業績不振に陥った任天堂で浮き彫りとなったブルーオーシャン戦略の弱点とは? 

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スマートフォンやタブレットの登場で任天堂は苦境に立たされた

競争のない未開の広大な市場を切り開き大きな成功を収めることのできるブルーオーシャン戦略ですが、今回の任天堂の不振で思いがけずにその弱点を露呈することとなりました。

その弱点を浮き彫りにするために任天堂が業績不振に陥った原因を更に掘り下げていくことにしましょう。

任天堂はDSやWiiで、これまでゲームに馴染みのない顧客層を取り込んで大きな成長を遂げてきました。『脳トレ』や『Wii Fit』でゲームに学習機能や健康機能などを付加することにより、従来のゲームの概念を覆して、より多くの顧客層にアピールし、顧客を増やし続けてきたのです。

ところが、その成功もあるイノベーションをきっかけに脅かされることになります。

それが、スマートフォンやタブレットです。

2007年のiPhoneの登場により、スマートフォンという新たなカテゴリーが誕生しました。また、2010年にはiPadが登場し、より大画面でスマートフォンと同じ機能を利用できるタブレットが普及していくことになります。

このスマートフォンやタブレットが革命的だったのは、デバイスさえ購入すれば無数のゲームやアプリが無料で利用できるシステムを備えていたことです。

広告モデルの採用により、ゲームやアプリの開発メーカーは無料でサービスを提供したとしても、広告で収入を得ることができるようになりました。また、当初は無料でも追加機能が必要な場合は料金を支払わなければいけないという課金モデルも登場し、ビジネスモデルで大きなイノベーションが起こったのです。

もともと、ゲームに馴染みの薄い多くの非顧客を取り込んで成功を収めた任天堂にとって、同じライトユーザーという顧客層を主戦場とするスマートフォンやタブレット向けのゲームは大いなる脅威となり、ビジネスを取り巻く環境は一変します。

DSやWiiで開拓したブルーオーシャンに、これまではライバルとみなされなかったアップルやグーグルなどが切り込んできて、たちまちレッドオーシャン化し、異業種間での激しい競争が繰り広げられるようになってしまったのです。

ブルーオーシャンとは永遠に続くものではありません。どんなブルーオーシャンもやがてレッドオーシャン化することは避けられないのです。任天堂が切り開いたブルーオーシャンは、わずか数年でレッドオーシャン化し、劣勢に立たされて業績不振に陥ってしまったというわけです。

ここにブルーオーシャン戦略の難しさが表れています。

ブルーオーシャン戦略の要諦は『非顧客の顧客化』にあります。つまり、もともと自社の提供するサービスには馴染まない顧客をバリューイノベーションを通して商品やサービスの魅力度をアップし、顧客化しているのです。

ですから、もし他社がイノベーションを起こし自社製品よりも優れたものを市場に投入するなら、雪崩を打ったように顧客が他社の製品やサービスに流れていくことは想像に難くありません。

任天堂の場合でいえば、Wiiの次世代機のWii Uではイノベーションを起こすことができず、従来機の改善に終わってしまったことが致命傷となりました。

特にゲームのライトユーザーは、スマートフォンやタブレットで無料で手軽にできるゲームをダウンロードし、飽きれば毎月続々と増える新作ゲームに乗り換えていくという行動パターンが増えています。実際にユーザーにアンケートを取ったところ、およそ1ヶ月でゲームに飽きて次の新作をダウンロードするという結果も出ています。

このようなユーザーを取り巻く環境の変化が、高いお金を支払ってまでゲームをする必要がないというトレンドを生み出し、任天堂のブルーオーシャンの終焉、引いては業績不振につながっていったのです。

次のページではQBハウスの事例を取り上げ、ブルーオーシャンが終焉を迎える時について考えていきます。