平成最大級の水害、西日本豪雨(平成30年7月豪雨)の各種公的支援
2018年7月の今豪雨では33道府県と広域にわたり被害が生じている
このたび、西日本豪雨(災害名「平成30年7月豪雨」)により被災されたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。
西日本豪雨(平成30年7月豪雨)とは、2018年(平成30年)6月28日から7月8日頃にかけて、西日本を中心に広い範囲で記録された台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨を指します。今豪雨で33道府県と広域にわたり被害が生じました。
今回、災害救助法および被災者生活再建支援法が多くの自治体で適用され、被災された方は様々な支援を受けることができます。また今災害は、著しく異常かつ激甚な非常災害として、特定非常災害特別措置法による「特定非常災害」の指定も受けていることから、被災された方には様々な特例措置が講じられます。さらに、床上浸水、土砂災害、土石流などによる被害は水災として、加入している火災保険から水災保険金を受け取れる場合があります。
今回の災害で被災された方が受けられる公的支援、および火災保険等の内容について、以下確認していきます。
11府県の多くの市町村で「災害救助法」が適用に
今回の水害では、多数の人が生命または身体に危害を受け、または受ける恐れが生じていること、住家に多数の被害が生じたことおよび被害地域が孤立し、災害にかかった人の救出に特殊の技術が必要となったことから、全国で11府県62市38町4村と多数の自治体で、災害救助法の適用が決定されました(2018年7月30日時点)。【災害救助法が適用された府県および市町村】
【高知県】安芸市、香南市、長岡郡本山町(適用日:7月6日) 宿毛市(適用日:7月7日) 土佐清水市、幡多郡三原村(適用日:7月8日) 幡多郡大月町(適用日:7月8日)災害救助法は、災害後、国や自治体が被災者に必要な救助を行うための法律です。適用されると、避難所が開設されたり、食料や飲料水、寝具などが給与されるなど、当座をしのぐために必要な支援が現物支給されます。救助を受ける際、被災者は事情や経済状況を問われることはなく、申請をする必要もありません。
【鳥取県】鳥取市、八頭郡若桜町、八頭郡智頭町、八頭郡八頭町、東伯郡三朝町、西伯郡伯耆町、西伯郡南部町、日野郡日南町、日野郡日野町、日野郡江府町(適用日:7月 6日)
【広島県】広島市、呉市、竹原市、三原市、尾道市、福山市、府中市、東広島市、江田島市、安芸郡府中町、安芸郡海田町、安芸郡熊野町、安芸郡坂町(適用日:7月5日)
【岡山県】岡山市、倉敷市、玉野市、笠岡市、井原市、総社市、高梁市、新見市、瀬戸内市、赤磐市、真庭市、浅口市、都窪郡早島町、浅口郡里庄町、苫田郡鏡野町、英田郡西粟倉村、加賀郡吉備中央町(適用日:7月5日)小田郡矢掛町(適用日:7月6日)
【京都府】福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、京丹後市、南丹市、船井郡京丹波町、与謝郡伊根町、与謝郡与謝野町(適用日:7月5日)
【兵庫県】豊岡市、篠山市、朝来市、宍粟市、赤穂郡上郡町、美方郡香美町(適用日:7月5日)姫路市、西脇市、丹波市、多可郡多可町、佐用郡佐用町(適用日:7月6日)養父市、たつの市、神崎郡市川町、神崎郡神河町(適用日:7月7日)
【愛媛県】今治市、宇和島市、大洲市、西予市、北宇和郡松野町、北宇和郡鬼北町、
八幡浜市(適用日:7月5日)
【岐阜県】高山市、関市、中津川市、恵那市、美濃加茂市、可児市、山県市、飛騨市、本巣市、郡上市、下呂市、加茂郡坂祝町、加茂郡七宗町、加茂郡八百津町、加茂郡白川町、加茂郡東白川村、大野郡白川村(適用日:7月6日)岐阜市、美濃市、加茂郡富加町、加茂郡川辺町(適用日:7月8日)
【福岡県】飯塚市(適用日:7月5日)
【島根県】江津市、邑智郡川本町(適用日:7月6日)
【山口県】岩国市(適用日:7月6日)
出典:防災情報のページ(内閣府) 平成30年7月豪雨による被害状況等について
防災情報のページ(内閣府)「災害救助法について」
【お役立ちコンテンツ】
災害救助法適用はどこまで?火災保険が必要な理由
大阪北部地震を機に知る、災害救助法の支援や地震保険
災害に対する金融機関等の対応も
