三寒四温の言葉の通り、少しずつ暖かい日が増えてきたと思ったら、いつの間にかもう四月。本格的な春の訪れです。辺りは花の息吹でいっぱいになります。

四月を代表する花と言えばやはりサクラです。この季節に日本中を縦断するように咲きみだれる、もっとも愛される日本を代表する花。サクラを愛でる習慣は、古来より現在に至るまで続いています。そんなサクラ鑑賞の季節にピッタリのジャズCDをご紹介いたします。

あなたに、最初にお勧めするのはこの一枚です!


Charlie Parker With Strings: The Master Takes

Charlie Parker With Strings: The Master Takes

 
超有名アルトサックス奏者チャーリー・パーカーのCD「ウィズ・ストリングス」

<「ウィズ・ストリングス」より オススメベスト二選>

昔ならば、月明かりでの雅な鑑賞だった夜桜見物も、現代ではライトアップされ、デートシーンでも定番的に使われるようになりました。そんな二人の夜桜デートのイメージにぴったりなのが、チャーリー・パーカーのサックスにロマンチックなストリングスが絡む、この「ウィズ・ストリングス」です。

「ジャスト・フレンズ」

まずは一曲目「ジャスト・フレンズ」から聴いてみましょう。出だしからパーカーのアドリブ(即興演奏)が、まるで思いのたけを抑えきれないかのように飛び出してくるので、ちょっと驚いてしまいます。

アドリブとはジャズではもっとも重要視されている即興演奏部分のことを言います。情熱があって刹那的なパーカーのアドリブは、サクラに例えるなら、夜風にたなびくピンクの「八重桜」。自分の中から次々に湧き出るオリジナルなメロディの花びらが、サックスから辺り一面に噴き出すかのような、幻想的なイメージすら抱いてしまいます。

ジャストフレンズは、恋人だった相手との関係がただの友達になってしまったという内容の別れの歌です。「ある日突然ただの友達なんて、そんなのないわ」と歌われる有名なスタンダードです。

ここでのパーカーは、本来のテーマメロディと自分のオリジナルメロディ(アドリブ)が一体となって、この曲を切々と歌い上げます。チャーリー・パーカーは本来アドリブの超絶技巧ぶりで有名になった人。ですが、実は駆け出しの頃にニューヨークのダンスホールで、一分刻みに曲のテーマだけを、次々と吹き続ける仕事をしていた事がありました。そんなパーカーの心には、アドリブ以上に数々の歌のテーマが滲みこんでいます。

曲のテーマを大事に吹奏するには、ムーディーなストリングスの伴奏がピッタリです。パーカーがストリングスとの共演を好んだというのは、このCDを聴いている私たちにとっても幸せな事だったと言えます。

「四月の思い出」

十四曲目の「四月の思い出」を聴いてみましょう。センチメンタルなテーマが特徴のこのスタンダードを、パーカーはメロディをあまり崩す事無く歌って行きます。

この「四月の思い出」のテーマはパーカーもお気に入りだった様です。別の年に吹きこまれた、まったく違う曲のアドリブでこのテーマが出てきます。実はこれは、パーカーの間違いではなく、ジャズのアドリブでは結構頻繁に使われるテクニックの一つです。

このように、違う曲でのアドリブで他の曲のテーマを引用する事を、「クォーテーション」(引用)と言います。皆さんが、これから色々なジャズのアドリブを聴いていって、明らかに違う曲なのに「あれ、この部分なんか聴いた事がある」と思う瞬間が出てきたならば、それはこの「クォーテーション」という事です。スタンダードのテーマをたくさん憶えて行くと、そういう楽しみ方も増えます。

チャーリー・パーカーは、今回の最後のページでご紹介するトランペット奏者ディジー・ガレスピーと二人で「モダン・ジャズ」の元になった「ビ・バップ」というジャンルを作った人。ジャズ界ではパーカー以後のあらゆるサックス奏者はもちろん、「モダン・ジャズ」の世界自体でも、影響を受けていない人はいないと言われるほどのレジェンドです。

それだけに色々とたくさん神話的逸話は残っていますが、中でもジャズの世界だけでなく、ミュージックシーンでは知らない人はいないと言われる「マイルス・デイヴィス」という超有名トランペット奏者の次の言葉があります。

「つまるところ、ジャズってのは次の4つのワードで表わされる。その4つのワードってのは、ルイ・アームストロング・チャーリー・パーカーさ」

ここで出てきた「ルイ・アームストロング」もジャズ界のみならずポップスの世界でも超有名な人です。偉大なトランペット&ボーカルで、歌の心やメロディを大切にした人です。

つまるところマイルス・デイヴィスが言いたかったのは、「ジャズってのは偉大な歌心なんだぜ」って事かもしれません。

二枚目に聴いてほしいCDとそのストーリーについては、次のページで紹介します。

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