ジャズとクラシックの違いって?

ジャズと他の音楽の違いシリーズ第三弾は、ジャズより圧倒的に長い歴史を誇る「クラシック」と「ジャズ」の違いを大きく3つ、誰にでも簡単にわかるようにご説明いたします。

クラシック音楽と一口に言っても、6世紀以前の古代の音楽から含めると、現在まで1500年以上の歴史があることになります。時代やスタイルなど様々なジャンルに分かれており、すべてを一つにくくるのは無理があります。ここでは、一般的にクラシックと呼ばれているものは何か?からご紹介します。

クラシックは当初は歌、合唱から始まりました。口伝が一般的でしたので、当然、楽譜など資料がないものがほとんどです。

クラシック音楽においては、口伝によるものを、記憶して歌う、演奏するというのが長い間一般的でした。では、現代にまで繋がる音楽の基礎となったのはいつからかというと、大バッハと呼ばれるヨハン・セバスティアン・バッハに代表されるバロック音楽からになります。今からおよそ400年前の17世紀頃からです。

ヨハン・セバスティアン・バッハ(J.S.Bach)は1685年ドイツ生まれ。1600年頃より始まったバロック音楽の後期に活躍した人。生涯多くの曲を残しましたが、バッハの功績として1番に上げられるのが、平均律を提唱し、そのための曲を残したことです。(平均律クラヴィーア曲集)

平均律とは12音階のこと。現代においてもほとんどの音楽の基礎となっており、私たちが小学校で習ったドレミもこれ。そのためにバッハは「音楽の父」と呼ばれています。

つまりは、現在一般的に言われているクラシック音楽とは、バッハが活躍したバロック音楽からと言えます。クラシック音楽は約400年の歴史があることになります。

一方ジャズは、アメリカ、ルイジアナ州のニューオリンズに1900年頃から始まったとされ、約100年の歴史がある音楽です。

その上で、クラシックとジャズの違いを説明すると、こうなります。

簡単にわかる! クラシックとジャズの大きな3つの違い

  1. 生まれが違う ヨーロッパとアメリカ
  2. リズム隊が違う リズム隊不在とリズム隊重視
  3. 楽譜が違う 楽譜とアドリブ

1、生まれが違う ヨーロッパとアメリカ

クラシック音楽は、いにしえのヨーロッパに生まれ、ジャズは新大陸のアメリカに100年前に生まれました。ここが大きく違います。

クラシックは、最初は歌から合唱へとなり、教会音楽として発展しました。そして、楽器の発達とともに教会だけでなく、富裕層の特権階級の人たちのものになっていきました。

現在では、クラシックは世界中に広まり、いろいろな国で演奏されていますが、もともとはヨーロッパからです。

ジャズも同じく現在では全世界で演奏されていますが、もとはアメリカで生まれたもの。

クラシックは「ヨーロッパ」ジャズは「アメリカ」と覚えればOKです!

2、リズム隊(ベース、ドラム、ピアノなど)が違う リズム隊不在とリズム隊重視

クラシック音楽は、それぞれの楽器のメロディの重なりで出来ています。ジャズやポピュラー音楽でいうところのリズム隊(ベースやドラムなど)という、常にリズムを刻んでいる楽器はありません。

リズムの変化は、楽譜の演奏記号にそって行われ、その他は指揮者によって指示されます。

ジャズは、リズムやビートを強調した音楽です。常にリズムをとっているリズム隊が活躍する音楽と言えます。リズムは多くの場合、最初に出したテンポが守られます。その一定のテンポの中で、リズムの強弱を表現するのです。

ここが大きく違います。クラシックにおいては、リズムよりもメロディ(旋律)に重きが置かれ、ジャズにおいては、4ビートなどのリズムに重きが置かれます。

クラシックはリズム隊不在ジャズはリズム隊重視と覚えればOKです。

3、楽譜が違う 楽譜とアドリブ

クラシックとジャズでは楽譜が大きく違います。クラシックは、それぞれの楽器がメロディを奏でることにより曲になっています。そのために楽器の数だけのメロディが書かれた指揮者用のスコアと、各楽器用のパート譜があります。

