代 償
氏名を公表されたことで、世間の目は好奇と侮蔑の矢となって男の家族を突き刺した。男の妻は体調をくずして入院し、家族はいたたまれなくなり人知れず引っ越した。(娘は自分を許してはくれないかもしれない。妻は離婚はしないまでも、やはり許してはくれないだろう。私はこの先一生、世間から後ろ指を指されるのだ。死んだところで、葬儀の場ですら、皆がこの事件のことを話題にするだろう。残りの人生は死ぬまで、いや死んでも「児童買春をして恐喝までした男」と言われ続けるのだ…)
それほどまでに、少女との出会いが価値のあったものなのか、今となっては男にもわからなかった。たった一度の出会い。あれほどまでに熱くなった少女への執着。少女の情報を得るためにやったことのすべて。熱に浮かされたような日々は、たしかに存在した。あの頃のあの充実感と興奮は、かつてなく、そして二度と得られないものだった。とはいえ、失ったもののほうが間違いなく大きい。代償は限りなく高く付いたのだ。
男の携帯電話は証拠物件として押収されていた。もう二度と、携帯電話を手にすることはないだろうと思う。
(私の人生をくるわせたのは、携帯電話だ。いや、出会い系サイトか。あの少女か)
だが、いずれも間違った利用法をしない、手を出さない人のほうが多いのだ。ましてや、男はいい年をした大人であった。少女が援助交際を申し出たとしても、それをいさめるべき年齢であり、自分から望んでもいけない立場だったのだ。奇しくも、男の頭の中に浮かんだ言葉があった。
(自業自得…か)
しかし、家族にはまったく罪のない話ではあった。そして、誰ひとりとして得をしたわけでもない。関係者すべてをやるせない思いにさせて、この事件は幕を閉じたのである。
「出会い系サイト」がもたらしたこの事件は、たった一度の出会いでも、児童買春、個人情報の流出、ストーカー行為、そして恐喝という犯罪まで生み出すという教訓を世間に知らしめたといえるでしょう。
■出会い系サイト規制法が成立■
児童買春や売春の温床となっている「出会い系サイト」を規制する「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」が6月6日、参院本会議で可決、成立しました。
この法律では、児童(18歳未満)に性交渉や金銭・物品の授受を伴う交際の勧誘をした場合、100万円以下の罰金が科されます。誘った児童も罰則の対象となり、少年法の規定で、保護観察などの保護処分となります。
“出会い系サイト規制法”が施行されました。新規記事でご覧下さい。
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