長期修繕計画はあっても、修繕積立金は不足気味
建物の価値を維持していくために必要なのは、長期修繕計画(26~30年が多い)の作成です。これについては、89.0%が作成していますが、徴収される修繕積立金の額はいくらでしょうか。たとえ立派な修繕計画があったとしてもそれを実行する費用がなければ、絵に描いた餅です。修繕積立金の額は「長期修繕計画にもとづいて必要な額を決めた」が75.9%となっていますが、実際に徴収される金額は月平均で10,783円です。マンションの平均面積を70平米とすると、154円/平米となります。
国が提示したガイドラインによると、目安とされる金額は15階建て未満のマンションでは建物面積により幅がありますが、178円~218円/平米が目安とされています。徴収額がガイドラインより低いという現実は、積立金額が不足し、必要な修繕ができないという事態が生じることを物語っています。
だからといって、積立金の額を上げるのは容易なことではありません。特に年金で暮らす高齢者のなかには、対応できないという人も出てくるように思われます。
建て替えは現実的には難しい
では、価値を維持していくための究極の手段である、建て替えはどうでしょうか。建て替えの検討状況は、建て替えに向けて「一定の方向性は決定したが建て替えは決定していない」が36.4%。「建て替えを目指して検討しているが管理組合の方向性を決定するには至っていない」が13.6%と半数が検討しているものの、出口が見えない状況が続いています。「建物が相当老朽化又は陳腐化しているが、修繕工事又は改修工事さえしっかり実施すれば建て替えは必要ない」という意見も30.0%を占めています。
高齢な人ほど今住んでいるマンションへの永住意識が高く、自分たちが生きている間は、建て替えは避け、だましだましの対処療法で延命してもらいたいという本音が見え隠れしています。とはいえ、高齢者が多数住む中古マンションを敬遠していたら、選択の幅が狭まり、いつまでたっても自分に合ったマンションが見つからないという状況に陥ってしまいます。
そこで、高齢者の割合が高い、築古マンションを選ぶときの留意点について、ご説明したいと思います。
高齢者が多数住んでいる中古マンションを選ぶときのポイント……次のページ