災害救助法が適用されると、各省庁から監督下にある企業等に対し、災害被災者の被災状況に応じて、きめ細かく弾力的・迅速な対応に努めるよう、さまざまな要請が出されることになります。今回は、福岡財務支局、中国財務局、東海財務局、近畿財務局及び四国財務局が「平成30年7月豪雨にかかる災害に対する金融上の措置について」を要請しました。金融庁 平成30年7月豪雨にかかる災害に対する金融上の措置について
その内容は、銀行にキャッシュカード等を失った被災者の預金の引き出しに柔軟に応じる、住宅ローンの返済猶予に応じる、あるいは保険会社に生命保険料や損害保険料の支払いを一定期間猶予するなどの要請です。これを受け、保険会社等は以下のような特別措置を実施をしています。
日本損害保険協会 平成30年7月豪雨による災害に伴う特別措置の追加について
生命保険協会 災害救助法適用地域の特別取扱いについて(高知県・鳥取県・広島県・岡山県・京都府・兵庫県・愛媛県・岐阜県・福岡県・島根県・山口県)
日本少額短期保険協会「災害救助法が適用された地域において被害を受けられた皆様へ」
また、住宅等のローン、事業性ローン等の返済が困難になった人を対象にした、破産手続きによるデメリットを受けることなく債務免除を行い、債務者の速やかな生活再建を後押しするための「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(以下、自然災害ガイドライン)」もあります。銀行業界の被災者対応なので、該当する債務者が自らメインバンクへ申し出る必要があります。
一般社団法人 自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関
【お役立ちコンテンツ】
住宅ローンを減免する、自然災害債務整理ガイドライン
携帯・NHK受信料などの減免や支払い期限の延長なども
放送法に基づき、NHKは西日本豪雨で被害を受けた世帯の7月及び8月の受信料(地上波および衛星放送)を免除すると発表しました。半壊、半焼、床上浸水以上の被害を受けた8府県(高知、鳥取、広島、岡山、京都、兵庫、愛媛、岐阜)のうち、災害救助法が適用された58市などが対象となります。免除世帯は、契約者からの届け出やNHKの調査で決まりますが、前払いで支払い済みの受信料も対象になります。NHKオンライン「平成30年台風第7号及び前線等に伴う大雨による災害」における放送受信料の免除について
※詳細は、NHKふれあいセンター 0570-077-077 もしくは 050-3786-5003 へ
また、携帯3社は災害救助法適用地域の被災者を対象に、携帯電話料金支払い期限の延長やデータ通信制限解除などの支援を行っています。
NTTdocomo 平成30年台風第7号及び前線等に伴う大雨による災害に係る災害救助法適用地域のお客さまに対する支援措置
平成30年7月豪雨による災害にかかる災害救助法適用地域のお客さまに対する支援措置を追加 -データ通信の速度制限解除を実施-
au 平成30年7月豪雨に伴う支援について
SoftBank 平成30年台風第7号および前線などに伴う大雨の被災地域を対象とした支援措置について
さらに、今回の水害は著しく異常かつ激甚な非常災害として、特定非常災害特別措置法による「特定非常災害」の指定を受けていることから、被災者には以下のような特例措置も講じられます。
・運転免許など許認可等の存続期間(有効期間)延長
・事業報告書の提出など法令上の義務を履行できない場合の免責期限設定(処分や刑罰を受けない)
・法人に係る破産手続開始の決定留保
・相続放棄等の熟慮期間延長
・民事調停の申立手数料免除
詳しくは以下に記載があります(随時更新中)。
平成30年7月豪雨災害「特定非常災害」指定について(各種の許認可等(運転免許等)
10府県の多くの市町村で被災者生活再建支援法が適用
今回の水害では、住宅に多数の被害が生じたことから、10府県、80市町村に被災者生活再建支援法が適用されました(2018年7月30日時点)。【被災者生活再建支援法が適用された府県および市町村】
【岐阜県】 関市
【京都府】 綾部市
【兵庫県】 神戸市、宍粟市
【島根県】 江津市、邑智郡川本町
【岡山県】 岡山県内全域
【広島県】 広島県内全域
【山口県】 岩国市
【愛媛県】 愛媛県内全域
【高知県】 幡多郡大月町
【福岡県】 飯塚市、嘉麻市
適用市町村に住んでいる被災者は、自治体が交付する「り災証明書」で、住宅が全壊または大規模半壊と判定された等の場合に、市区町村に申請すると最大300万円の支援金が支給されます。
【被災者生活再建支援金】
内閣府 防災情報のページ 被災者生活再建支援制度の概要
