自然災害で失った住宅のローンが残ったら……

自然災害の影響で住宅ローンを返せなくなったら、その後の生活再建がとても厳しくなる

自然災害の影響で住宅ローンを返せなくなったら、その後の生活再建がとても厳しくなる

今日、私たちが住宅を取得するときには、住宅ローンを組むのが一般的です。超低金利を背景に、最近では長期にわたる多額の住宅ローンを組むことも、それほど珍しいことではなくなっています。

しかし、一方で日本は災害大国。住宅取得後、さまざまな自然災害で住宅に損害を受け、再取得あるいは修繕が必要になる可能性をなくすことはできません。住宅取得や修繕には新たな資金が必要になる一方、住宅ローン返済中の被災なら返済はその後も続くことになります。ひとたびこうした状況に陥れば、その後の生活再建には大変な困難が伴うことになってしまうでしょう。

住宅ローンなどを返済できなくなったときの法的手続きに「破産」があります。過大な借金を負った債務者またはその債権者が裁判所に申し立てて債務者の債務を清算、生活立て直しを図るための制度です。破産を申し立てると裁判所がその内容を審理、支払不能が認められると「破産宣告」となります。債務者はそこで同時に「免責」を申し立て、それが裁判所に認められ手続きが終了すれば、借金の返済義務はなくなるというのが一連のプロセス。つまり破産によって債務の免除を受けるには、自分のすべての財産を差し出したうえで、返済能力がないと裁判所に認めてもらうわけです。

債務免除の一方でデメリットもあり、免責の決定まではある種の職業に就けない、会社の役員になれないなどの制限があったり、5年程度はクレジットカードを作ったり、住宅ローンを借りたりすることができなくなります。

熊本地震、関東・東北豪雨の被災者も債務免除の対象

これに対し「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(以下、自然災害ガイドライン)」は、破産手続きのデメリットを受けずに債務免除等を行おうとする手続きです。自然災害の影響で失った住宅等のローン、あるいは事業性ローン等の返済が困難な個人を対象に、破産手続きによるデメリットを受けることなく債務免除を行い、債務者の速やかな生活再建を後押しするためのもので、2016年4月から運用が開始しています。

自然災害ガイドラインを作ったのは、全国の銀行が会員の全国銀行協会(=全銀協)を事務局とする「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会」。東日本大震災では、住宅ローン等が返済不能となった個人を対象に2011年8月に「個人債務者の私的整理に関するガイドライン(以下、個人版ガイドライン)」が設立されましたが、自然災害ガイドラインはこれを参考に作られています。“ガイドライン”とは大まかな規範・ルールですから、法律のような強制力はありません。自然災害ガイドラインは、裁判所が一定の関与はしますが、債権者である金融機関等と債務者が話し合い、合意に基づいて債務整理を行うための自主的・自律的な準則です。あくまでも銀行との合意で進む手続きなので、申し出れば必ず債務免除を受けられるというわけではありません。

手続きに際し、債務者に弁護士費用の負担はありません。また、すべての財産を差し出さなくてはならない破産手続きと異なり、債務者に給付された被災者生活再建支援金や災害弔慰金、災害障害見舞金等は手元に残せます。債務免除を受けてもいわゆるブラックリスト(個人信用情報)に登録されることはないため、新たな借入れもできます。

対象になるのは、2015年9月2日以降に災害救助法の適用を受けた自然災害の被災者です。そのため熊本地震の被災者はもちろん、2015年9月の関東・東北豪雨の被災者も含みます。住宅ローンやリフォームローン、事業性ローン等が支払不能、または近い将来に支払不能になることが確実な人が対象で、過去に返済の滞りがないなどの要件を全て満たす人に限られます。

では、実際の手続きはどのように行うのでしょうか。手続きの流れは、次のページで。