・メイン
雷鳥のパイ包み焼き
そして、メインはシェフが「今後も追及していきたい調理法の一つ」と語られる「パイ包み焼き」。今回は雷鳥を使ったパイ包みとなっており、これが素晴らしき傑作! 「パイ包み焼き」というとフランス料理というイメージがありますが、今回の「雷鳥のパイ包み焼き」は私が食べてきた限り、過去最高の感動を与えてくれた「パイ包み焼き」料理でしたね。
まず、シェフの「雷鳥のパイ包み焼き」の構成ですが、中央に低温調理したフォアグラ、それを熟成させた雷鳥の胸肉で包み、その周囲をさらにマルカッサン(子供のイノシシ)のミンチと雷鳥の内臓(心臓と砂肝)で包み、最後に一番外側をパイ生地で包んで焼いてあります。
パイ生地の焼き色、ソースの色艶。どれもお見事
焼き方はパティシェの奥様が得意とするガレット・デ・ロワの焼き方を参考に、細心の注意で火入れを繰り返し、完成した料理は写真のように、パイと具の間には一切の隙のない、肉の詰まり方を実現! そして隙間がないだけでも驚きですが、何より特筆したいのは、その火入れ具合。雷鳥の肉部分はもちろんのこと、内臓やミンチ部分も余すことなく、全体にキレイで均一の火入れが施されてあるのには驚きました。
雷鳥自体も熟成してあるだけではなく、臭みは丁寧なマリネで抑えてありながらも、雷鳥の独自のビター感も損なわれない程度に維持されているという絶妙の仕事ぶり。そこにマルカッサンでさらなるコクと旨味が付与されており、旨味と香り芳醇な仕上がりになっているのです。
バイザグラスはグラスのさらにハーフもオーダーできます
ソースは、フォンドヴォーとジビエのエキスに、マルサラワイン、ポートワイン、赤ワイン(ネッビオーロ種)の3種類のワインを用いて仕上げられていて、これが実にコクのある複雑な甘みと高貴な香りで雷鳥を引き立てていました。赤ワインと共にいただきたい一皿です。
意識の高さと仕事料理の多さが生み出す、美味しさ
イタリアらしい素朴感のあるパンが好印象
「地元の旬の食材をふんだんに使って、その美味しさをイタリア料理という形で世界に発信したい」と熱っぽく語られる田淵シェフ。謙虚で真摯な姿勢と実力に裏づけられた丁寧な仕事には脱帽ものです。これからもシェフの料理世界は進化し続けていかれると思いますが、特に今回いただいた「パイ包み焼き」は極めていってほしいですね。季節限定料理ですが、皆さんも是非「雷鳥のパイ包み焼き」をお試しあれ。
注) 2017年移転情報追加。
「クレメンティア」は2017年7月に閉店し、2017年9月に「LUDENS」と店名を変えて新たに移転オープンされました。当記事は移転前の記事となります。ご注意くださいませ。