マンション(イメージ写真)
地震に強いマンションであるためには、適切なメンテナンスも欠かせません。
経年劣化で発生するクラック
コンクリートの壁や柱、梁などに入る割れ目、裂け目のことを「クラック」または「ひび割れ」といいます。大きな地震にあった際に建物にクラックが入ることもありますが、経年劣化によって入るクラックもあります。表面に塗ったモルタルのクラック程度ならあまり問題はありませんが、コンクリートの内部にある鉄筋が露出するほど大きなクラックは、放っておくと耐震性や耐久性に悪影響を与えます。地震、経年劣化、どちらが原因のクラックとしても、適切な処置が必要です。
クラックはなぜ悪い?
クラックを放置しているとなぜ悪いのでしょうか? それは、クラックから水が入り込むことで、中の鉄筋が錆びると建物本来の耐震性能を低下させるからです。また、クラックがあると建物の美観を損ないます。地震によって大きな力を受けた時、柱にX型のクラックが入ることがありますが、これはせん断力が働いて発生したクラックです。柱にせん断破壊が起こると、建物が急激に倒壊・崩壊する恐れが高くなり、危険です(【図1】)。
【図1】柱にX型にクラックが入るせん断破壊が起こると建物が倒壊・崩壊する恐れがあり、大変危険です。
経年変化によるクラックの例
経年劣化によりクラックが入る場合もあります。一つ目の原因として不同沈下があります。不同沈下とは、建物が水平ではなく、傾きながら沈む現象を言い、建物に大きなダメージを与えます。建物は重量があるため年月が経つにつれ沈むことがありますが、その際に不同沈下を起こすことで、窓際などに斜めのクラックが入ることがあります(【図2】参照)。
【図2】時が経ち不同沈下が起こると建物の窓際にクラックが入ることがある。
【図3】コンクリートの乾燥収縮でもクラックが入ることがある。
問題のあるクラックの目安と補修
・海の近くなど塩害を受けやすい土地では幅0.2ミリ以上のクラック・それ以外の地域では幅0.3ミリ以上のクラック
クラックの補修方法はクラックの大きさによって変わります。小さいクラック(幅0.2ミリ以下)が複数入り、目立ってきたら、コンクリートの表面全体に樹脂によるコーティングを行います。そうすることで、クラックが大きくなることを防ぎます。
クラックの幅が大きい時は、中の鉄筋のさびを防止するために、ひとつひとつのクラック部分に樹脂やセメントを詰めます。
早め早めの補修を
実際は、クラック一つ一つを埋めていく作業はとても大変です。美観的にも、クラックの跡が残る可能性もあります。ですから、できれば小さなクラックの内に、コンクリート表面全体に塗装を行う補修をしておく方が、手間や美観的に優れています。マンションの耐震性を維持するためにも、クラックや鉄筋のさびなどの劣化にきちんと対処しておくことが大切です。
【参考文献】
よくわかるコンクリートの劣化と補修 槇谷栄次著/森北出版
我が家の耐震-RC造編- 日本建築学会
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