第四位 有名ピアノ奏者 デューク・ジョーダン 「フライト・トゥ・デンマーク」より
「ノー・プロブレム」(危険な関係のブルース)

Flight to Denmark

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このCDはまずジャケットが秀逸です。辺り一面の銀世界。そこに人目をはばかるように佇むワケありの男。おそらくは同行した女性の手によって取られたと思われる秘密のショット。二人は決して一緒に写真に収まる事はありません。二人の関係はまさに危険な関係です。
 

そんな想像力を駆り立ててくれるこのCDの一曲目「ノー・プロブレム」には邦題で「危険な関係のブルース」という題名がついています。この曲の作曲者で演奏しているのは、ピアノ奏者のデューク・ジョーダンです。

この曲は、彼の出世作でもありますが、トラブルに巻き込まれた思い出の曲でもあります。そのトラブルとは、何と自分の作曲したこの曲が、他人の曲として先に有名になってしまったのです。自分の分身とも言える大切なものが、人の手に勝手に渡ってしまった男の悲哀をデューク・ジョーダンほど感じている男はいないかもしれません。

曲の冒頭、ドラのようなシンバルの響きが、何か劇的な変化が起こった事を暗示しています。続いて流れる不安定なドラムのリズムに、確信を思わせるベースのリズムが重なります。そして、冷やかに覚悟を決めたピアノの音色が、二人の逃避行を思わすテーマを淡々と綴って行きます。

恋愛シーンでは、この手の訳ありな話は日常的に起こりがちです。それでも、恋は恋。人の気持ちは誰にも止める事が出来ません。道ならぬ恋もまた大人の一つの答えかもしれません。

「ノー・プロブレム」(問題無し)という題名は、恋の逃避行を続ける二人の必死な思いを投影しているのかもしれません。

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第三位 有名トランペット&ボーカル、チェット・ベイカー「枯葉」より
「シー・ワズ・トゥ・グッド・トゥ・ミー」

枯葉

       枯葉

恋愛シーンでは、おそらくは出会いと同じ数だけ別れがあります。昔の恋人を懐かしみ、惜しむ気持ちを歌詞に込めたこのCDの二曲目のバラード「シー・ワズ・トゥ・グッド・トゥ・ミー」。

この曲はもともと「ヒー・ワズ・トゥ・グッド・トゥ・ミー」という題名で、女性が歌うものでしたが、ここでは男性トランペット&ボーカルのチェット・ベイカーによって「ヒー」を「シー」に代えて歌われています。他にも歌詞の部分で「クイーン」を「キング」に代えており、自分があなたにとっての恋の王様だったと歌われる部分には、別離を受け止められない切なさ、深い後悔を感じます。

やさしいストリングスに支えられるように、どこか頼りなげに歌いだすチェット。歌い上げるごとに感情がこもり、ちょうど演奏が始まって2:00のところで「アイム・ソー・ブルー」と心からの絶唱を響かせます。

続くチェット自身のトランペットの間奏にも、取り返しのつかないものごとを静かに受け止めようと努力している姿を感じます。そして、その姿にこそ、ロマンチックな香りが宿っています。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、人は皆老いて、ついには誰もが命のともしびを消す運命にあります。チェットが歌うものは、去って行った恋人に見立てた過ぎ去りし自分の時間だったのかもしれません。ドン・セベスキーのストリングスとボブ・ジェームスのエレクトリックピアノがあくまでもやさしくいたわるように演奏されるのが印象的です。

もし、あなたが大切な人との別離に苦しむ時が来たのならば、是非とも思い出してほしい演奏です。

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第二位 超有名トランペット奏者 マイルス・デイヴィス 「クッキン」より
「マイ・ファニー・バレンタイン」

クッキン

       クッキン

人は誰もが、簡単に手に入るものより、苦労して得たものの方を大切に思うそうです。それは恋愛シーンもまったく同じ。ロミオとジュリエットの昔から、手の届かない所にあるからこそ、さらに愛しさが募るのが恋愛のダイゴ味です。

そんな甘くない辛口の恋愛シーンを求めている人には、恰好のBGMがこの超有名トランペット奏者のマイルス・デイヴィスによる「マイ・ファニー・バレンタイン」です。
 

ピアノのレッド・ガーランドによる美しいシングルトーンのイントロ(前奏)に続き、おなじみのテーマがマイルスによって奏でられます。そもそも、この曲はスタンダードとして、多くのミュージシャンに取り上げられ、あらゆるジャズのスタンダードの中でも最も有名な曲と言ってよいもの。あなたもこのメロディはどこかで一度は聞いた事があるはずです。

マイルスは、その有名な甘いテーマをそのまま吹くのではなく、あくまでもマイルス自身の歌としてフェイク(くずし)をしながら綴って行きます。そこには決してスイートミュージックではない、マイルスの考えるこの曲のビターな世界が展開されています。

マイルス・デイビスといえばミュート(トランペット用の弱音器、ベルと呼ばれるトランペットの先端に差し込んで使う。マイルスはハーマン社の物を愛用)プレイと言われるほど、ミュートでの演奏を好んでいました。この「マイ・ファニー・バレンタイン」はそんなマイルスのミュート演奏の決定版と言われるものです。

また、この「マイ・ファニー・バレンタイン」という曲自体もマイルスの演奏が決定版の一つとされているものです。マイルス自身もこの曲が気にいったのか、この後ライブなどで頻繁に取り上げる重要なナンバー(曲)になっています。

もしこのマイルスの演奏が気にいったのなら、沢山ある他の演奏家のこの曲も是非集めてみてください。きっと、多くのあなたの気にいる演奏に出会えるはずです。すべては出会いから始まる恋愛シーン、好きな曲との出会いも同じです。

恋愛シーンにピッタリな定番ジャズ・JAZZベスト7、次のページではいよいよ第一位の登場です。

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