熱狂的なサッカーの国ブラジルには、サンバに代表される熱狂的な音楽が沢山あります。特に60年代に世界的にブームとなったボサノヴァには、アメリカのジャズも直接影響を受けました。結果として出来たジャンルが、「ジャズ・ボサ」です。今回から、2回シリーズでその「ジャズ・ボサ」の名演、名曲をご紹介します。

ジャズ・ボサはこの曲の大ヒットから始まった!
クールテナーの大御所スタン・ゲッツ「ジャズ・サンバ」より「デサフィナード」

ジャズ・サンバ

ジャズ・サンバ

すでにジャズのサックス界では大御所だったスタン・ゲッツによって吹き込まれたこの「ジャズ・サンバ」によって、ジャズボサが生まれました。

スタンは、当時世界的なブームになりつつあったボサノヴァをいち早く取り入れ、1962年にこの「ジャズ・サンバ」というアルバムをつくりました。そして、このアルバムは瞬く間に大ヒット。アメリカジャズ界でのジャズ・ボサブームに火をつけたのです。

このCD「ジャズ・サンバ」では、特に1曲目「デサフィナード」が、ポピュラーシーンでも人気を博した代表曲。ボサノヴァの名曲が、スタンのサックスにかかれば、流れるようにスムースに聴こえます。

心地よいメロディのきれいなテーマですが、実はこの「デサフィナード」という意味はなんと「音痴」という意味。作曲者のアントニオ・カルロス・ジョビンが仲間の歌手をからかって作った曲なのです。

そのせいか、確かによく聴くと、転調が多く、歌うにはむずかしい曲になっています。その難曲を、スタンはスイスイ、快調に飛ばします。アドリブでは音の高低や強弱のメリハリが自由自在、テンションの高い素晴らしい出来になっています。

一般的に大ヒットしたために、ポップス曲としても扱いを受けることが多いこの演奏ですが、決して軟弱なものではなく、さすがのスタンによって第一級のジャズ・ボサに仕上がっています。

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映画などでおなじみのテーマ!誰もが知ってるポップなビッグバンドジャズ・ボサ
アメリカ音楽界のドン、ミスターQことクインシー・ジョーンズ「ビッグ・バンド・ボサ・ノヴァ」より「ソウル・ボサ・ノヴァ」

Big Band Bossa Nova

Big Band Bossa Nova

 

この曲は何年か前のヒット映画「オースチン・パワーズ」で使われ、そのほかにもよくテレビでも流れているテーマです。聴き覚えのある方は多いと思います。

幾度となくグラミー賞を受賞しているヒットメーカー、ジャズトランペッターでもあり、アレンジャーやプロデューサーとしても有名なクインシー・ジョーンズが若き日に放ったジャズ・ボサのヒット曲です。

2分44秒の短い曲ですが、この後のクインシーをポップス界での大成功に導く冴えがあります。曲の聴かせどころを知り尽くしたアレンジは、演奏の随所に表れています。

そして、短いながらもローランド・カークによるフルートソロも聴きものになっています。そこでは、ローランド特有の声を出しながらのノイジーなフルートが興奮を誘います。

後テーマでは、ユニゾン部分(同旋律を同時に奏する部分)の音を微妙にはずし、ユニークさを醸し出しているのも個性派ローランドらしい解釈です。

ノリノリであっという間の2分44秒の後は、必ずもう一度聴きたくなるダンサブルでゴージャスなサウンドです。

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新主流派ジャズテナーの重鎮ジョー・ヘンダーソンの最初にして最大のヒット曲!
ジョー・ヘンダーソン「ページ・ワン」より「ブルー・ボッサ」

Page One

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この「ブルー・ボッサ」は、もしかしたらJAZZ通の中では一番有名なジャズ・ボサナンバーかもしれません。多くのプレイヤーにもカバーされるジャズのスタンダードになった曲です。かくいう私も、大学のJAZZ研時代には毎日のように演奏していた懐かしい曲です。

作曲したのは、このアルバムでトランペットを吹いているケニー・ドーハムです。ケニー・ドーハムはチャーリー・パーカーとも共演していたモダンジャズの名人です。デビュー当時のマイルス・デイヴィスとも丁々発止と渡り合っていた大物。そのケニーのバンドに入ることで、ジョー・ヘンダーソンは華々しいデビューを飾ることができたのでした。

そして、そのジョーの記念すべき初アルバムの「ページ・ワン」に、ジョー最大の当たり曲となった「ブルー・ボッサ」をプレゼントしたのでした。

もちろん、ジョー自身も多くの曲を作曲をし、この後何曲も自作で吹込みをしていますが、この「ブルー・ボッサ」ほど親しまれた曲はありません。

ジョーにとってはちょっぴりほろ苦いエピソードですが、この「ブルー・ボッサ」を天下の名曲にしたのはやはり、この演奏でのジョーのアドリブによってでした。

作曲者のケニーは、自分の曲の持つミステリアスな雰囲気を、この吹込み時には自身があまり理解していなかったかのようです。いかにもラテンと言ったようなフラッタータンギングと言われる濁った音でソロを取っています。言ってみればソロ自体がやや安っぽく感じてしまう、ひらめきのなさです。

この曲ががぜん水を得るのは、やはりジョーのソロになってからです。8ビートの動きのない単調なリズムの中では、ソリストの奏でるメロディの、特にリズムアプローチが重要になります。そのまま乗っているだけでは、すぐに単調でつまらないものに感じてしまいます。

ここでの、ジョーは、さすがに心得た出だし。そのごつごつした堅めの音色から、石つぶての雨が降ってくるかのようなスリリングなソロを展開していきます。

このジョーのアドリブこそが、これぞ、モード新生代のテナーサックスと言ったものです。このジョーの多彩なリズムアプローチを駆使した、一世一代の粋なソロ。これによって、この「ブルー・ボッサ」は名曲の仲間入りしたと言えます。

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本人の知らないところで大ヒット!日本で一番愛されたジャズ・ボサ名演
ハンク・モブレー「ディッピン」より「リカード・ボサノヴァ」

ディッピン

ディッピン

 

ジャズに限らず、音楽界では、日本だけで流行ると言う現象が時々起きています。このハンク・モブレーによる1965年の「リカード・ボサ・ノヴァ」は、まさにそんな曲の代表ともいえる演奏です。

この1965年当時はまさに、世界中がボサノヴァブームの中にありました。ジャズメンたちはこぞって、ボサノヴァの曲を自身のアルバムに取り入れました。

そんな数多くの、とりあえずやってみました的な演奏の中で、群を抜く出来と評判なのがこのハンクの「リカード・ボサ・ノヴァ」です。そしてこの演奏は本国アメリカでよりも、日本のみで人気が高いのでも有名なアルバムです。

ジャズ関連の書籍を何冊も書いている小川隆夫氏の本によると、晩年のハンクは、日本でこの曲が売れていることはもちろん知らず、そればかりか、この曲自体をすっかり忘れていたというエピソードが載っています。

この悲運な哀愁漂う曲は、1959年にブラジルで作曲されました。その異国の曲をここでのハンクは、まるで自身の作曲した曲かのように、あざやかに演奏しています。忘れていたとはいえ、この曲を取り上げた選曲の良さも、良いミュージシャンの条件と言えます。

日本で人気のこの「リカード・ボサ・ノヴァ」。今日もどこかのプレイヤーから、ハンク渾身の哀愁メロディが流れていることでしょう。

今回のジャズボサ特集はいかがでしたか。まだまだご紹介していないジャズボサの名曲、名演はたくさんあります。次回も引き続きジャズボサのおススメをご紹介します。また次回お会いしましょう!

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