【お役立ちコンテンツ】
糸魚川大規模火災は自然災害、公的支援が利用できる
火災保険に水災補償がついているなら保険金請求を
被災で契約の有無や契約先がわからないときは、損害保険協会の「自然災害等損保契約照会センター」で契約照会を
生活再建に向け、保険会社の損害調査前に片付けが必要になる場合には、保険会社にその旨を伝えて、どうすればよいか教えてもらいましょう。併せて、被害状況の写真を撮っておくなどするとよいでしょう。
床上浸水や土砂災害等で保険証券のありかがわからなくなってしまっても、契約は有効で、保険金は問題なく請求できます。ですが、どこに連絡したらよいか、分からない人もいるでしょう。こうした場合、日本損害保険協会の「自然災害等損保契約照会センター」で契約照会ができます。災害救助法適用地域で被災した被災者本人と、その親族(配偶者・親・子・兄弟姉妹)が利用できます。
「自然災害等損保契約照会センター」
フリーダイヤル0120-501331 受付時間 9:15~17:00(土曜日・日曜日・祝日および12月30日~1月4日を除く)
【お役立ちコンテンツ】
水害で保険証券が流失!保険金を請求できる?
注意したいのは、火災保険に水災の補償が必ずしもセットされているわけではない点です。水災補償がない火災保険もありますし、補償があってもその内容や程度は、商品や契約、契約時期等により異なることがあります。保険の契約内容を確認するとともに、ハザードマップを確認したうえで、わが家の災害リスクに適切な補償を確保しましょう。
【お役立ちコンテンツ】
ハザードマップを確認し、水災補償の必要性を考えよう
これは使える!「ハザードマップポータルサイト」
困ったことが起きたら、被災地向け「消費者トラブル110番」へ相談を
被災地域を対象にした「平成30年7月豪雨消費者トラブル110番」が開設されている
・「清掃に来ました」「何か困っていることはありませんか」などと、公的機関やボランティアを装い、頼んだ後で法外な料金を請求された
・豪雨で壊れた家屋の修理工事を「火災保険の保険金の額で行う」と言う業者が信用できない
・住んでいるアパートが豪雨により雨漏りするようになり、修理しても直らない。このまま家賃を払わなければいけないのか
・訪問してきた工事業者に「大雨で屋根が壊れている。すぐに工事をしないとまた雨が降ったら雨漏りする」と言われた
出典:独立行政法人 国民生活センター「ご用心 災害に便乗した悪徳商法」
今回の豪雨被災者に向けて、専用のフリーダイヤル「平成30年7月豪雨消費者トラブル110番」もこのほど開設されています。水害で解説されたのは初。岐阜県、京都府、兵庫県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県、高知県、福岡県の11府県にお住まいの方が利用できます。
国民生活センター「『平成30年7月豪雨消費者トラブル110番』をご利用ください」
「平成30年7月豪雨消費者トラブル110番」 通話料無料 0120-7934-48 受付時間 10:00~16:00(土曜日・日曜日・祝日可)
・050から始まるIP電話の場合は03-5793-4110(通話料は相談者の負担)
・上記11府県以外からは繋がりませんので、その他エリアの方は「消費者ホットライン」188をご利用ください。
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損害調査担当に訊く 火災保険事故のウラ側その3
損害調査マンに訊いた土砂災害のウラ側2
火災保険に絡む、悪質勧誘・トラブルに注意!
気候変動の影響で、近年各地で水害が相次いでいます。都市部のマンションの高層階でない限り、住宅が浸水、また、場所によっては土砂災害の危険性も考えられます。しかし、災害で住まいを失っても、公的支援は限定的です。住まいのリスクを確認し、火災保険に水害の補償が付いているか、また支払われる最大の保険金はいくらなのか、しっかり確認しておきましょう。
【関連リンク】
防災情報のページ(内閣府) 平成30年7月豪雨による被害状況等について
日本損害保険協会 平成30年7月豪雨による災害に関する損保業界の対応について
日本損害保険協会 平成30年7月豪雨による災害に伴う特別措置の追加について
これで丸わかり!水害に備えなきゃダメな理由
文審2018-0115(2018.7)
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