※この連載記事は、実際に起きた事件をベースに「出会い系サイト」で起こりがちなトラブルのケースとして構成してあります。[全6回]

あり得ない出会い

17歳の女子高校生と63歳の男。十代の少女たちからすれば普通は自分の両親の親、祖父母の年代であり「おじいちゃん」と呼ぶ、祖父と孫娘の年齢差である。46歳差つまり男が46歳の時に生まれた女の子だ。

これが二十代や三十代の女性と六十代、七十代の男性ならば、まれに結婚することもある。芸能人などに見受けられるパターンである。しかし、当たり前に考えれば、これだけの年齢差では恋愛になど発展しない。そもそも未成年と男女の仲になろうという六十代の男性は、常識で考えればありえないのだ。もしくは、仮に願っても実現させることは少ないはずだ。

72歳で17歳の少女に恋をしたドイツの文豪ゲーテは、その失恋の苦しみを芸術に昇華させた。しかし、売買春という対価を介在させた関係を発端としたこの出会いは、芸術とはほど遠く、見苦しい六十男のストーカー行為、脅迫未遂事件へと発展していったのである。


その男と少女はいかにして出会ったか。「携帯電話の出会い系サイト」であった。少女はごく普通の高校生であり、とくに目立ったり問題行動があったわけでもない。

「1回で、数万円は手に入る」という情報は、子どもたちの間では常識で、クラスの何人かはその経験があるらしいと少女も噂では知っている。高校生にとっては数万円というのは使うことはたやすいが、手に入れることは難しい金額である。

アルバイト?

通常のアルバイトならば、2万円を稼ごうとすれば時給が800円なら25時間。一日5時間働いたとしても5日間かかる。3万円を手に入れようとすれば時給800円で37.5時間。1日4時間なら約10日間を必要とする。地方の高校生のアルバイトなら時給は700円とすると42.85時間。1日3時間なら約15日間働いてやっと手にすることができる金額である。つまり半月はかかるのだ。

それが、2~3時間つきあえば手に入るとなれば、若く思考力の浅い年頃ではつい…と、思ってしまう子も出てきてしまうだろう。この17歳の女子高校生も、どうしてもお金が必要だった。そして、援助交際すなわち売春を思い立ったのである。

「出会い系サイト」で、何人かとやりとりをした結果、その中で金額(3万円)を提示してくれた男と会うことに決めた。年齢は五十代と言っていたが、自分の父親よりも上である。「お金をくれるオヤジ」と割り切った。

暗くなってからのほうが人目につかないと思い、約束の時間を午後7時にしていた。家族には友人と会うと言って出てきた。約束の場所に男はいた。

「あのぉ」
「あ、メールの人?」
「はい」

男は驚いたような顔をしている。ヤクザ風でもなく、ごく普通のおじさんに見えた。