マンション物件選びのポイント/マンションの構造・耐震性

地震が起きたらどこに逃げると安全?

地震が起きたらどこに逃げるのが安全でしょうか。家の中で避難するのが安全なのか、外に行くべきか。また、「地震の時はトイレに逃げなさい」と言いますが、それは本当なのでしょうか。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

地震が起きた時に安全な逃げ場所はどこ?

家にいるとき地震が起きたら、どこに逃げると安全でしょうか?そもそも、家の中にいるのと外に逃げるのとどちらが安全でしょうか。また、家の中ではどこにいたら安全なのでしょうか。昔はよく「地震の時はトイレに逃げなさい」と言われました。それは現代でも通用するのでしょうか。なぜトイレは安全なのでしょうか。
地震が起きたら、どこに逃げれば安全?

地震の時、どこに逃げたら安全?


万が一の時に慌てないよう、逃げ場所を決めておくようにしましょう。家の中と外、どちらが安全?その答えは、その家が古い家なのか新しい家なのかによっても変わってきます。
   

1981年以前に建てられた旧耐震基準の木造家屋目安:築37年以上

建築確認申請を1981年以前に受けた築37年以上の古い木造家屋は、多くが旧耐震基準で建てられています。その場合、震度5強程度の地震でも、家が倒壊・崩壊する可能性があります。震度5強の地震は数十年に一度あるといわれ、木造住宅の平均寿命30年の中で1~2回程度経験する可能性がある、つまり身近な地震と言えます。

この年代の古い木造住宅では、もともと家の重さを支える壁の量が1、2階とも少ないものが多く、大地震が起きた時は全体の荷重を支える1階部分がつぶれる可能性があります。
 
古い民家が密集している地域は外も安全ではない

古い民家が密集している地域は外も安全ではない


従って、1階にとどまることは危険度が高いと言えます。外の状況にもよりますが「地震が起きたら外に逃げる」ことも一つの選択肢になります。ただし古い木造家屋が密集している地域では、外に出ると上から何か落ちてくる可能性もあります。周辺の状況によって判断するようにしてください。
 
 
 
 
 

1981年以降~2000年の間に建てられた木造一戸建て

1981年以降に建てられた木造住宅は新耐震基準に基づいて建設されており、それ以前に建てられた住宅に比べ、耐震性が期待できます。しかし、最近の調査より、新耐震基準を採用していても、2000年以前に建てられた木造住宅では「約85%に耐震性において不安がある」という調査結果が報告されています。

【参考サイト】
中古住宅購入時は年代を確認!新耐震でも倒壊の危険性

従って、地震時に家が倒壊する可能性があることを念頭に、大きな地震が発生したら自宅の外に逃げるという選択肢も検討してください。

 

2000年以降に建てられた木造住宅の場合

2000年以降に建てられた木造住宅は、基本的に家の中にいても安全なのですが、気をつけたいのは家具の転倒です。転倒防止対策を取っていない部屋の中にいれば転倒した家具の下敷きになって怪我をする可能性があります。大地震が発生したら、家具のない部屋に移動するか、安全であれば外に逃げるという選択肢もあるでしょう。

また、家がいくら頑丈に作られていても、地震の影響で地盤が液状化したり地すべりが起こった場合は危険です。また、新しい住宅でも、建設時に手抜き・欠陥がある家では旧耐震の建物と同じく危険性は高くなります。大地震が起こった時は、家の様子をよく見て判断してください。
 

外部が安全な時は「外に逃げる」もあり

以上、建築年代から「大地震時にどこに逃げたらよいか」を見てまいりました。2000年以降に建てられた木造家屋であれば倒壊する恐れが少ないため、家にとどまっていてよいでしょう。一方、それ以前に建てられた住宅にお住まいの場合は、震度5以上の大きな揺れが発生したら家が倒壊する危険性があるため、外部の安全を確認の上、外に逃げるということも検討してください。
 
家の近くに安全な空き地や広場がありますか?

