自己陶酔の男がいた。

7月、サントリー山崎蒸溜所で4日間もウイスキーづくりの勉強をした。その間に、“男は読むな!いい女に贈る記事”シリーズを連載する発端となったあるシーンがよみがえった。忘れかけていた初心を思い出したのだ。

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サントリー山崎蒸溜所のブレンダー、竹内義人氏。
きっかけは『山崎蒸溜所“仕込水”割り オン・ザ・ロック ウイスキー』という小さな一瓶にある。
これはチーフブレンダーの輿水精一氏の指揮の下、ブレンダーの竹内義人氏が開発を担当した製品だ。その竹内氏と話しをしていた時に、今年1月の銀座のモルトバーでのワンシーンが突然浮かび上がった。

銀座のそのモルトバーへは、年配者に連れて行っていただいた。店の名は知っていたのだが、私ははじめてだった。というのは、ウイスキーファンではあるが、どうだ、モルトウイスキーがいっぱいだぞ、と主張してくるいかにも的なバーを私は好まないからだ。

そのバーへ入ってしばらくすると、私の横に30歳前後のカップルが座った。男女ともルックスがよく、ふたりともビジネス・スーツがよく似合っていて格好よかった。
ところがだ。男がいい気持ちになりたかっただけなんだな。俺は時々こんなところで飲んでいるんだ、と顕示したかったんだと思う。
さっさと自分の飲みたいシングルカスクのウイスキーを注文し、君は何にする、と女性の方へ聞いた。女性は明らかに居心地悪そうだった。厚いウイスキー・リストをめくってはみたものの、何も見ていない目だった。バーテンダーが「カクテルでもおつくりしましょうか」と話しかけなかったら、彼女はどうしていただろうか。

バーテンダーがいろいろと質問して、低アルコールのフルーツ系の甘いカクテルを用意して、なんとなく彼女のお尻の座り心地もよくなったようだ。
だが、男はその後も格好つけてグラスを鼻に近づけて香りをかいだり、シガーをふかしたりと、ひとり酔っていた。女性の方はずっと落ち着かない。これではバーで過ごす時間はつまらないものになってしまう。

水割り
『山崎蒸溜所“仕込水”割り オン・ザ・ロック ウイスキー』225ml、¥362(消費税別)

その時にふと思ったのだ。女性のためにバーとウイスキーの世界を書こうと。幼稚な男子に連れられてバーへ行き、つまんない思いをしなくてもいいように、ちょっとした情報を伝えていこうと決心したのだった。そう言った意味では、あの自己陶酔ボクちゃんに感謝しなくてはならない。

話は長くなってしまったが、それでなんで『山崎蒸溜所“仕込水”割り オン・ザ・ロック ウイスキー』なんだろうということになる。
実はこのウイスキー、コンビニのローソンの酒類取扱店でしか売られていないのだが、抜群に旨いのだ。すでに水割りであるから、アルコールも12%と低く、味わいも甘くフルーティな香りと柔らかな口当たりで、女性にとくにおすすめしたい一瓶である。

こういうウイスキーを紹介したくて、このシリーズをはじめたことも、竹内氏と話していて思い出したのだ。ではこれからこの一瓶について語る。