対してジャズは、かならず和音(コード)が記入されたコード譜か、和音の他にメロディも書かれたメロディ譜です。ここが大きく違います。

クラシックは楽譜至上の音楽と言ってもよいでしょう。クラシックにおける楽譜の大切さを表した印象的なエピソードに、1984年の映画「アマデウス」があります。若き日のモーツァルトがいかにして亡くなったかに迫った作品で、非凡なモーツァルトと平凡なサリエリの内面の対立を描いた傑作です。

アマデウス

アマデウス


なんとか世渡りの下手な夫、モーツァルトを認めてもらおうと、若き妻のコンスタンツェが、すでに当時は著名になっている作曲家のサリエリにモーツァルトの新曲の楽譜を見せるシーンです。

サリエリはそこに書かれている曲に神の世界を感じ、感動してしまいます。そして、それを悟られないように楽譜を置いていくようにコンスタンツェに言います。するとコンスタンツェは、それは出来ない、なぜならば夫はいつも1つしか楽譜を書かないからだと言います。

サリエリは、驚きます。なぜならば、その真新しい楽譜(スコア)には、書き直しや推敲の後が全くなかったからです。モーツァルトは、このような神の音楽を、頭のなかで最初から完成させているのか…
サリエリは、この時に嫉妬でモーツァルトに殺意を覚えるというシーンです。

事実モーツァルトには、新曲の楽譜が無くなってしまうという事件が多くありました。彼は、これが当時のライヴァルのせいだと思っていましたが、この映画のようなことは実際にあったのかもしれません。楽譜が無くなってしまうと、曲自体が存在しなくなってしまう。クラシックにおいて楽譜はかように重要なものです。

ジャズは、アドリブ(即興演奏)の音楽です。楽譜はそれほど重要ではありません。コード進行の流れから、無限にメロディを即興で紡いでいくのがジャズの真骨頂。どちらも素晴らしい音楽ですが、ここが大きく違います。

クラシックは「楽譜」ジャズは「即興(アドリブ)」と覚えてください!

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もうひとつのバイロイト第九

もうひとつのバイロイト第九


「もうひとつのバイロイト第九」より「ベートーベン交響曲第9番」 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー

このCDが2008年に出た時には、大げさではなく全世界が驚きと歓迎をもって迎えました。なんと、長らくベートーベンの第九のベスト演奏と目されていた1951年の「バイロイトの第九」の同日の別演奏だったからです。

しかも、格段に音が鮮明なのは、ファンを狂喜乱舞させました。この演奏が世に出たことにより、フルトヴェングラーの遺産が、場所を超え時代を超え、さらに継承されることになったと言ってよいでしょう。クラシックの指揮者界において、最高峰ともいえる、巨匠渾身の演奏がここにあります。

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プレイ・バッハ・トゥデイ

プレイ・バッハ・トゥデイ


「プレイ・バッハ・トゥデイ」より「平均律クラヴィーア第1集」 ジャック・ルーシェ

ジャック・ルーシェは1934年生まれのフランスのジャズピアニストです。そのルーシェが1959年フランス、メジャーのレコード会社デッカのスタジオでバッハを弾いて遊んでいるのをプロデューサーが偶然聴き、そこから「プレイ・バッハ」の構想が生まれました。

このプレイ・バッハ・シリーズは大当たり。600万枚以上のセールスを記録します。以後ルーシェは一貫してクラシック曲をジャズ風にアレンジして発表をしています。

まるで、ジャズの生い立ちのような偶然のミックスによる新しい出会い。ルーシェにとって、その後を左右する出来事になりました。

ジャズミュージシャンの中には、クラシックが素養のミュージシャンは少なくありません。ピアノのフリードリッヒ・グルダ(彼の場合はむしろクラシック奏者がジャズを弾いているのかもしれません)、同じくピアノのアンドレ・プレヴィン、ベースのリチャード・デイヴィスロン・カーターなどが有名です。

そして、ビ・バップピアノの名人アル・ヘイグは、録音時のマイクテストの時に、よく軍隊ポロネーズなどのショパンを弾いていたと言われています。しかし、そのうちの誰もがクラシックとジャズの融合でルーシェのような成功はしませんでした。

