近代映画の始まり、トーキー(発声映画)の記念すべき第一作は、1927年アル・ジョルソン主演の「ジャズシンガー」です。この映画はその名の通り、ジャズ歌手を描いた作品。「You ain't heard nothin' yet!(お楽しみはこれからだ!)」というセリフで有名です。

これより現代にまで続く映画の歴史は始まりました。そして、もうじき100年にもならんとする映画とジャズの関係も、ここから始まったのです。

現在に至っても、映画のテーマやシーンの中でジャズが印象的に使われることは多くあります。そしてジャズの持っている一面でもある退廃的、官能的なサウンドは、その映画の作風や評価に影響を及ぼすものも少なくありません。

今回は、特に人間の声に一番近いとされるサックスで奏でられる、テーマが艶かしい映画の中から、ベスト3をご紹介いたします。
 

第3位 リドリー・スコット監督、ハリソン・フォード主演作品「ブレード・ランナー」より「愛のテーマ」 ディック・モリシー

ブレードランナー オリジナル・サウンドトラック

ブレードランナー オリジナル・サウンドトラック

「ブレード・ランナー」は、1982年の作品です。近未来の2019年におこるレプリカントと呼ばれる人間そっくりのロボットと、それらを殺傷するブレードランナーと呼ばれる警察の壮絶な戦いを描いた近未来SFの傑作です。

このいまだにカルト的な人気と影響力を誇る映画の音楽を担当したのはギリシャの作曲家、シンセサイザー奏者のヴァンゲリスです。ヴァンゲリスは、この映画のほかにも「炎のランナー」などでアカデミー賞のオリジナル作曲賞も受賞した、映画音楽の分野で国際的な評価を受けているアーチストです。

映画の封切から30年以上たった今でも、ヴァンゲリスのシンセサイザーの音色、作風、構築された音世界は色あせていません。

その中で、今回ご紹介するのはシンセサイザーとサックスによって奏でられる「愛のテーマ」。シンプルなテーマですが、映画の中でも印象的なシーンで使われ、それだけにサックスにとっては聴かせどころです。

この曲は、レプリカントの女性レイチェルと、ブレードランナーのデッカートのラブシーンで使われました。アルトサックスのGの音から、B♭の音まで、順番に下がってくるだけですが、何とも言えない甘く切ないテーマになっているのが見事です。

ここでサックスを吹いているのが、イギリスのソニー・ロリンズ派のサックスとして有名なディック・モリシー。ディック・モリシーは、テナーサックスを主に演奏する生粋のジャズマンですが、イギリスだけにロックバンドとも縁がある、フレキシブルな音楽性を持ったミュージシャンです。

テーマの途中ディックは、E♭の音を、効果的なグロウル奏法(ガーというような声を発しながら吹く奏法、ロックンロールでよく用いられる)で吹いており色っぽさを演出、大人の男の歌に仕上げています。

そのハートフルなサックスとヴァンゲリスによるシンセサイザーは、絶妙にマッチングしており、まさにレプリカント(ロボット)の愛のテーマにふさわしい近未来的なサウンドになっています。

劇中の、ハリソン・フォード扮するブレードランナーのデッカートのもつ野性味と熱情、それと相反するかのように、殺し屋として大都会に生きる者の持つ寂しさや冷めた感覚。それらを感じさせる名演です。

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ディック・モリシー、その他のおススメ 「ヒア・アンド・ナウ・アンドサウンディング・グッド!」より 「リトル・ミス・サッドリイ」 
ヒア・アンド・ナウ・アンド・サウンディング・グッド!

ヒア・アンド・ナウ・アンド・サウンディング・グッド!

このCDでは、ディックが直接的に影響を受けたソニー・ロリンズというよりも、同じロリンズ派のテナーサックス奏者JRモンテローズに近いイメージです。

ハード・バップ期のいぶし銀の名テナー奏者JRも速い曲だけでなくバラードにも独特のハードボイルドな味わいがあります。ここでのディックによる演奏も極力センチメンタルなイメージを排除したビターな味わいがグッド。

次ページに登場するのは、名優ロバート・デ・ニーロの有名主演映画です!

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