マーケティング/マーケティング事例

強気の値上げを繰り返すUSJに死角はないのか?(2ページ目)

USJが2015年1月30日より『1デイ・スタジオ・パス』を値上げします。現行の6980円から7200円と、テーマパークとしては日本初の7000円を超える思い切った価格設定。果たして強気の値上げを続けるUSJの狙いはどこにあるのか?マーケティングの観点から掘り下げていくことにしましょう。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

頻繁な値上げの背景にあるものとは?

USJ値上げ

値上げの理由は『パークでの体験価値の向上』というが・・・

USJは、頻繁な値上げの理由を『ゲストの皆様のパークでの体験価値向上に合わせて』としています。つまり、ソフト面やハード面の魅力アップに伴って、パーク内で体験できる価値が高まっていると判断し、値上げに踏み切っているのです。このUSJの考えは、値上げしても入場者数は減るどころか、増えているという事実に基づけばあながち間違いではないでしょう。

ただ、裏を返せば、テーマパークとして体験価値の向上に努め続けなければ、顧客を引き留めることが難しくなっているという現実も浮き彫りになるのです。

たとえば、東京ディズニーリゾートは2013年度に入園者数が3000万人を超え、日本の中でも圧倒的な集客力を誇るテーマパークですが、昨年の10月には今後10年間で5000億円規模の投資を行うことを発表しました。1年当たりに換算しても500億円と、まさに毎年のようにUSJの『ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター』規模のアトラクションをオープンさせる規模の投資を行っていくのです。


ライバルは国内だけではない

このようにライバル企業が積極的に投資を行っていく一方で、もしUSJがパークへの投資をセーブするなら、相対的にUSJの体験価値が低くなり、顧客を奪われかねません。

つまり、USJとしては、ライバル企業との競争や顧客の高まる期待に対して、適切な価格設定で利益を最大化させ、新たな投資に回す資金を捻出しなければならないという事情もあるのです。

加えて“テーマパーク戦争”は、今後日本国内だけでなく、経済成長の著しい中国を含めたグローバルなレベルで展開されようとしています。

2015年末には中国の上海に総工費3000億円を超える『上海ディズニーランド』がオープンする計画が進んでいます。また、2019年には北京に3500億円をかけて『ユニバーサル・スタジオ』が進出する予定です。

このような大規模テーマパークが中国国内に完成すれば、これまで日本を訪れていた中国からの観光客も見込めなくなるという事態も想定されます。

そのような最悪の事態を避けるためにも、USJとしては、国内外を含めた来たるべき激しい顧客獲得合戦に備えて、パークの魅力を向上するための投資資金をどう確保するかを考えておく必要があるのです。

今のところはうまくいっているUSJの値上げ戦略ですが、果たして死角はないのでしょうか?・・・次ページではUSJの今後の値上げ戦略の注意点を掘り下げていきます!
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