ノルウェー/ノルウェー基本情報

ノルウェーの酒事情/消費税・販売時間・ルールなど(4ページ目)

ノルウェーで旅行者が驚くことは、まず「お酒が高い!」、そして「スーパーにはビールしか売っていないの?」ということです。なぜお酒にアクセスしにくいのでしょうか。意外と知られていない北欧ノルウェー人とお酒の歴史、政府による厳しい法律と広告規制、高い酒税、短いお酒の販売時間など、昔から今にわたるお酒事情と旅行者が知っておくと便利なことをまとめました。

鐙 麻樹

執筆者:鐙 麻樹

ノルウェーガイド

ノルウェー人の昔ながらの田舎流 お酒の楽しみ方、
コーヒーと蒸留酒のブレンド「カシュク」

カシュク

写真は蚤の市で見つけたカシュクのマグカップ。「これはパパの”カッフェドクトール・カップ”です。パパはお酒とコーヒーを注ごうとしているけれど、ママが”止めなさい!”って怒っています」と子どもの語りが書かれている

薄れつつはありますが、ノルウェーの一部地域で今でも密かに続いている特殊なお酒の飲み方があります。それは、コーヒーと自家醸造酒をブレンドした飲み物、「カシュク」(Karsk)。kaffekarsk、knikt、kaffeknikt、kaffedoktorとも呼ばれています。1800年代後半に田舎で一般的となった飲み物とされています。伝統的なレシピは、カップの底にコインを1枚落として、コインが見えなくなるまでコーヒーを注ぎ、次にコインが見えるようになるまでスピリッツを注ぐというものです(さらに砂糖を混ぜる場合もあり)。酒会社ではない、一個人が家庭で酒を醸造・販売することは現在は禁止されていますが、中部・北部の田舎では今でもカシュクを好む人がいます。この慣習は昔の食器にも現れており、蚤の市巡りをしていると、カシュクと同じ意味の「カッフェドクトール」(Kaffedoktor)という単語が刻まれたマグカップを今でも見かけます。コーヒーとお酒好きのノルウェーならではの一面といえるでしょう。

このカシュクは、ノルウェー発のカフェバー「フグレン」東京店で飲むことができます(お酒は合法のものを使用)。別記事「北欧デザインとカフェバーの人気店フグレン/オスロ」

飲酒年齢/矛盾している青少年とお酒の関係

ノルウェー青少年とお酒

高校の卒業前に大量にアルコール摂取をする期間があるノルウェー

お酒に関する規制が厳しい印象を受けるノルウェーですが、「もっと厳しくしたほうがいいのでは?」と日本人が疑問に思うであろう、不思議な文化があります。毎年4月半ばから5月半ばまで、赤いズボンのようなオーバールを履いた高校生が各地に出没します。RUSS(ルス)と呼ばれる彼らは卒業を目前に控えており、この期間は「なにをしても許される」存在として社会に認知されています。つまり、18歳から喫煙・飲酒が可能な国なので、お祝いでお酒を大量に摂取し、二日酔いの状態で授業に出席します。この期間には、カール・ヨハン通りなどにこの若者たちが出没するため、驚いた旅行者にカメラで撮影されている光景をよく見かけます。

また、大学のキャンパス内や学生寮の敷地内にも、お酒を販売するバーやパブが設置されています(従業員は無報酬で働く学生です)。特に高校生ルスが騒ぐ時期は、急性アルコール中毒になる若者もいるので問題視はされているのですが、「もう子どもではないのだから、自己責任で」と考える傾向にあるのがノルウェー社会。飲酒に対して実は寛容な国なのだろうか、と首をかしげてしまう一面です。

※ノルウェーでは高校の卒業平均年齢が19歳。ワインとビールは18歳から、アルコール度の高い蒸留酒は20歳から飲酒可能。

お酒を飲む時期

ノルウェーの大晦日の夜

ノルウェーでは大晦日の夜のパーティーは友人たちと過ごす。大量の世界各国のアルコール、炭酸飲料、コーヒーは必要不可欠

ノルウェー人が特にお酒を摂取する時期は、高校生ルスが騒ぐ時期、クリスマスパーティー、大晦日の夜が挙げられます。ほかに、新郎が独身最後の夜を同性の友人たちと楽しむバチェラー・パーティー、結婚式当日の夜にも大勢でお酒を楽しみます。

大学の入学式の後には、「バディ」と名乗る先輩がヘルパーとなって新入生を歓迎する期間があり、グループによってはこの時期にもお酒をたくさん飲みます。新しい人との出会いの場でお酒を楽しむ習慣は日本でもノルウェーでも同じなようです。

免税店が大好き! 週末にスウェーデンまでお酒の買出しに出かけるノルウェー人

これまで書いてきたように、お酒は非常にお金がかかるために、金銭的な消費は少しでも減らしたいと国民は考えます。そこで、まずノルウェー人が目をつけるのが、海外旅行の帰りに立ち寄る国際空港の「免税店」。免税店ではお酒を大量買いするノルウェー人をきっと見かけるはずです。

そして、週末に車でドライブがてらにノルウェー人が出かける場所が、隣国の物価が安い「スウェーデン」。国境付近には、スウェーデン人がノルウェー人のためにオープンした、酒、タバコ、肉製品などを豊富に揃えた大きなスーパーマーケットやモールがあり、これらの現象は「国境ショッピング」と呼ばれています。1人が購入できる酒量は規制されているために、国境ではランダムな抜き打ち検査があり、買いすぎているとそこで没収されてしまいます。大好きなお酒のために、喜んで隣国まで車を走らせるのがノルウェー人です。

<ノルウェーのお酒関連記事>
<ノルウェー料理とお酒が堪能できるオスロの老舗レストラン>
※データは2013年12月時点のものです。1ノルウェークローネは2013年12月現在、約16.8円。おおむね15円前後で推移。

※2013年10月に政権が交代したために、今後お酒に関する法律が変更される可能性があります。よって、酒税や店舗での購入可能時間は変動することがあります。

※取材協力/Special thanks to
Robin Sohrabi-Shiraz (Fuglen Oslo)
Vinmonopolet, Oslo City
Tom Young (Nøgne Ø)
Petter Nome (Bryggeri- og drikkevareforeningen)

※参考資料(電子版資料の閲覧時期は2013年11月)
helsenorge.no, Alkoholpolitikk
Visit Norway, Alkohol
Magazinet Levende Historie, Avhold i 150 år
Magazinet Levende Historie, Juleøl var påbudt ved lov
Hansa Borg Bryggeriet, Ølets historie i Norge
Wikipedia, Karsk
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