防犯/防犯小説

【連載第6回】最終回・法律は見逃さない!裁かれる男 出会い系サイト~男の代償(2ページ目)

[6/6]脅迫状を送りつけてきた男。警察署に届け出る母娘。男は自分のしたことに対して、いかなる責任をとることになるのか。出会い系サイトでの出会いとは何だったのか?

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

「大変だけど、がんばるのよ。これを乗り越えないと、何も解決しない。あなたは自分のしたことの責任を取るのよ」母の言葉に、無言でうなずいた。

(責任かぁ。無責任ってわけにはいかないんだな。逃げ出すこともできないんだ)

そもそもが携帯電話の出会い系サイトであった。たった一度の“援助交際”が、とんでもない事態になっているのだ。自分がそんなことをしなければ起きなかった事態でもあることを少女はよくわかっていた。もちろん、男があのまま自分のことを忘れてくれれば済んだことではあったが、今さら言っても無駄なことだった。

(事情聴取はいやだけど、これをクリアしないと、解決しないんだ。いやなことでも自分が引き起こしたことなんだから。これが責任を取るってことなのか)

17歳にしては重すぎる責任のように感じたが、責任を取ることの意味が分かったような気がした。受験勉強で覚えた四字熟語が頭をよぎった。『自業自得』…。

※自業自得[じごうじとく](仏〕 自分のおこないの結果を自分が受けること。一般には悪い報いを受けることにいう。「―だからやむを得まい」「大辞林 第二版」より

少女が度重なる事情聴取に耐え、脅迫状やさらに届いたメールなどから、警察は男を突きとめた。

逮捕・裁判・判決

男の元にある早朝、数人の刑事が訪れた。手には逮捕状を持っている。顔面蒼白になった男は、事態を飲み込むのが早かった。十分身に覚えがあったのである。「児童買春禁止法違反および恐喝未遂容疑」で男は逮捕された。

男は役所を依願退職し、無職となった。裁判が始まり、公判では少女の個人情報を得た手口が次々と明らかになっていった。また、年齢が63歳であるのに、少女には五十代と言っていたこともわかった。男は、少女側に賠償金を支払うことを申し出た。

地方検察庁は男に懲役3年を求刑。10日後に判決が言い渡された。
判決は、懲役3年、執行猶予4年であった。

裁判官は、次のように判決理由を述べた。

『犯行は破廉恥かつ卑劣である。許し難く悪質だが、すでに少女に謝罪し、賠償を約束している』

※破廉恥[はれんち]
人として恥ずべきことを平気ですること。人倫・道義に反すること。また、そのさま。恥知らず。「―な人間」「―極まりないふるまい」
※破廉恥罪[はれんちざい]殺人・強姦(ごうかん)などのように道義的な非難を受けるような犯罪の総称。「大辞林 第二版」より



判決を言い渡されて、男は裁判官に向かって神妙に頭を下げた。その後ろ姿は、ガックリと落ちた肩に痩せた背中、脂気のないほとんど真っ白になった頭髪で、年齢以上に老け込んで見えた。

少女とのただ一度の出会いから、約13ヶ月、一年以上が経過していた。
だが、男にとってこれですべてが終わったわけではなかった。まだ、支払うべきものが残っていたのである。


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