失火による被害は、原則として賠償を受けられない

延焼被害を受けても、「失火責任法」により、原則として火元に賠償請求できないルールがある

延焼被害を受けても、「失火責任法」により、原則として火元に賠償請求できないルールがある


近所で発生した火災で、住宅等が延焼被害を受けたとしても、原則として、火元から損害賠償を受けることはできません。民法の特別法である通称“失火責任法”で、以下のように定められているからです。

「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」

上記で記された意味は以下の通り。そもそも民法709条では、第三者に故意または過失による損害を与えた場合、被害者に賠償しなくてはならないと規定されています。ですが失火については例外的に、火元に重大な過失がない限り、その規定を適用しないとしています。つまり、この失火責任法によって、民法709条の効力を打ち消しているのです。

どんなに気を付けていても、誰であっても、過失から火災を起こしてしまう可能性はあります。ですが、火元自身も損害を負っているなか、損害を与えた先すべてに対する責任を火元に負わせるのはあまりにも重すぎ、適切ではありません。また、かつての日本は木造建築が多く、一度火が出ると延焼損害が避けられなかったことなどからこの法律は設けられています。

翻って、被害を受けた側から見れば、たとえもらい火であっても、住まいは自分で守らなくてはならないということ。これが誰にとっても火災保険が必需品となる理由なのです。


糸魚川の大規模火災は「風害」、自然災害との判断に

2016年末に新潟県糸魚川市で発生した大規模火災では、焼損144棟、うち120棟が全焼するという事態になりました。400近い世帯に避難勧告が発令され、災害救助法が適用されるなど、近年ではまれな大規模な火災となってしまいました。

しかし、今回は単純な火災とは捉えられていません。大きな延焼被害が広がった原因は“強風”。ゆえに今回の被害は自然災害により発生したものと判断されており、各種の被災者支援策が講じられることになりました。

糸魚川市には、自然災害で被災した世帯に給付金を支払う被災者生活再建支援法が適用されることになりました。強風による大規模火災で同法が適用されるのは初。いうまでもなく自然災害による被害世帯を対象としている法律なので、通常の火災では適用されることはありません。

併せて、今回は県や市の独自制度から支援金の給付や、がれきの処理の補助、被災者には借り上げ民間賃貸住宅が提供されるなどの支援が行われます。具体的に見ていきましょう。


国の被災者生活再建支援金に加え、県や市からの支援金も

糸魚川市の大規模火災の被災状況(出典:糸魚川市HPより)

糸魚川市の大規模火災の被災状況(出典:糸魚川市ホームページより)

被災者生活再建支援制度は被災者生活再建支援法に基づくもので、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火などの自然災害で、住宅全壊など生活基盤に著しい損害を受けた世帯に給付金が支払われる制度です。今回の大規模火災は強風による自然災害が原因で、かつ10以上の世帯の住宅が全壊する被害が発生しており、要件を満たしたことから法律が適用となりました。

国の制度からの基礎支援金は、住宅の壊れ具合で給付額が決まり、全壊は100万円です。加算支援金は後の住宅の再建等の方法に応じて給付金が決まり、再建すれば200万円、補修では100万円、賃借では50万円です。よって最高300万円を受け取れますが、半壊以下に給付金はありません。
今回は国の制度とは別に、県および市の制度からも給付が受けられます。こちらからは全壊は100万円、さらに半壊にも50万円の給付があります。国と県および市の制度を合わせると、全壊時の最大受取額は400万円になります。

被災者生活再建支援金について。

被災者生活再建支援金について。


内閣府の資料によると、今回の火災では全壊(全焼)世帯は96以上、半壊(半焼)世帯は2以上で、これらの世帯が給付金支給の対象となります。被災者生活再建支援法は生活者が住まいを失ったことに対して支払われる支援金ですから、事業用物件の全焼には給付はありません。

給付金以外にも、所有者負担なしに家屋等のがれき処理が受けられたり、住宅を失った被災者に借り上げ民間賃貸住宅が提供されたりと、様々な支援があります。詳しくは以下の手引きなどに記載されています。

平成28年 新潟県糸魚川市における大規模火災
被災者支援の手引き(第2版)

(新潟県のホームページにリンクします)


自然災害の被害を受けたとき、住宅ローンはどうなる? 生活再建のために知っておきたい仕組みについて、次ページで解説します。