見捨てられ不安とは、信頼する人が離れていくことへの強い不安

いつも恋人や友達がそばにいてくれないと不安でたまらない…そんな気持ちは「見捨てられ不安」のせいかもしれません
たとえば、恋人や友達に頻繁にメッセージを送り、すぐに返信をくれないことに「見捨てられたのかも」と強く心配してしまう。相手を失うのが怖くてたまらないため、相手の言いなりになって、いつも従ってしまう。少しでも批判をされたりすると、信頼関係が裏切られたような気持ちになり、深く傷ついてしまう。
「見捨てられ不安」が強いと上のような考え方にとらわれてしまうことがあり、人間関係の難しさを感じることが少なくありません。
<目次>
- 見捨てられ不安の原因……幼いころから続いている「思いぐせ」
- 「失いたくない」という不安から、相手を束縛してしまうことも
- 見捨てられ不安への対処1:不安の背景を知る
- 見捨てられ不安への対処2:不安との折り合いをつける「5つのポイント」
- 見捨てられ不安への対処3:心の中の「子どもの私」を安心させる
- 見捨てられ不安が強いなら、カウンセラーや医師に相談しましょう
見捨てられ不安の原因……幼いころから続いている「思いぐせ」
では、「見捨てられ不安」はなぜ生じるのでしょう?見捨てられ不安は幼いころに、親など親しい大人との関係のなかで生じた不安から起きる「思いぐせ」だといわれています。人は成長するにつれて一人で過ごす時間が増えていきますが、こうしたときに過剰に不安にならないのは、情緒が育っていく子どものころに、そばにいてくれた親しい大人との関係のなかで培われた安定感だと考えられています。
赤ちゃんは、泣いたときに抱っこしてもらえたり、やさしい声をかけて世話をしてもらえることで安心感を得ます。また、歩き始めた子どもは自分の行動を見守ってもらえることで、安心して外の世界に足を伸ばしていくことができます。
かんしゃくを起こした子は苛立ちを受け止めてもらえることで、「素直な感情を出しても大丈夫なんだ」と感じます。集団の中にいる子は、安心して過ごせる家庭などの場があることによって、外の世界でも勇気を出して活動することができます。
「失いたくない」という不安から、相手を束縛してしまうことも
「私の大切な人は、離れていてもいつも自分を見守っていてくれる。だから、私は一人でいても大丈夫なんだ」という安心感を持つことが、自立的に成長していくためには必要です。しかし、その思いを持てないまま成長すると、大切な人との関係を築いても「この人にいずれ見捨てられるのではないか」という不安が心のどこかにつきまとってしまいます。すると、たとえば好きな人ができたときに「見捨てられたくない」という不安が先行し、相手を失うことを過剰に恐れてしまうことがあります。その気持ちのまま相手を束縛すると、相手は交際を負担に感じてしまいます。
それでは、見捨てられ不安はどのようにしたら克服できるのでしょう? 大切なのは、自分の考え方や行動を見つめ直してみることです。ここでは、お勧めしたい3つの対処方法をお知らせします。
見捨てられ不安への対処1:不安の背景を知る
一つ目は、不安の背景を知ることです。前述したとおり、見捨てられ不安は、幼いころから続いていることが多いと言われています。幼いころの自分を振り返ってみましょう。つらかったとき、大切な大人にどのように接してほしかったですか? どのような言葉をかけてほしかったですか?
まずは、自分の不安な気持ちがどこから来ているのか、不安を解消するためにどんなかかわりを求めていたのか、じっくりと自分の気持ちを見つめてみましょう。
見捨てられ不安への対処2:不安との折り合いをつける「5つのポイント」
二つ目は不安との折り合いをつけることです。見捨てられ不安が強いと、「不安な気持ちを今すぐに解消したい」という衝動が高まります。そのため、友だちや恋人に「今すぐに不安を受け止めてほしい」という気持ちになります。その気持ちのままに衝動的な行動を繰り返してしまうと、相手は振り回されて関係が悪化してしまいます。
では、不安な気持ちが高まったときには、どうしたらいいのでしょう? 次の「5つのポイント」を行ってみましょう。
1. 他のことに目を向けて、不安をやりすごしてみる
2. 衝動的に行動せず、しばらくの間、不安な気持ちを抱えてみる
3. 「今週は○曜日に1時間話をしよう」など、あらかじめ会話の日時を設定する
4. 「話し足りない」と思っても、時間が来たら会話を終える
5. 「今すぐ会いたい!」と思っても、約束の日までがまんする
以上のことを続けていくと、見捨てられ不安と上手に付き合っていくことができます。
見捨てられ不安への対処3:心の中の「子どもの私」を安心させる
三つ目は、自分のなかに潜む「子どもの私」を安心させることです。見捨てられ不安は、心の中に残っている「子どもの私」が感じ続けている不安だと言われています。つまり、子どものころに強く感じた「見捨てないで!」「私だけを見て!」「私を置いていかないで!」といった不安な気持ちが、大人になっても解消されずに心のなかに残っていると考えられているのです。
見捨てられ不安を感じたら、「この不安は『子どもの私』が感じている不安なのかもしれない」と自分の気持ちを振り返ってみましょう。そして「心配しなくても大丈夫だよ」「さびしかったんだね。でも、心配いらないよ」というように、自分自身で「子どもの私」に語りかけて安心させてあげるといいでしょう。
そして、上の項の「5つのポイント」でお伝えした不安との折り合いをつける方法で、不安な気持ちに上手に対処することができたら、「つらかったのに、よくがまんできたね」と「子どもの私」をほめてあげましょう。
見捨てられ不安が強いなら、カウンセラーや医師に相談しましょう
このように、見捨てられ不安を抱えている人は不安の背景を知り、「5つのポイント」で不安との折り合いをつけ、「子どもの私」を安心させる、という3つの対処方法をできることからやってみるとよいでしょう。ただし、自分一人ではうまくいかなかいこともあるかもしれません。そうした場合、見捨てられ不安に詳しいカウンセラーに相談するのも一つの方法です。強い不安に何度も襲われたり、自制できない衝動に駆られている場合には、心の専門医を受診して相談するとよいでしょう。
見捨てられ不安は、子どものころから抱え続けている「思いぐせ」だと言われています。ぜひ、ご自身の不安を振り返り、できるところから不安をやわらげていくとよいと思います。
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