当初は、医療効果が高いと信じられていた 

 
スプリッツァー

スプリッツァー

 ウイスキーのソーダ水割り、ウイスキーハイボール人気がつづいている。そこでしばらく、炭酸水、そして炭酸飲料の歴史について語ってみたい。3年以上も前のことになるが『ウイスキーハイボールの歴史1・酒をソーダ水で割る』からはじまる4回のシリーズをおこなった。今回からはウイスキーや酒に絡む話だけではなく、炭酸飲料が広まり、愛されていった歩みを探っていく。
 さて、ヨーロッパでは天然の湧水である炭酸水を飲む習慣が古くからあった。炭酸水は病気に効くといわれていた。
 1750年、フランスのヴェネル(Gabriel F. Vanel)という大学教授が果汁の入った水に重層を加えた炭酸水(ソーダ水割レモネードのはじまりとの見解がある)を医療用に提供しはじめる。やがてヨーロッパの科学者たちは炭酸飽和というプロセスを利用して、炭酸ガスを人工的に水に溶かす方法を研究するようになる。
 1769年、ジョゼフ・プリーストリー(Joseph Priestley/イングランド)が水に二酸化炭素が溶け込むことを発見。1771年にはトルビョルン・ベリマン(Torbern O. Bergman/スウェーデン)もプリーストリーと同じような炭酸水の製法を発明する。
 1771年頃に炭酸水にキニーネをはじめ香草、果皮を配合したトニックウォーターが開発され、イギリスが統治する熱帯の植民地で医療効果が高い飲料として飲まれはじめたといわれている。(1771年という誕生年は不確実、その前後)
 1783年、炭酸ミネラルウォーターの製造機械を発明したドイツ人のヨハン・ヤコブ・シュベッペ(Johan Jacob Schweppe)がスイスのジュネーブでシュウェップス社(Schweppes)を創業した(1799年に彼は会社を売却。社名はそのままに、後にロンドンに移転)。
 1813年、イングランドのチャールズ・プリンス(Charles Prince)がソーダサイフォンの原型を開発する。
 かつて『ハイボールの話1[ブランデー&ソーダ]』で「スプリッツァー」(Spritzer)に触れた。オーストリア=ハンガリー帝国時代の19世紀前半、繁栄していたハンガリーのブタペストに大規模な炭酸水製造工場が建設された。そこから、おそらく炭酸水と酒が結びついてポピュラーになった最初のカクテル、白ワイン&ソーダの「スプリッツァー」が瓶詰めされ、ヨーロッパに広まっていった。これは19世紀半ばには大人気となっていたようである。
 

炭酸飲料大国、アメリカでの普及

 
サントリー天然水スパークリング

サントリー天然水スパークリング

 19世紀に入ってすぐにアメリカにも炭酸水の製法が伝わり、1807年にフィラデルフィアの薬剤師、タウンゼント・スピークマン(Townsend Speakman)が果汁シロップと砂糖をソーダ水に混ぜたドリンクをつくる。翌1808年には自身のドラッグストアで販売を開始した。これが現在の炭酸飲料の元祖だという説がある。(1750年レモネード元祖説、1771年トニックウォーター元祖説もあり)
 アメリカでも病気治療薬として信じられ、そのためスピークマンの炭酸飲料開発以降、各地のドラッグストアで、つまり薬剤師によって炭酸水が販売されるようになる。レモンやバニラなどさまざまな味つきのソーダ水はたちまちにして大人気となった。
 大昔にジンをはじめとしたスピリッツ(蒸溜酒)に薬効があると信じられ、ヨーロッパでは薬局で取り扱われていたように、炭酸飲料もまた同様に扱われていたのである。貴重な飲料であったのだ。
 いまを生きるわたしたちは幸せだ。日常的に気軽に炭酸水を飲むことができる。いまわたしは「サントリー天然水スパークリング」(500ml・¥100希望小売価格)を口にしながらこの記事を書いている。
 適度なミネラルを含んだ天然水に強炭酸の刺激。すっきりとした透明感あふれる冴えた飲み口と後味の爽やかなキレは仕事をしながらの小休止にふさわしい。アタマも冴えるような気がする。
 さて、1832年にアメリカでは、ニューヨークのジョン・マシューズ(John Matthews)が炭酸水製造のための専用機器(ソーダ・ファウンテン/ドリンク・ディスペンサー)を開発、販売する事業をはじめている。同時期にマシューズの従業員だったオールド・ベン(Old Ben/解放奴隷だったので愛称)がニューヨークで最初のソーダ水販売店を開業した。
 では今回はここまで。次回は19世紀半ば以降の話をしたい。
(『炭酸水とハイボールの歴史2/セルツァーとは何だろう』はこちら)
 

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