『MAIN BAR COAT』は信州・松本の人気店だ。
店主は林幸一氏。1998年12月に故郷で独立した。20代の修業時代から知っていて、どんな店をつくったか気がかりで東京から出かけて行ったことがある。
だが杞憂だった。「あっぱれ幸ちゃん」と叫びたくなった。
蔵をモチーフにした建物の2階にあるが、階段にたどり着く前にふたつの扉を開けなければならない。はじめにオーク材にガラスをはめ込んだ扉。次に真鍮のポストのある門扉。どちらもいいセンスで高級感に溢れている。両脇に木の手摺りのついた階段を上がると見事なカウンターに目を見張る。ピューラーという米松で、15センチもの厚さがある。客側の端は木肌を自然のままに残してある。
はじめて訪ねたなら、皆一様に唸ることだろう。
いま林氏には円熟味が加わりはじめた。NBA(日本バーテンダー協会)全国大会での日本一、国際カクテルコンペティション日本代表など競技者としての時間を経て、自信とともに人間としての落ち着きが生まれたように思う。
手首の返った大きなシェークから生まれる味わいには甘酸のバランスが取れた中に、深みが口中に沁みわたる。
シングルモルトをはじめとしたウイスキーも充実してきた。
ここではカクテルを飲むことが多いが、アイラモルトもたまに口にする。林氏がアイラには秋田の“いぶりがっこ”が合うと言ってきて、やたらすすめるからだ。面白い取り合わせだと思う。
ちなみに野沢菜もウイスキーとよく合うのだ。(写真/筒井義昭)
MAIN BAR COAT
長野県松本市中央2-3-24 ミワビル2階
Tel.0263-34-7133
18:00~3:00(日祝18:00~24:00) 不定休
チャージ¥800、ウイスキー¥700~、カクテル¥800~
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