3. お気に入りの裏名人をさがそう
ジャズ通を目指すあなたへご紹介する3つめのこだわりポイントは、お気に入りのミュージシャン(演奏者)をさがせ、ということです。これはおそらくは一番簡単なことでしょう。何となくという直感を信じ、好き・嫌いで判断すれば良いからです。最初は誰もが、皆に人気のミュージシャンから入ります。もちろんそれは決して悪いことではありませんが、ジャズ通になるためには、一歩進んで同じ傾向の裏名人も押さえたいものです。
たとえば、マイルス・デイヴィスならケニー・ドーハム、ズート・シムズならスパイク・ロビンソン、ナット・キング・コールのヴォーカルならばオスカー・ピーターソンもなかなか……と言った感じです。
チャーリー・パーカーやジョン・コルトレーンなど、影響力のあるミュージシャンならば、相当数のフォロワーや影響を受けた同傾向のミュージシャンがいます。
そして、それらのミュージシャンは実力的には本家と伯仲する場合も少なくありません。そういった裏名人とでも呼びたいミュージシャンをさがすのも、ジャズを好きになった喜びの一つです。今回ご紹介する、こだわりの裏名人はこちら!
トロンボーン奏者ベニー・グリーン「ソウル・スターリン」より「ソウル・スターリン」
ソウル・スターリン
このCDはまずジャケットの写真と色遣いの濃い青に目が行きます。歯を見せて、屈託なく笑っているのが主役のトロンボーン奏者ベニー・グリーンです。
彼の演奏の出来が良いのは、当たり前ですが、今回の注目は二人参加しているテナーサックス奏者のジーン・アモンズとビリー・ルートです。
テナーサックス界で「ボス」と呼ばれたジーン・アモンズに対して、なかなかどうして一歩も譲らない貫録を見せるもう一人のサックス奏者、ビリー・ルートに着目してみましょう。
この「ソウル・スターリン」は、たとえるならばネオンでにぎわう華やかな都会の夜のひっそりとした裏通り。その地下の一室で行われたギャングの親分同士の会合のようなドスの利いた演奏です。
全編、立ち込めるタバコの紫煙、シングルモルトのビターな味わい、そしてむせ返るような男くさい演奏に終始します。一曲目の「ソウル・スターリン」を聴いてみましょう。のっけから、熱いトロンボーンのベニー親分からの、本日の議題です。
次のスキャット(ドゥビドゥビなどと聞こえる擬音のボーカル)はおそらくは賭場の上がりの状況報告かと思われます。それを聞いてベニー親分はギャング団の今後の見通しを語ります。
続いてロシアのギャング団の視察より戻ったジーン・ボス・アモンズによる音圧のあるぶ厚い威圧感のあるテナー登場です。「ボルガの舟歌」などを交えて、まだ若干旅行気分が抜けないようです。
ピアノソロに続いて、いよいよフィラデルフィア地区を縄張りにするテナーのボス、ビリー・ルートの登場です。居並ぶ凶暴なボスの半端じゃない存在感に負けじと、太い音と説得力のあるフレーズで堂々と渡り合います。
その彼こそが知る人ぞ知る、といいますか、知らない人の方が多い幻のテナー奏者ビリー・ルートその人なのです。
ビリー・ルートは、フィラデルフィアに生まれ、わずかな期間ニューヨークで活動、そのまますぐに、フィラデルフィアに戻ったために、栄えある裏名人の仲間入りをしたテナー、バリトン奏者です。実力は聴いて頂いた通りの折り紙つき。こういう裏名人が沢山いるからジャズ通は止められないのです。
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今回のまとめ
今回ご紹介した、目指せジャズ通! 3つのこだわりポイント- お気に入りの楽器を決めよう
- お気に入りの曲を深く掘ろう
- お気に入りの裏名人をさがそう
そして、あなただけのこだわりが見つかったら、ぜひ私に教えてください。それではまた次回お会いしましょう!