ストレス

コロナDVを防ぐためにできること…外出自粛・ストレスが暴力に

【公認心理師が解説】新型コロナ自粛の影響で、各国でDVが増加しています。外出自粛で不安やストレスも高まる中で、イライラがパートナーに向かてしまうケースが見られます。コロナDV加害者、被害者にならないために、パートナーがお互いにできる対策法、そしてもしDVが発生してしまったときに相談できる機関について解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

新型コロナ自粛の影響で、DVが増加するのはなぜ?

パートナーによるDV被害

パートナーと連日一緒に過ごすことで増加が懸念されるDV。DV加害者・DV被害者にならないために、できることはあるのでしょうか?

新型コロナ感染症の拡大により外出自粛が続き、1日中パートナーと2人で家の中で過ごしている方も多いでしょう。そうしたなか、パートナーとの関係が悪化し、DVに発展するケースが増えているようです。

各種報道によると、フランスでは外出制限措置以降、DVが3割以上増加。イギリスではDV関連の電話相談が6割以上増加。国連のグテーレス事務総長が、DVの世界規模の急増に警鐘を鳴らしています。日本でも、電話相談やメール、SNSを通じた相談体制の新設の方針が発表されました。
 
コロナDVが増えている理由として、以下のようなストレスの影響が考えられています。
  • 仕事が激減するなど、経済的不安がいつまで続くのかわからない焦り
  • 外で発散していたストレスが溜まり続けることでのフラストレーション
  • そもそも行き違いも多かったパートナーと、1日中一緒にいなければならないストレス
これらが蓄積した結果、小さな行き違いをきっかけに、怒りを爆発させてしまうケースがあります。DVは密室で行われるため、何も対処せずにいると、暴言から、殴る・髪を引っ張るなどの手を挙げる行為に進み、さらには無理やり暴力的な性行為に及ぶなど、よりひどくなっていく懸念があります。
 

DVとは・DVに該当する行為

そもそも「DV(ドメスティック・バイオレンス)」とは何でしょうか。男女共同参画局による「ドメスティック・バイオレンス(DV)とは」では、以下のように定義されています。
 
DVとは、親密な関係にある配偶者や恋人、あるいは以前こうした関係にあった人から受ける暴力のこと。日本では配偶者からの暴力の防止と被害者の保護等を目的とする法律、通称「DV防止法」があります。

内閣府によると、DVに該当するのは、主に次の3つの種類の暴力です。
  • 身体的なもの…殴る、蹴る、髪を引っ張る、物を投げつけるなど
  • 精神的なもの…怒鳴る、暴言、馬鹿にする、行動を制限する、生活費を渡さないなど
  • 性的なもの…性行為を強要する、避妊に協力しないなど
 
またコロナ自粛によるDV増加の背景の一部には、飲酒の影響も考えられます。外出自粛によって家で一日中過ごさなければならないことにより、ストレス発散の手段としてアルコールに頼ってしまう人がいるためです。

アルコールは理性を司る大脳皮質の働きを弱めるため、飲み過ぎてしまうと、場合によっては衝動や欲望を抑えにくくなることがあります。すると、パートナーとのちょっとしたいざこざを機に、DVにつながってしまう危険も考えられます。
 

コロナDV加害を防ぐためにできること

本来は信頼関係を育み、お互いを思いやり、支え合って生活するのが理想的なパートナーシップです。しかし、さまざまな事情でそうした関係をうまく育てられない場合もあり、そうした二人が急速に良好なパートナーシップを実現するのは、現実的には難しいかもしれません。

そうした場合、ひとまず家の中でお互いがストレスを与え合わないように、すぐにできる意識的、物理的な工夫を試みましょう。パートナーについイライラを向けてしまいがちな人は、DV加害を防ぐために、以下のような点に注意しましょう。
  
■カッとなったらその場を離れる
怒りは一瞬でピークに達しますが、その直後に怒りをいたずらに刺激しなければ、自然に消滅していく感情です。そのためには、カッとなったらすぐにその場を離れること。できれば、外に出て家の周りを散歩し、頭を冷やしてくるといいでしょう。
 
■ストレス解消法のバリエーションを持つ
ストレス解消法が乏しいと、ストレスが発散できずDVにつながってしまうことも。ストレス解消法のバリエーションを増やしましょう。散歩、ランニング、サイクリングなど、体を動かしてストレスを発散させる、一人でオープンエアでできる方法がいいでしょう。

家の中では、何かに没頭できるストレス解消法を。資格の勉強に取り組む、創作活動をする。アクアリウム、ガーデニングなどで、生き物や自然に触れてみるのもお勧めです。とくに飲酒でストレスを解消している人は、ついついお酒に手を出さないためにも、何かに没頭する時間を持つとよいと思います。
 
怒りの感情への対処法としては、「キレずに「怒り」を伝える方法、5つのステップ」「ムッとしても怒りを引きずらない人の2つの特徴」「イライラ解消の効果的な方法…怒らず抑えたいときの2ステップ」「夫も被害者!? 「妻たちのDV」にご用心!」でも触れていますので、ぜひご覧ください。
 

コロナDV被害を防ぐためにできること

DV防止は本来、加害行為を行いそうな人が、自らの感情や行動のコントロールするべき問題です。一方で、被害を防ぐため、また、良好なパートナーシップを維持するためにできることはあるでしょうか? 深刻なDV被害の場合は、自助努力だけでは限界がありますので、早めに社会的な支援窓口に相談することが大切です。そこまでではなく、生活や行動の工夫で回避できそうであれば、以下のようなことを試してみてもよいでしょう。

■パートナーの感情を荒立てない行動を心がける
パートナーの思考と行動パターンを分析し、相手をイライラさせるような言葉や行動は、できるかぎり控えるようにしましょう。また、顔を合わせて食事をする時間に、相手のイライラが生じてしまうこともありますので、そうした懸念がある場合には、食事の時間をずらすのも一考です。
 
■家の中にそれぞれのパーソナルスペースをつくる
お互いが冷静になり、一人になれる場を作ることもよいでしょう。それぞれの部屋を持てない場合、お互いに離れた場所にパーテーションを置き、パーソナルスペースを確保するのがお勧めです。イライラした時には、そこにこもると落ち着くような場にしましょう。
 
DV被害の妻が夫婦関係を断ちきりにくいわけ」「相手を怒らせない伝え方と怒りの鎮め方のコツ」などもあわせてご覧ください。
 

DV発生時は我慢せず相談窓口へ

新型コロナによる非常事態は、まだしばらく続くかもしれません。イライラした気持ちを抱えている方は、攻撃的な気持ちにならないよう、イラッとした時にはその場を離れること。そして、ストレス解消の時間と手段を充実させていくことを心がけましょう。

また、パートナーがイライラしがちで自分がDV被害者になってしまう心配がある方は、相手の思考と行動のパターンを分析し、イライラしやすい時間帯には近寄らないこと。できれば、それぞれのパーソナルスペースを確保して、クールダウンできるようにしてみるとよいと思います。

とはいえそうした工夫をするのも難しく、DVを防止できない時には、我慢せずに社会的支援の窓口等に相談することが大切です。新設された電話相談窓口は、(0120)279889(つなぐ・はやく)。4月29日夜からは24時間で相談できるようになります。また、全国のDV相談の窓口は「配偶者暴力相談支援センター」で調べることができます。
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