このバッハの有名な「平均律クラヴィーア第1集」は、初演が1960年。この演奏は1993年の再演、「プレイ・バッハ・トゥデイ」からのものです。

ここでは、まずストレートにおなじみの旋律がルーシェによって奏でられます。そして、次第にベースやドラムが絡み、ジャズ・バッハの世界に聴き手を誘います。

この「プレイ・バッハ・トゥデイ」での出だしは、「平均律クラヴィーア曲集」の名演として名高いスヴァトスラフ・リヒテルのものに似ていてハッとさせられます。レガート(滑らかに音を続けて弾くこと)を主体とした演奏です。録音の感じも、ザルツブルグの宮殿で録られたリヒテル盤に近い残響になっています。相当に意識しているのは間違いがないところ。

それが、ベースとドラムが入ってきた主題の後半では、今度は、2拍目と4拍目の16分音符をスタッカート(1音符を短く切って演奏すること)させ、明らかにこちらも名盤で名高いグレン・グールドのノン・レガート解釈を真似ています。

この辺のあざとさも、ジャズの大衆的な楽しさと言えます。曲の後半では倍テンポでスウィングし、ジャズファンの溜飲を下げてくれます。

それにしてもこの演奏は33年後の再録にもかかわらず、構成がほとんど変わっていません。もしかしたら、ルーシェは「平均律クラヴィーア第1集」を弾く時には、この構成と決めているのかもしれません。毎回違う刹那的な即興を主体とするジャズの精神とはちょっと異質な、むしろクラシック寄りなプレイヤーなのだと言うことができます。

ジャック・ルーシェはその存在自体が、クラシックとジャズの良心的な融合体なのかもしれません。

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CELLO SUITES

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「無伴奏チェロ組曲」J.S.バッハより「第1番ジーグ」 清水靖晃

このバッハの有名な「無伴奏チェロ組曲」は、なんとチェロではなく、テナーサックスによって演奏されています。それも、ジャズ・ミュージシャンの清水靖晃によってですので、二重に驚かされます。

クラシック畑のフルートやバリトン奏者のものはこれまでもありましたが、清水の挑戦は、ジャズ・ミュージシャンとしての勝算があってのものだということが聴いてみてわかりました。

特におもしろいのが、6曲目の「第1番ジーグ」です。ここで清水はサックスのグロウル(ウーとかアーと声を出しながらサックスを吹く技法。それによって独特の濁った響きになる。ロックンロールなどでよく聴かれる)によってチェロの弦の響きを出そうとしています。それが、まさにジャズで使われるところのアグリー・ビューティー(セロニアス・モンクの曲の題名。ジャズの本質をこれ程とらえた言葉はありません)のサウンドであり精神。

1分半くらいの短い演奏ですが、ジャズメン清水の面目躍如といった演奏です。

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清水と言えば、代表作の「北京の秋」

北京の秋

北京の秋


「北京の秋」より「エヴリシング・ハップンズ・トゥ・ミー」 清水靖晃

このアルバムは、1983年にリリースされた、清水靖晃の最高傑作と言ってよいもの。全曲清水のアレンジによる、近未来的なストリング・セクションをバックに清水がいにしえのスタンダード曲を吹きまくります。

特に最終曲の「エヴリシング・ハップンズ・トゥ・ミー」では、坂本龍一が参加しピアノを弾きます。坂本は「イエロー・マジック・オーケストラ」などテクノポップの先駆者で、自らが出演し、音楽を担当した映画「戦場のメリークリスマス」でアカデミー賞を受賞するなど、世界的に活躍しているミュージシャン。

そのピアノのプレイは意外にもノスタルジック。淡々とした味わいで、ウェットな清水のサックスとの相性はバッチリ。このゴージャスでありながらどこか現実味のないアルバムの最後を飾るのにはふさわしい演奏です。

1曲目の「ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス」も甲乙つけがたい力演。その他にも「ナイト・アンド・デイ」や「四月の思い出」、「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」など名曲名演ぞろい。結局のところ全曲必聴な、ジャズメン清水靖晃のオススメ盤です。

今回のジャズとクラシックの違いはいかがでしたか。次回以降も、そのほかの音楽ジャンルとのわかりやすい違いをご紹介していきます。また次回お会いしましょう!

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