ストレス

思春期の中高生がイライラ・反発する4つの理由

【公認心理師が解説】中高生にあたる思春期の子どもたちは、些細なことにイライラしたり、反発したりしやすくなる年齢です。性ホルモンの影響や仲間関係のストレスを含め、思春期の子どもたちの心が不安定になりやすい4つの理由をご紹介します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

思春期とは? 思春期に感じるイライラの原因

教室で座っている中高生

理由はよく分からないけど、イライラ、モヤモヤする。それが思春期の心の特徴


中高生の子どもたちが直面する「思春期」。この時期には、他人からのちょっとした言葉や態度に傷ついたり、苛立ちを感じたりしやすく、反発もしやすくなります。

思春期の子の不安定な心情には多くの理由がありますが、ここでは代表的な4つのポイントをご紹介しましょう。

<目次>  

思春期のイライラの原因1.  思春期特有のホルモンバランスの影響

子どもは思春期を迎えると、性ホルモンの分泌が急激に増え、男女ともに心身が不安定になりやすくなります。そのため、理由もなく気持ちがモヤモヤし、ちょっとしたことにも感情が刺激され、苛立ってしまうことがあるのです。

また、思春期には自分自身に意識が向くようになるため、体形や見た目をとても気にしやすくなるものです。たとえば、周りから「ぽっちゃりしている」「色が黒いね」などと批評されると、とても傷つき、恥ずかしく感じたりします。身内の人に同じようなことを言われると、怒りを露わにするでしょう。
 

思春期のイライラの原因2. 「第二の誕生」、そして自立の始まり

思春期は「第二の誕生」と呼ばれます。この時期には、幼いころの自分から距離を置き、中学校や高校という新たな環境で築く価値観、仲間関係から学ぶことを元にして、新たに自分なりの価値観を構築しようとします。これが「自立」の始まりです。

この自立の時期に親から干渉され、口出しをされたりすると、子どもはとても不快に感じます。「勝手に見るな!」「部屋に入るな!」などと言って親を遠ざけるのは、このためです。

こうして成長していく子どもの心情に気づくことができないと、子どもが使う乱暴な言葉や態度だけにとらわれ、ただ「反抗している」「大人をバカにしている」などと感じてしまうかもしれません。ですが、こうした子どもの態度は大人にとっては「反抗的」に見えても、子ども自身にとっては「自立」による行動なのです。

こうした事情を飲み込まず、大人が高圧的な態度で接していると、子どもの感情を逆なでしてしまいます。すると、子どもの心には大人への反抗心が生まれ、社会に対する偏見を強めてしまうことがあるのです。
 

思春期のイライラの原因3. 思春期の子どものボキャブラリーの未熟さ

屋上での仲良し4人組

友だちと一緒にいられるのはうれしい。でも仲間関係にストレスに感じることもある

思春期の子どもたちは、大人ほどたくさんの言葉を知っているわけではありません。豊かなボキャブラリーで、自分の感情や思考を端的に表現できることなど、なかなかできないものです。とっさに湧く感情にフィットする言葉が見つからないため、若者特有の「スラング」で代用し、乱暴な言葉で感情を表現していることが多いものです。

たとえば、本当は「自分で考えたいから、今はそっとしておいて」と伝えたいのに、そのような適切な言葉で伝えられず、「ウザい」「あっち行け!」といった一言で済ませてしまう子もいます。本当は「困るからやめてほしい」と伝えるべきなのに、その言葉が思い浮かばず、「ムカつく」「ボケ!」といった吐き捨てるような言葉で済ませてしまう子もいます。

こうして感情表現をスラングで代用していると、短絡的で乱暴な言葉に自分の心情を合わせてしまい、吐きだす言葉の暴力性につられて、イライラしてしまうこともあります。
 

思春期のイライラの原因4. 仲間関係のプレッシャーとストレスによる疲れ

思春期の子にとって、「仲間からの承認」は「社会からの承認」と同じ意味を持ちます。「自分は仲間から認められている」という実感が、「自分は社会のなかでもうまくやっていけるだろう」という自信を生み出すからです。

とはいえ、「仲間からの承認」を得るのは大変です。仲間外れにされないために、興味のない話題につきあい、多数派の意見に従い、うまくやっていかなければなりません。仲間に見下されないように、グループ内の空気を読んで明るい雰囲気をつくりだすなど、たくさん気を遣わなければなりません。

こうした努力は、自分自身のコミュニケーションの力を伸ばすことに役立ちますが、その分、ストレスもたくさん抱えてしまいます。そのため、仲間関係でたくさん気を遣った分、たまったストレスを家庭に持ち込み、家族にあたってしまうこともあるのです。
 

思春期の心を思いやれば、「見守る」ことができる

このように、思春期はたくさんの変化にさらされ、感情が揺さぶられる年齢です。そのため、理由もなくイライラしたり、つまらないことで攻撃的になったりすることがあります。

思春期の子はこういう状況にあるということをあらかじめ知っていれば、子どもの感情を刺激したり、無駄に叱責したりして、子どもの怒りを煽ることもなくなるでしょう。子どもの心情を察してそっと距離を取り、怒りが収まるまで待つこともできるのではないでしょうか。

思春期の子の不安定な心情は、成長と共に収まります。子どもの心の成長を見据えながら、適度な距離感で支えていくことが大切です。

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