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ウイスキー&バー/この店の、この一杯

この店のこの一杯 第33回 背伸びして知る、バー本来の姿。

『スランジーバ』のオーナーバーテンダー小松利春氏は、銀座一筋に40数年。古き良き銀座を知る彼の店には上客が集う。若い世代にはちょっと似つかわしくないバーだが、ちょっと背伸びして出かけてみるのもいい。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

ウイスキー&バーガイド

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『スランジーバ』は銀座並木通りの南、新橋に近い8丁目にある。
20代、30代の飲み手は、ちょっと腰が引けるかもしれないバーだ。
何を根拠に年齢で語るのかと問われると困るのだが、店内に流れる空気感というしかない。若い人は横に年配者が座ってくれていないと落ち着かないはずだ。
40代から上の人が似合う店で、若い人がこの記事を読んで訪ねてみたいと感じたなら、年配者を誘って同行を願うことをすすめる。

壁には村松秀太郎画伯の裸婦画が飾られている。村松画伯は渡辺淳一の小説『失楽園』連載時の挿画で知られるが、その時のスケッチのいくつかはこの店内の常連客たちがモデルになっている。
並木通りに面した窓側はシックなソファ席で、45歳の私でもそこでゆったりとくつろいで飲むにはまだ人生が足りないような気がする。特別凝ったつくりではないが、シンプルさが老舗の街、銀座のバーという印象を強調している。

店主は小松利春氏。ベテランバーテンダーだ。
1960年(昭和35)に15歳でバーの世界に入った。それから43年、銀座一筋に生きてきた。古き良き時代の銀座を知り、移り変わりを見つめてきた人だ。
小松氏の語る銀座の変遷は、ヘタな本を読むよりかはずっと面白く、しかも勉強になる。銀座の奥深さを知るだけでなく、たとえば夜の町として語ってくれるだけで、バーやクラブが日本経済のいまを映す鏡であることを知る。
グラスを傾けながら、いっぱしの事情通になったような気分になる。とてもいい酔い心地なのだ。
バーの本来の姿はこれだ。客をいい酔い心地にする。これがバーなのだ。
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