約115年の歴史があるジャズは、モダン・ジャズを中心として、モダンジャズ以前とモダン・ジャズ以後の大きく3つの時期に分かれます。

モダン・ジャズ以前のジャズがオールド・ジャズの時代です。その古き良き時代のジャズには、現代のジャズがどこかに忘れてしまったあたたかい音があふれています。

寒い日やつらい時には、心や体のトゲを取ってくれる、ほっとするあたたかい音が聴きたいものですね。今回は、日々の生活の中で、疲れてしまい、落ち込んでしまった時などにきっと癒しの気持ちを与えてくれるオールド・ジャズをご紹介します。

ニューオリンズの至宝 ソプラノ・サックス奏者 シドニー・ベシェ「ブルース・イン・ジ・エアー」より「サマータイム」

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「サマータイム」はスタンダードの中でも、ミュージシャンに好んで取り上げられる曲です。一説によると世界中で2万5千を超えるカバー録音があるそうです。おそらくは、これほど全世界で愛されているスタンダード・ソングもないでしょう。

この曲は、1935年ジョージ・ガーシュインによって黒人が主演のオペラ「ポーギーとベス」のために作られた曲です。

ほとんどのキャストが黒人と言う、当時にしては画期的な試みのオペラは、やはり世間の理解を得ることはありませんでした。しかし、その中の挿入歌「サマータイム」は、今日に至るまで世界中のあらゆる場所で演奏され続けています。

その先駆けとして、1939年に録音され、いまだに決定的名演と言われるのが、このシドニー・ベシェのソプラノ・サックスによる演奏なのです。

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「サマータイム」は、もともとオペラの中で、赤ちゃんへの子守歌として使われた曲です。このベシェによる演奏を一聴すれば、その母の子守歌のようなやさしさに、疲れたあなたの気持ちも癒されてくることでしょう。

ベシェの奏法は、細かいビブラートの多い、揺れ動くまさに歌うようなソプラノ・サックスです。そのビブラートと、元来持っているサックス自体の音色の柔らかさが、何とも言えないあたたかな雰囲気を醸し出し、この「サマータイム」を名演としています。

後半に入ると、ドラムのシドニー・カトレットのスネアのロールとともに、段々と熱を帯びた演奏となります。はめをはずす一歩手前で引いてみせる大人の感性が、この演奏に品格を与えています。

いずれにしても、このベシェによる1939年の「サマータイム」の演奏は、この曲の最初にして、そしていまだに決定版です。これからいつの時代になっても、聴く者の心をほっとさせてくれるでしょう。

次のページでは、映画のテーマやテレビなどで有名なあの曲の登場です!