「他人と過去」は変えられない、変えられるのは「自分と未来」
他人と過去のことに悩み過ぎて、苦しくなっていませんか?
「あの人の性格、何とかならないのかしら」「私はなぜあのときに、あんなことを言ってしまったのだろう」。このように、人はとかく他人や過去のことばかりを考えて、くよくよ悩んでしまうものです。
こうした悩みを抱える方に、私はあることわざをお伝えしています。それは「他人と過去は変えられない。変えられるのは自分と未来」という言葉です。
「相手に変わってほしい」といくら期待しても、相手がこちらの思い通りに変わってくれるとは限りません。なぜなら、「他人の気持ちは他人のもの」だから。本人が「たしかにそうだよね」と納得すれば、変わってくれることもあるかもしれません。それでも、100%こちらの思い通りに相手が変わってくれるとは限らないのです。
過去も同様です。育った環境やたどってきた道、あらゆる失敗、こじれた関係など、「どうして、こうなってしまったのか」「なぜあのとき、こうしなかったのか」と、人はいつまでも悩んでしまうものです。でも、そうしたことをいくら考えても、過去の事実は変わらないのです。
「自分」を変えるには、考え方のくせを変える
うまくいかないのは、自分の「思いぐせ」に問題があるのかも?
変えられない「他人」や「過去」に執着するより、変えることのできる「自分」と「未来」をどうするか、考えていくこと。その方が何倍も合理的で有益です。では、どのように変えていけばいいのでしょう?
まず「自分」を変えるには、自分の「思いぐせ」に気づくこと。それがストレスを招きやすいものになっていたら、「認知療法」で修正するのがお勧めです。
普段、無意識のうちに選択している考え方のパターンは何でしょう? たとえば、物事を「○か×か」と二極化して考えている。いっときの感情にとらわれ、「自分はいつも失敗する運命」などと決めつけている。このようなことが多くありませんか?
こうした非合理的な考え方を「認知のゆがみ」と呼び、代表的なゆがみは10パターンあります。具体的には、「「ストレス思考10パターン」をチェック!」という記事で解説していますので、ご自分の考え方に近いものがあるかどうか、ぜひチェックしてみてください。
これらの認知のゆがみに気づいたときには、そのゆがみにそって物事を考えるのをやめること。そして、「こう考えて苦しくなっているけど、この考え方は本当に合理的なのかな?」というように捉え直してみましょう。これをくり返していくのが「認知療法」です。
たとえば、「このテストに受からなければ、私の人生は負けだ…」といった極端な考えにとらわれ、苦しくなったとき、自分の思考がどの認知のゆがみのパターンに近いのかを検討します。そして、頭の中で現実的で合理的な考え方に修正していきます。
「テストに不合格になっただけで、なぜ『人生まで負けだ』と決めつけるのだろう?」「人生のルートはいくつもあるし、人生は何度でもやり直していいのでは?」というようにその都度、自分に問いかけていきましょう。悩んでいる友だちに語りかけるように、自分にも語りかけていくといいでしょう。
「未来」を変えるには、目の前の小さな行動を変えていく
未来を変えるには、「小さな変化」を積み重ねること。うまくいっていることを続ける、うまくいかなければ違うことをする
では「未来」の方は、どのように変えていけばいいのでしょう? アメリカを中心に発展してきた心理療法の一つに「ブリーフセラピー」(短期療法)という方法があります。この療法の中心哲学である3つのルールに、未来を変えるヒントがあります。
【ルール1】今やっていることがうまくいっているなら、変えなくていい
【ルール2】一度やってうまくいったことは、繰り返していこう
【ルール3】うまくいっていないなら、違うことをやってみよう
とてもシンプルなルールです。目の前の小さな行動を変えれば、未来は変わります。一度やってうまくいったことは、次もその方法でやってみましょう。うまくいったことを何度も続けると、それが得意になります。得意なことができると、自信がついていきます。この繰り返しにより、自分がよりよく変化していきます。
そして、今取り組んでいる方法で成果が出ないなら、他の方法を試してみましょう。うまくいかないのは、今の自分に合っていない方法だからなのかもしれません。自分に合うことに取り組んでいれば、楽しさややりがいを感じ、時間を忘れて没頭できたりします。そうしたものは自然に続けていきたくなるため、時間とともに上達し、得意になっていきます。
くり返しになりますが、「他人」と「過去」は変えられません。変えられるのは「自分」と「未来」です。あなた自身がよりよく変われば、周りの人もあなたに影響され、いつの間にかあなたが望むように変わっていくかもしれません。
そして、自分の未来がよりよいものになれば、過去に対する思い(くやしさ、後悔など)も変わっていきます。「嫌な思いもたくさんしたけど、すべて肥やしになっている」というように、自分の過去を肯定的に捉えられるようになるからです。
ぜひ、変えられない「他人」と「過去」に悩むより、「自分」と「未来」をどのように変えていくのかを考えてみましょう。きっと、今までより何倍もよい変化が現れると思います。
【関連記事】