ハザードマップ、7割近くが「知らない」

気候変動の影響か、集中豪雨による被害が毎年各地で起きている

気候変動の影響か、集中豪雨による被害が毎年各地で起きている

ハザードマップは、自然災害の被害を予測して、一定の想定に基づき、生じる被害の範囲を地図で示したものです。洪水のほか、内水(公共の水域等に雨水を排水できないことによる出水)や噴火、土砂災害や地震危険など、その地域の災害特性に応じたハザードマップを市町村が作成し、住民に配布しています。

多くのハザードマップには、災害時の地域の避難場所や避難経路、避難方法なども載せられています。ですから自宅の被災可能性やその程度を平時に知っておくために活用するだけでなく、避難のために必要な情報が掲載されていることから、被災時にも役立つようになっています。

ところが、自分の住所地のハザードマップを確認したことがある人はあまり多くないようです。

2015年9月の関東・東北豪雨では、2万棟以上の住宅に浸水被害が生じました。特に大きな被害が発生した茨城県常総市の、住宅が流失していくショッキングな映像を覚えている方もいるでしょう。

そのとき、常総市の浸水地域または避難勧告、避難指示が発令された地区に住んでいて、当日もそこにいた住民を対象にしたアンケートがあります(国土交通省 第2回水害ハザードマップ検討委員会配布資料)。それによると、災害発生時にハザードマップを見なかったとの回答が9割で、そのうち、それまでハザードマップを知らなかった、見たことがなかったとの回答が7割近くに上っていました。

常総市では平成21年に水害ハザードマップを作成し、全戸配布していました。ですが、平時からハザードマップの認知度は低く、災害時にも活用されていなかったのです。

別の調査でも、ハザードマップで防災情報を確認したことがある人は3割にとどまっており(「防災に関する特別世論調査」(内閣府))、ハザードマップの認知度の低さは生活者全体の傾向であることがわかります。
 

床上1メートル近い浸水でも「公的支援なし」

水害は止めることはできず、財産どころか命までを奪う可能性のあるほどの災害です。被災することはそれほど多くはないかもしれませんが、いったん起きればこれまでの生活設計が大きく崩れるほどの経済的ダメージを受けることもあります。しかもこうしたときの公的な支援は限定的で、生活再建は個人の力に委ねられているのが実情です。

住まいに関する公的支援には、10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等に対する被災者生活再建法があります。関東・東北豪雨では、茨城県常総市や宮城県大崎市など6つの市や町でこの法律が適用されました。市町村の発行する「り災証明書」では、洪水による浸水の被害区分が下表のように判定されます。り災証明書で、自宅が「全壊」「大規模半壊」だと被災者生活再建支援金の対象で、「半壊」「半壊に至らない」では対象外です。
被害区分と被災者生活再建支援金の関係

被害区分と被災者生活再建支援金の関係


被災者生活再建支援金は、住宅の壊れ具合で支払われる「基礎支援金」と、その後の再建方法等に対して支払われる「加算支援金」の2段階で、両者を合わせた金額は最高でも300万円です。浸水による被害で住宅流失となる最悪の事態でも、受け取れる支援金は最高300万円。これを受け取れるか受け取れないかは大きな差ですが、被災後の復旧を図るのに、これだけで十分な額とは言えません。

1メートル近い床上浸水は「半壊」で、そもそも支援金はありませんが、電化製品や家具・建具等への相当な損害が発生するのは言うまでもないでしょう。住宅ローン返済中であればなおさら、家計には大きな打撃を受けることになります。

次のページでは、常総市が公開している洪水ハザードマップを見ながら、水災補償の必要性を考えていきます。