カナダ以外では日本だけの販売
ダン・トゥーリオ氏
ダン・トゥーリオ氏は「カナディアンクラブ(C.C.)」と「アルバータ」のふたつのブランド、カナディアンウイスキーの語り部である。
その彼からいろいろ話を聞き出した中で読者の皆さんに最初にお伝えしておかなければならないのは、ジム・マーレイが“カナダの至宝”とまで賞賛する「アルバータプレミアム」は、本国カナダ以外では日本でしか発売されていないということだ。
「アルバータプレミアム」はカナダ国内では極めてよく知られたメジャーブランドであるが、隣国アメリカにも輸出されていない。日本人はとても幸せである。
これはアルバータ蒸溜所が長年、穀物原料100%ライ麦使用のライウイスキーメーカーとして、多くの他メーカーに原酒を供給してきたことに起因している。現在、原酒生産量の70%を他社に供給している。
一方、ブレンデッドである「アルバータダークバッチ」のマーケティングはまったく異なる。記事にも述べているが、2012年に発売され、アメリカでは2014年から販売された。その独自のブレンドからアメリカではクラフト・カナディアンウイスキーとして受け入れられ、売り上げを伸ばしつづけている。
ストレートやロックで味わうだけでなく、多くのアメリカのバーテンダーがオールドファッションドやミントジュレップ、サザラックカクテルなどのベースに使用しているらしい。
カルガリーを愛するプレーリー・ボーイズ
東京でのアルバータ・セミナー
「アルバータプレミアム」の記事中でも述べたが、蒸溜所はカナダの西部、アメリカのモンタナ州と国境を接するアルバータ州カルガリー近郊にある。カナディアンロッキー山麓東側の高原台地で、標高1,048メートルの高所。周辺は北米大陸中央を南北に伸びるプレーリー(温帯草原地帯)と呼ばれる平原が広がっている。可愛いらしいプレーリー・ドッグが生息する地である。
蒸溜所を創設したのは、石油・天然ガス事業で成功した実業家、新聞社社主、そしてビール会社を興したドイツ系移民の子孫で自ら蒸溜所を経営していたふたりの兄弟という4人のカルガリー男たち。彼らは愛する故郷が誇る自然風土の恵みから、故郷が誇れるウイスキーをつくろうとしたのだった。その彼らをトゥーリオ氏は“プレーリー・ボーイズ”と表現した。
プレーリー・ボーイズのひとり石油・天然ガス事業で成功した実業家の名は、フランク・マクマホン。彼は化学者であり、仕込みにおいて粘性が強く扱いにくいライ麦を研究し、独自の糖化酵素(特許取得)や酵母を開発した。これが北米で最大級のライウイスキー蒸溜所へと導く大きな要因となった、とトゥーリオ氏は教えてくれた。
トゥーリオ氏は生まれも育ちもカナダ・オンタリオ州ウィンザー。つまり「カナディアンクラブ」の町でずっと暮らしてきた。奥さんは高校の同級生。生粋のウィンザー子で、6歳くらいでアイスホッケーをはじめ、50年以上もクラブチームでプレーしつづけている。もちろん現役プレーヤーだ。
「ウィンザーは、教会の数よりもスケートリンクの数のほうが多いんです。だからほとんどの人が小さな頃からスケート靴を履いて氷の上で遊んでいる」
そんな話をしてくれるトゥーリオ氏はカナダ東部のカナディアンクラブと西部のアルバータを見守りつづけてきた。何よりもカナディアンウイスキーを愛している。彼は最後に、カナディアンウイスキーの良さをこう語ってくれた。
「カナディアンウイスキーは身構えて、静かにじっくりと味わうウイスキーではない。楽しいウイスキー、明るいウイスキーです。気軽に楽しんでいただきたい。ソーダ水やジュースで割ったり、スタンダードなカクテルに活用したり、アウトドアで仲間と陽気に味わったりするのもいいでしょう。世界に向けて、楽しく、若々しいウイスキーだとわたしは伝えつづけています」
まずは「アルバータプレミアム」を試していただきたい。ライウイスキーの洗練を知ることだろう。そして楽しく飲んでいただきたい。
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