家の近くに安全な空き地や広場がありますか?


もし、ご自宅の近くに安全な空き地や広場があれば、いったんそこに逃げるという選択肢もありますが、その空き地に行きつくまでの間に、倒壊しそうな古いブロック塀や、落下の危険性のある重い瓦屋根の家などがないかチェックしておきましょう。

次にマンションのケースを見ていきましょう。

 

危険なマンションとは?

RC造のマンションでも木造と同じく築37年以上、1981年以前に建てられた建物の場合、震度5以上の地震にどれだけ耐えられるか未知数です。大地震の時は注意が必要です。
 
1981年以前に建てられ、耐震補強などをしていない古いマンションは倒壊する恐れも。

1981年以前に建てられ、耐震補強などをしていない古いマンションは倒壊する恐れも。


また、1981年以降に建てられた新耐震基準のマンションでも大地震のときは避けたい場所があります。それは、柱のみで壁のないピロティ空間や、吹抜けになった空間です。それらの部分は建物の弱点となり、大地震時にダメージを受ける可能性があります。阪神・淡路大震災で被害を受けたRC造の建物の多くではそれらの部分に被害が集中していました。

大地震が起きた時、例えば新耐震基準の高層マンションの上階では、建物の倒壊・崩壊はなくても揺れが大きく家具が転倒したり気分が悪くなることもあるでしょう。余震が続く恐れがある時、自宅以外の場所に避難した方が安全だという判断もあると思いますが、1階のピロティ部分や吹抜けのあるロビーなどには避難しないほうがよいでしょう。
 
 
 
 
 

トイレは安全か?

ところで、「家の中ではトイレが一番安全」というのは本当でしょうか。木造住宅の場合、壁や柱に囲まれた空間が小さいほうが、大きな空間よりも地震時の揺れに耐えやすいでしょう。トイレはその条件にちょうどあてはまります。さらに、トイレには家具がないため、上から何か降ってきたり、家具の転倒という危険性もありません。
 
在来木造住宅でトイレは比較的安全な場所です。ドアを開けて避難経路を確保することを忘れずに。

在来木造住宅でトイレは比較的安全な場所です。ドアを開けて避難経路を確保することを忘れずに。


従って、昔からよく言われてきた「地震の時はトイレに逃げろ」は現在でも通用する考え方なのです。ただし、建物が傾いてまれにドアが開かなくなることがあるので、トイレに逃げ込んだ時はドアを開けて避難経路を確保しておくようにしましょう。

 

その他に安全な場所

家具をなるべく置いていない空間が安全です。本棚やタンスなど背が高い家具は倒れやすくて危険ですが、大型テレビや冷蔵庫、ピアノなど重量の大きいものも、大地震の発生で倒れることが報告されています。事前に転倒防止対策を取ってあれば良いのですが、もし取っていない場合はそれらがない部屋に移動して、揺れが収まるのを待ちましょう。
 
 
 
 

建設年のチェック、家具の転倒防止対策を

大きな地震が発生したとき、どこに逃げたら安全なのかを見てまいりました。2000年以降に建てられた木造住宅なら耐震性が期待できます。大きな地震が発生したら、家の中で置き家具のない場所に避難してください。古い木造家屋の場合は、倒壊・崩壊の恐れがあるため、近くに逃げられる空き地や広場があるかどうかチェックしておいてください。

1981年以前に建てられた築37年以上の古いマンションの場合も、倒壊・崩壊の恐れがあるため、外部で安全に避難できる場所をチェックしておきましょう。但し、古くても耐震診断を受け、適切な耐震補強を行っている場合は安全性が期待できます。

いずれにしろどんなお住まいに住んでいるとしても、共通事項として、家具の下敷きにならないよう、置き家具の転倒防止対策をしっかり取っておきましょう。

【関連記事】
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