建物の構造が決まるまで
「混用構造」とはどんな構造をいうのでしょうか。
まずはじめに、機能性、安全性、経済性など各面から検討してその建物の構造形式を決め、それからそれに適した構造種別や使用材料を決めます。特に構造形式を決める際は、その建物にあった明快な方法を選択することが大切とされています。
構造形式と構造種別
トラス構造の例。
ラーメン構造とは柱・梁のフレームで力を伝達する方法、壁式構造とは壁の部分で力を伝達する方法、トラス構造とは三角形を基本としてそれが集まって構成される構造形式を言います。
【図1】構造形式の例。トラス構造には鉄橋などがある。
構造種別とは建物の主要な骨組みを形成する材料で種類分けしたもので、木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造などがあります。
混用構造とは
あまり聞き慣れない言葉ですが「混用構造」とは、例えばひとつの建物に「ラーメン構造」と「壁式構造」が混ざっているもの、またはひとつの建物に「鉄筋コンクリート造」と「木造」の二種類の構造種別を採用しているものをいいます。後者のように鉄筋コンクリート造と木造など「二つの構造種別を同時に使う方法」は、例えば地下室を持つ戸建て住宅では、地階を鉄筋コンクリート造にして、その上の地上階を木造で造るなどが考えられ、比較的よく見かける方法です。注意したいのは前者の「ラーメン構造」と「壁式構造」を一つの建物で採用している物件です。
ラーメン構造と壁式構造の混用に注意
日本建築学会の公表している「簡易な耐震診断」(RC編)では、旧耐震の建物で、構造種別が混用構造の場合は耐震診断が必要である、としています。また、中古マンションの購入で、住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」を利用したいと考えた時にはいくつかの基準に合格しなければなりませんが、その中の一つに「耐震性に関する基準(耐震評価基準)(共同住宅の場合)」というのがあり、そこで「構造形式がラーメン構造と壁式構造の併用をしていないこと」という条件が盛り込まれています。ここでいうラーメン構造と壁式構造の混在した建物のイメージは【図2】をご覧ください。
【図2】ラーメン構造と壁式構造の混用構造イメージ。
なぜ混用構造は地震に弱いのか
上記のことから「混用構造」の建物は耐震性が低いと判断されていることがわかります。その理由としては【図2】のような建物では、上の建物の力が下に明快に伝われないからと考えられます。例えば【図2】のような混用構造の建物では、壁式構造の部分で壁を伝わって下に流れてきた力は下部のラーメン構造の梁の伝わります。梁は水平に架けられる横架材(おうかざい)なので、上から大きな力が伝わってきても垂直方向にうまくそれを流してあげることができません。梁の部分に大きな負担がかかる形となり、冒頭で述べたような「明快な」方法とは言えないでしょう。
中古マンションを購入時は混用構造に注意
ラーメン構造と壁式構造の混用構造は、今ではあまり見かけることはありません。しかし、古い建物にはあるかもしれません。これから中古マンションを購入予定の方は、その建物が、壁式構造とラーメン構造の混用構造になっていないかをチェックするようにしてください。【関連記事】
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