ストレス

毒親未満、でも親が苦手……30代からの実親ストレス対処法

【心理カウンセラーが解説】虐待のようなことをされたわけでもなく、病的な過干渉やネグレクトを受けたわけでもない。世間で問題になっている「毒親」ではないはずなのに、大人になっても親との関係がしんどい……。30代を過ぎても親や実家帰省をストレスに感じてしまう人のために、適度な距離の保ち方と前向きに関係を築くために大切な「4つの境界線」の考え方を解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

「毒親」とは……虐待行為はもちろん、プレッシャーや不要なストレスも

母娘

大事に育ててもらったはずなのに、大人になっても親が苦手……。良好な関係の築き方は?


「毒親」というものに明確な定義はありませんが、一般的には、「毒親」とは、子どもを支配したり、傷つけたりして、子どもにとって「毒」になる親のことを指して使われています。「毒親」はそもそも、スーザン・フォワードの著書『毒になる親 一生苦しむ子供』(講談社刊、玉置悟訳)が話題となり、この本をきっかけに生まれた俗語だとされています。
 
子どもに何らかのプレッシャーを与えるような言動から、ひどい虐待行為まで、「毒」とされる親の行動の範囲はさまざまです。
 
たとえば、子どもに暴力を振るったり、愛情を注がず罵倒したり、無視したり、養育を放棄したり、子どもに必要な教育を与えなかったり、性的虐待を行ったりするなどの虐待行為が見られるのは、誰の目にも明らかな、ひどいレベルの毒親でしょう。
 
また、それらのひどい虐待行為は見られなくても、子どもの個性を認めず、子どもの気持ちや考えを軽視したり、夫婦仲が悪く、子どもが安らぐ家庭環境を与えられなかったりする親なども、子ども自身が「毒親」だと感じていれば毒親だ、と考える方もいるでしょう。
 

毒親未満でも親子関係がストレス……子の重荷になりがちな親の言動

実際に、虐待行為をするような深刻な「毒親」ではないものの、会話の端々で子どもが傷つくことを言ったり、悪気なく子どものためにならないことや迷惑になることをしてしまったりするような、「毒親未満」の親に悩む方は少なくありません。
 
親子関係がストレスになるのは、子どものときだけではありません。成人して30代、40代と年齢を重ねてから、子が親との関係に悩むケースは多々見られます。成人した子に対して、「毒親的」なストレスをかけてしまう親の行動には、たとえば次のようなものが挙げられます。
 
・成人した子どもに、「高い学費をかけて育ててきたのに、この状態じゃあね……」「顔が悪いから、結婚に高望みしたってまず無理」など、無神経なことをズバズバ言ってしまう。
 
・たびたびお金を無心するのは「毒親」である一方、会うたびにお小遣いを与えてしまうのが「毒親未満」の親。これにより、成人した子をいつまでも幼子扱いしてしまう。
 
・子育てのサポートはしてくれるが、頼んでいないことにまで介入したり、合理性のない独自の育児方法を押しつける。
 
・愚痴や悪口などの長話を頻繁にする。ネガティブで陰気な言葉や、人を意地悪く言う話が多いと、聞く側は気持ちが沈んでしまう。しかし、半ば強引に聞かされる。

・子どものライフスタイルや好みを無視して、頻繁に物を送りつける。処分に困るようなものや高価なものを送ってくることもあり、子どもは「せっかく送ってくれたのだから感謝しないと……」という気持ちを抱えつつ、親切の押し売りのような好意にストレスを感じてしまう。
 
いずれも細かいことばかりですが、継続的にこれらの言動を受けている子にとって、ストレスが深刻なものになることは、想像に難くありません。
 

親に感謝できないのは親不孝? 自分の性格を責める子どもの心

成人してからもこれらのストレスを抱え続ける子は、時に自分を責めてしまいがちです。「こんなにしてくれているのに感謝できないのは、自分の性格に問題があるのかも……」「親にイライラしてしまうのを止めたい」と悩み、さらにストレスが増してしまうことがあります。

しかし、親子といえど、そもそも年代や生活環境、なじみの文化、個性は異なるのですから、合わなくて当然です。合わない親子の距離が近すぎてしまうと、お互いにストレスを感じてしまうもの。

距離が近すぎるために親を疎ましく思うのは、冷たい性格だからではありません。適度な物理的距離、精神的距離を保ちながら、お互いの意思やライフスタイルを尊重して付き合っていれば、自然とストレスは減りますし、互いのことを大切に思えるものです。
 

30代から整えたい、親とのストレスにならない関係の築き方

大人として、親との関係にストレスを感じずに適度な距離で付き合っていくためには、4つの境界線を意識しましょう。これらの境界線は人間関係すべてにおいて大切なものですが、特に物理的距離、精神的距離の近い親子関係では、ぜひ意識していただきたい考え方です。
 
1. 責任の境界線
相手が自力でできそうなことに、不用意に力を貸さないこと。親であれ子であれ、たとえば友だちが少ないなら、まず自力で探す。夫婦関係が微妙なら、まず自力で関係を修復する。人は「他人を当てにできない」と思えば、まず自力でなんとかしてみようとするものです。
 
2. 感情の境界線
「親がつらそうだから、私は自分の人生を楽しんではいけない」と思う必要はありません。本来、自分の気持ちは自分のもの、相手の気持ちは相手のもの。まずは、自分自身の感情を大切にしましょう。自分の感情を大切にすると、逆に余裕をもって相手の悲しみやつらさに寄り添うことができるようになります。
 
3. 時間の境界線
人と交流する際には、あらかじめ時間の枠を設けておくことです。「聞いてくれる人がいないから」と言って、親が愚痴の電話を頻繁にかけてくる時には、「私も忙しいから、9時までなら話を聞くね」というように時間の枠を作ります。すると、相手もその限られた時間を有効に使うことを考えるようになります。
 
4. 空間の境界線
同居、近居の人は特にこれを意識しましょう。家の中には、狭くても個人のスペースを作る。時には一人で出かけて、ドライブの車中やカフェなどの空間で、一人の時間を満喫する。個を大切にすると心に余裕ができて、他人のことも大切にすることができます。

このように、4つの境界線を意識して、親子間での適度な距離を上手に保ち、お互いを大切に思い合える親子関係を築いていきましょう。

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