「シングルモルト山崎2020 EDITION」5品の味わい評価
左から、ワイン樽、スパニッシュオーク、ミズナラ、パンチョン、ホッグスヘッド、バーレル
前回記事『いま、バーでおすすめシングルモルトウイスキー・前篇』につづき、「シングルモルト山崎2020 EDITION」のテイスティング・ノートを含めた、味わいについて解説してみたい。
数量限定品であり、しかもバーを中心に料飲店向けに発売されたもので、目にすることは少ないかもしれない。前篇で述べたように、シングルモルト山崎(ノンエイジ)、「山崎12年」、「山崎18年」、「山崎25年」の構成原酒を熟成樽種別に製品化し、それぞれの香味特性を伝えるものである。
熟成樽が育む香味をじっくりと堪能するマニアックなウイスキーといえよう。アルコール度数も48%と高い。モルトウイスキーのつくりを理解していればいるほど楽しめる。ある意味、ウイスキー初心者には手強い、といえよう。
山崎パンチョン2020EDITIO
700ml・48%・¥11,000(税別希望小売価格/以下同)
アメリカンオーク(ホワイトオーク)のパンチョン樽は容量480(~500)リットルの大きくずんぐりとしたスタイルで、本来はラム酒の熟成に使われていた形状である。熟成がゆるやかにすすみ、長期熟成に向いている。
しかしなら、この樽の使用は現在、世界的にも極めて稀といえる。スコッチやアイリッシュではほとんど見られないといってよく、山崎が誇る独自の伝統的熟成樽と言えよう。
記憶は定かではないが、かつて味わった山崎パンチョンの香味は、桃やバニラ、ココナッツの感覚がわたしにはあった。この2020エディションには青りんごのような、メロンもあるかな、といった異なるフルーティーさがあり、味わいにはややバター的なニュアンスが感じ取れる。また独特のほのかなほろ苦さもあり、それがまた印象的である。
Tasting Notes
色 明るい黄金色
香り 青りんご、バニラ、アカシアハニー
味わい 柔らかく穏やか、バタースコッチ
余韻 オークのほろ苦さとほのかな甘み
山崎ボルドーワインカスク2020EDITION
700ml・48%・¥11,000
ワインカスクは「山崎」(ノンエイジ)の構成原酒のひとつではあるが、今回の製品はフル・マチュレーションで、ニューメイクから一貫してワインカスクで熟成させたものだ。いわゆるワインカスク後熟モルトではなく、それゆえ樽由来のワイン様の香味が明快に表現されている。
ベリー系の香りと味わいのなかに、独特のスパイシーさがあって面白い。熟成感のある濃厚なボルドーの赤ワイン的ニュアンスとフレンチオーク樽の特性がしっかりと伝わってくる。ワインを愛する方にも親しめるモルトウイスキーではなかろうか。
Tasting Notes
色 ほのかに赤みがかった琥珀色
香り ベリー系のフルーティーな甘さとスパイシー
味わい 複雑で濃厚なトロリとした口当たり
余韻 甘みと酸味、フレンチオーク由来のスパイシーさ
山崎スパニッシュオーク2020EDITION
700ml・48%・¥11,000
シェリーの貯蔵熟成の樽は、アメリカンオークとスパニッシュオーク(コモンオーク)が使われている。この製品は、シェリー貯蔵後のスパニッシュオークの樽で熟成させたモルトである。
サントリーが独自にスペイン北部の森でオークを選定。現地の製樽会社で厳格なスペックを伝えて製樽し、それにシェリーを熟成させた後の樽を使用するものだ。このシェリー熟成後のスパニッシュオーク樽でモルトウイスキーを熟成させると、ホワイトオークに比べ、タンニンといったポリフェノールを多く溶出する。そして原酒に濃厚な赤褐色の色調を与える。
熟した果実、ドライフルーツ、チョコレート、ナッツを想わせる濃厚なフレーバーを特長とするが、今回のこの [2020 EDITION] にはリッチな果実香に、独特の酸味、苦味が感じられ、新鮮味がある。
Tasting Notes
色 赤みがかった濃い琥珀色
香り レーズン、ドライトマト
味わい 濃縮感のある甘みと酸味
余韻 酸味とほろ苦さがつづく
次ページでは [2020 EDITION] のあと2品、「山崎ピーテッドモルト」「山崎ミズナラ」ご紹介する。(次ページへつづく)