読者にとっては未知の香味のはずだ。昨年9月に山崎蒸溜所<梅酒樽後熟>というシングルモルトが発売された。それを飲めばわかるのだが、なにしろバー限定3,000本の希少品。いまとなっては大切に保管しているバーを探すしかない。
12年以上熟成のモルト原酒を梅酒を寝かせた後のオーク樽に2年間後熟したもの。味わいには爽やかな甘酸っぱさがあり、口中香の余韻に梅酒のような香りが感じ取れる。非常に面白味がある。こういう特色ある香味のモルトが響12年のブレンドのドレスアップに使われている。
輿水チーフ、会心の作
先日、サントリーのチーフブレンダー輿水精一氏と話をする機会があった。わたしが気になったのは余韻のスパイシーさだった。「30年以上の古酒もブレンドしています。その中にはクセのあるモルト原酒もあり、いままで以上に意識して使用しました。それらがスパイシーな感覚を醸し出しているといえるでしょう」
輿水チーフ語録のひとつ“優等生ばかりじゃ面白くない”のひとつの答えが響12年にはあるのだろう。さらには、グレーンウイスキーにも特色がある。
「何タイプかのグレーンウイスキーを使っていますが、その中にはグレイニーといわれる原料のとうもろこし由来のしっかりとした香味や、オイリーな感覚をたっぷりと持ち得た特色あるグレーンを使用しています。ブレンデッドの香味バランスやおいしさは、土台となるグレーンがしっかりとしていなければ生まれません」
特色あるグレーンウイスキーとは何か。鋭い読者は製法の想像がつくかもしれない。わたしはある程度わかっているのだが、現段階で憶測をまじえて語るのは控える。これに関しては、日本発売の頃にはセミナーを通じてその秘密が明かされることだろう。
次ページでは輿水チーフの香味設計時の想いを伝え、3ページ目でもうひとつの気になるウイスキー、アードベッグ スーパーノヴァについて語る。
(次頁へつづく)