海と潮の香、島のイメージがダイレクトに伝わるシングルモルト
ボウモア蒸溜所の魅力に関しては直近3回の記事でいろいろと述べた。簡単におさらいすると、まず1779年創業というスコッチのモルトウイスキー蒸溜所のなかでも極めて長い歴史がある。原料となる麦芽の30%をいまだに自前でフロアモルティングをおこない、ピートを焚いて乾燥させて製造。さらにはスコッチ最古の貯蔵庫である第一貯蔵庫は海抜0メートルに位置し、ほのかな潮の香に抱かれながらのモルトウイスキー樽熟成など、他のモルト蒸溜所にはない大きな歴史的遺産を守りつづけている。そこから生まれるモルトウイスキーはスモーキーながらフルーティーで、ハチミツのような甘くエレガントな香味で魅了し、“ベストバランス・アイラ”“アイラモルトの女王”と謳われる。
ボウモア蒸溜所のつくりに関しては「ボウモア12年/ベストバランス・アイラの魅力」を参照いただきたい。
では「ボウモア」とともに人気を誇るシングルモルト「ラフロイグ」はどんなつくり込みがされているのだろうか。強烈な個性で魅了する“アイラモルトの王”と謳われる「ラフロイグ」についても述べてみよう。
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「ラフロイグ」のプロセスウオーター(仕込水)も「ボウモア」同様、ピート層を浸透してきたもので、「ラフロイグ」の香味特性を生むうえで極めて重要な原料である。まさに生命の水。
ラフロイグ・ピート採掘場
製麦に関しては85%を近くのポートエレンに麦芽製造を委託しているが、残りの15%(ボウモアは30%)はラフロイグ蒸溜所で製麦している。
ボウモア蒸溜所同様、いまでは数少なくなった蒸溜所が自らおこなう古典的なフロアモルティングは、ピート成分の溶け込んだ水をたっぷりと含んだ大麦を床に広げ、職人が8時間おきにすき返して発芽を促す。ほどよく発芽したところでキルン(麦芽乾燥塔)の下にある乾燥室で発芽を止める。
ラフロイグ・フロアモルティング
フェノールの濃度は40~45ppmだが、数値では語れない風味が「ラフロイグ」麦芽にはある。ちなみに「ボウモア」の麦芽フェノール値は20~25ppm。「ラフロイグ」が薬品的なヨード様を強く感じさせるのはこうした麦芽づくりにある。(次ページへつづく)