相場を動かす力
「パークシティひばりが丘」(三井不動産)は西武池袋線「ひばりが丘」駅から徒歩2分。1997年築、地上19階建て総戸数391戸の駅近大規模マンションである。デフレで不動産相場が下降線をたどっていた分譲当時、完売まで時間のかかる大型プロジェクトはリスクが高く早期完売(値ごろ感のある価格設定)を優先せざるをえなかった。だが、この物件ではセオリーの逆を選択。地元が中心という住宅販売の常識にも背き、首都圏全域に宣伝を繰り広げた。池袋から急行で2駅、駅前ロータリーに接する利便に自信があったのだろう。地縁のない来場者も多数集め、相場より1割以上は高いと思われる価格で売り切った。今思えば駅前人気の走りをつくったともいえるが、この「広域戦略」は個人オーナーも応用できるアイデアである。
「誰に買ってもらうか」でストライクゾーン(相場に準じた売り出し価格)は動かせる。そう市場に知らしめた例は都心部に多い。「パークコート恵比寿ヒルトップレジデンス」「ザ・パークタワー東京サウス」「千鳥ヶ淵パークマンション」。ピンポイントの立地特性を最大化するための商品企画は業界関係者も驚かせた。市場性を見分ける判断が群を抜いて大胆である。
次なる先見性
三井不動産が住宅分譲事業を切り離し、三井不動産レジデンシャルとしてスタートしてから7年が経過。近年ではエネルギーマネジメントを駆使した設備に力を入れている。次なる一手、新たな取り組みは何か。「グローバル」と「構造変化」。冒頭の記者懇親会で両代表が多用するキーワードだ。不動産業界にはまだまだ前近代的と思える商慣習があるといわれている。開かれた市場になるためにも同社にかかる期待は大きい。
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