栄養管理

2歳までの栄養が、子どもの生涯健康に影響する?(2ページ目)

妊娠中を含めた1000日間の栄養が、子どもの生涯健康に影響するということをご存知でしょうか?この概念は「DOHaD(ドーハッド)」と呼ばれ、世界的な考え方になりつつあります。日本では女性のやせ型が多く、出生時の体重が減少傾向にあるため、子どもが成人した時に病気になるリスクがあがることが心配されています。

一政 晶子

執筆者:一政 晶子

管理栄養士・米国登録栄養士(RD) / 栄養管理・療養食ガイド

妊娠中の栄養で気をつけるべきことは?

体重

妊婦にとって体重管理は気になるところ

これらを踏まえると、栄養のバランスが摂れていることと、母親の体重が順調に増えていることが、妊娠中に気をつけるべきポイントになります。また、妊娠前の体重が低体重(やせ)ではないこともポイントです。下記で細かく見ていきましょう。

■カロリー
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2015」によると、身体活動レベルが普通の場合、妊娠初期(~13週6日)では必要なエネルギーが50カロリー、中期(14週0日~27週6日)では250カロリー、後期(28週0日~)では450カロリー増えます。

よって18~29歳の妊婦さんの場合、一日に必要なエネルギーの量は、妊娠中期で2200カロリー妊娠後期で2400カロリーになります。30歳以上の場合は、中期で2250カロリー後期で2450カロリーが推定必要量とされています。身体活動が普通レベルの授乳婦では、18~29歳で1日に2300カロリー、30歳以上は2350カロリーが推定必要量です。

■たんぱく質

妊娠中期で必要な量が1日当たり5~10g、妊娠後期で1日当たり20~25g増加します。よって中期では、たんぱく質が1日に45~60g、後期では60~75g必要となります。

食品に含まれるたんぱく質量については、以前のガイド記事「すぐに分かる!食品のたんぱく質量」をご覧下さい。

■妊娠中の体重管理
「日本人の食事摂取基準2015」によると、日本では妊娠中の体重増加が9キロ以下の場合、赤ちゃんの低体重リスクが有意に上がることが観察されているそうです。正常範囲に近い体重の場合(BMI18~23.9)、1週間当たり、0.2kg~0.3kgが適切な体重増加であると報告されています。妊娠中の合計体重増加が8kg~12kgということになります。少し数字が矛盾している気もしますが、妊娠中の体重増加は9kg~12kg当たりを目指したいと解釈できるかもしれません。

正常体格の妊婦に対して妊娠中の体重増加を 7~10kg に制限する指針が長く示されていた後、2006年に7~12kgへと上がり、これからは9~12kgとさらに上がっていくようです。


推奨される体重増加量は増えているが、日本女性はやせ傾向に

体重

やせを追求すると、自分の子どもにネガティブな影響がでるかもしれない

ところが、日本の20~30代女性のやせ傾向が著しく、問題になっています。やせた女性が妊娠した場合、低出生体重のリスクが高いと報告されているのです。

20代の女性では約21パーセント、30代では約17パーセントが低体重です。国民健康・栄養調査によると、18~29歳で一日のカロリー摂取量平均は1677カロリー、30~49歳では1696カロリーです。低体重の人では、平均値よりもずっと少ないカロリー摂取に関連した栄養不足が心配されます。

胎児期からの栄養環境が大切であるという、「DOHaD(ドーハッド)」がもっと浸透するといいですね。


■参考資料

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