ハンク・モブレー 「ハンク・モブレー・カルテット」より「アヴィラ・アンド・テキーラ」

ハンク・モブレー・カルテット
題名にあるアヴィラは、スペインの都市の名前。そして、テキーラはご存じメキシコの代表的な蒸留酒です。これはスペイン人から製造法が伝わったとされているスピリッツ。その因果関係にある都市とお酒の2つが題名になったこの曲は、ラテンタッチと4ビートがほど良くブレンドされた佳曲です。作曲したのはハンク・モブレーその人。
このCDはハンクの記念すべきブルーノートデビュー第一弾。気のせいか、普段よりもバリッとした硬めの音で鳴るハンクのテナーが特徴的。
もしかしたら、大好きなテキーラを控えて、張り切って吹きこんだのかもしれませんね。そんな、想像が楽しい、初々しいハンクのテナーが楽しめます。
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オスカー・ピーターソン「ウイ・ゲット・リクエスツ」より「酒とバラの日々」

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この曲は「ザ・デイ・オブ・ワイン・アンド・ローゼズ」という原題で、夫婦そろってアルコール依存症に苦しむお酒の持つ残酷な一面を描いた映画の主題歌です。
その割には、明るい曲調で、ここでのオスカー・ピーターソンの演奏からも、その悲惨さは微塵も感じられません。テクニカルに軽快に演奏する事で、むしろ人間の弱さや小ささを表現しているかのようです。
「酒とバラの日々」は、ワインの種類くらい演奏されているスタンダードですので、深刻な内容の歌を小粋に呑みやすく、聴きやすく演奏する、このオスカー・ピーターソンから入って行くのが良い方法かもしれません。
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ワインで思い出すのが…
ワインで思い出すのが、テナーサックス奏者デクスター・ゴードンが自ら出演し、アカデミー助演男優賞の候補にまでなった映画 「ラウンド・ミッドナイト」です。
ラウンド・ミッドナイト
もちろん役柄デイルの体を気遣っての事ですが、そこでのデクスターの演技とは思えないしぶい表情が印象的です。
この映画に出演する少し前の81年頃に来日したデクスターの演奏を郷里の会津若松で見ました。小さなコンサートホールでしたが、最初の三曲位をトリオで演奏して、随分たってからようやくあの映画通りのゆらーっとした足取りで袖から出てきたデクスターは、自らのMCで曲を紹介しながら吹き始めました。
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その時の曲が彼の代表作の「ゴー」よりの「チーズケーキ」。

ゴー!
どう見ても大酒飲みで、この時もおそらくはステージの袖で一杯やっていたであろうデクスターの代表作が「チーズケーキ」というのも可笑しいところです。
もしかしたら、大きなデクスターの大きなサックスからもれ出す、お酒の香りに、まだ未成年の私が酔ってしまったのかもしれませんね。
ジャズはお酒と同じ、覚えるまでに時間がかかるもの。たとえばビールのように、最初はこんな苦いものどこが美味しいのだろうかと思えたものが、今では、いつの間にか水よりも大事な存在に。もしかしたら、一筋縄ではいかないタフさが、ジャズとお酒に共通した大人の愉しみなのかもしれません。
今回のお酒とジャズはいかがでしたか。ぜひ一度どこかでご一緒したいものですね。また次回お会いしましょう!
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