香りの花束を愉しもう
男性である私が女性を讃える点は、好奇心の強さだ。そしてモノゴトを貪欲に愉しむ精神性は男性よりもずっと高いものがある。酒の世界にしてもワイン、本格焼酎とつづいたブームは女性の貢献度が大だ。よく勉強し、自分なりの愉しみ方ができる。
洋服、アクセサリー、香水といったファッションに敏感なぶんだけ、酒に関しても女性の方が感度が高いのではなかろうか。男性というのはどうも画一的な世界から抜けきれないでいる。
バーでシングルモルトウイスキーを飲む男性たち。いつも飲んでいるオフィシャルボトルの一杯なのに、テイスティンググラスに鼻を突っ込んで、一応したり顔をする。
カウンターで何人もの男性たちがそれをやっている姿は、みんな仲良くビー玉ごっこのようでおかしい。格好悪い。
ひとりぐらい、バーで同じ金を払うんだったら洒落たグラスで愉しもうとする奴がいてもいいのに。
中華料理店で食後にライチのシャーベットを食べながら「ちょっと変わったレモン味だな?」と言ってた人間が、花の名も知らず花の香りにさえ興味を示したことがなく、彼女が髪を切ったことさえ気づかない人間が、バーカウンターではブレンダーや鑑定家を気取る。それだけバーが非日常の素敵な空間であり、ウイスキーの深い熟成感が人々を魅了するからだと、好意的に見てあげてもいいのだけれど。
さて女性のあなたは、グラスを花器、花杯と思っていただきたい。花杯に満たされた香りの花束をこれから愉しもうとしているとしよう。
バラの花束をイメージする
感度が高い女性たちのために、わかりやすいたとえをする。まずは次の4つのバラの花の姿をイメージして欲しい。1.赤や白、黄といったバラをメインにして、カスミソウをはじめとした小花をアレンジした花束。
2.赤や白、黄といったバラだけの花束
3.赤いバラだけの花束
4.赤いバラ一輪
これらはそれぞれに美しく個性がある。さてイメージできたなら花杯を手にして先へ進もう。(次頁へつづく)