エレベーターで3階に上がり、店内に入ってすぐそばにたくさんの旬のフルーツを入れたショーケースがある。フルーツショップと勘違いしそうなその出迎えはバーらしくはないが、他はバーらしい寛ぎの空間がたっぷりと広がっている。
長いカウンターの客が座る背後にはスコッチとバーボンのアンティークボトルがディスプレイされている。その数は凄いのなんのって、とにかく圧倒される。実は北添氏に本数を聞くのを忘れたのだが、おそらく200以上はあるはずだ。
圧倒されるのは数ではない。100年以上前のボトルがあったりして、歴史的価値が非常に高い。驚くのは20世紀初頭のマッカラン・グレンリベットがトイレに飾ってあるのだ。私はコレクターではないからどれくらいの額で売買されるのかわからないが、高価なんてものではないだろう。それよりもやはり歴史的価値だ。
余談だが、スコッチの産地区分としてスペイサイドがあるが、この呼び方は非常に新しい。かつてあの地方はグレンリベットと呼ばれていた。スコッチのブレンダーたちがスペイサイドと呼び出しはじめたのは1970年代に入ってからのことなのだ。
だから私にとってはラベルから歴史的背景や変遷を読み取る面白さがあり、20世紀初頭のマッカラン・グレンリベットを眺めるだけでいろいろな想像が働く。
独立した部屋が4つもある。
このアンティークボトルはイタリアのコレクターの遺産を北添氏が受け継いだものだ。おそらくかなりの投資をしているはずだ。ショット売りもするそうだが、サービスできるものとそうでないものがある。つまり、まだすべてのボトルの相場を調べきれてなかったり、あまりにも高価すぎて、バーという空間では売るに売れない価格だったりするからだ。私は多くがサービスできないのではと読んでいる。さてもう少し店内のことを話そう。なんと小部屋が4つもある。4人利用がふたつ。あとは7人と8人の部屋。奥の2部屋は開け放して1部屋にできるから、詰めれば14~15人ぐらいはいけるか。
カウンターはひとりかふたりでじっくりと。そして大人数の時は小部屋でと色分けがしっかりとなされている。(次頁へつづく)