非常用電源があっても、使い方がわからない
- 山田
- 当然、免震・制震は皆さんやっていらっしゃいますが、今回われわれがかなり力を込めて対策したのは家具転倒防止です。正直いって、マンションは地震が起きても、仙台でもどこでも、建物自体が倒れるというのはなかった。マンションに居れば、しっかり生活の場が保てると思っていたのです。
- ところが、仙台の竣工済マンションをスタッフがずっと回っていったなかで、お客さまの話を聞くと、家具が倒れてそのショックが大きく、生活の再建どころじゃないという。
- 間仕切り壁には家具転倒防止は付けていましたが、戸境壁にはつけていなかったんです。しかし、住まいを考えてみると、戸境壁にも棚や食器棚を置いている。だからそこには、家具転倒防止のための下地が入ってしかるべきだと。
- しかし、難しいのはコンクリートの壁にどうやって下地を入れるかです。コンクリートは共用部分ですから、勝手に釘を打ってはいけないですし、場合によっては釘を打つことによって鉄筋を傷つける可能性だってある。すると、強度の問題も出てくるかもしれない。
- じゃあ、このコンクリートの壁にどうやって下地を入れようかということも、かなり検討し、実験を重ね、関係省庁に行って確認したりということまで行いました。結果、戸境壁にも転倒防止対策を施せるようにしました。
- 震災後のインフラについては、非常用電源の確保がありますが、72時間、3日間公助が来るまで、ずっと運転しようと思うと膨大な燃料が必要です。しかも危険物の取扱いといった問題も出てくる。そこで、われわれが考えたのは、3日間なんとか耐えられる、運転し続けることができる計画を作ろうと。つまり、2,000リッターの重油なら、それを3日間でどう使っていくかのプランを前もってつくることにしたのです。
- たとえば、エレベータをずっと動かすのではなく、「一日のこの時間」と指定することによって、72時間なんとか持ちこたえられるプランをつくりましょうと。実際、超高層なら非常用発電源はどこのマンションにも付いています。しかし、それをどういうふうに動かしていいか、どこにもマニュアルがなかったのです。
- ある超高層マンションでは、みんな取り残されているので、エレベータを非常用発電機を使って運転していいだろうかと消防署へ問い合わせると、それは火災のための設備なので動かさないでくださいといわれた。ところが、別の消防署は動かしていいという。基準がないんですね。だから管理会社もどう対応をしていいかわからない。だから、その決まりを前もって定め、管理組合で運用できるようルールをつくったわけです。
- 共助という意味では、防災倉庫、防災備品の内容を見直しました。実際に使えるものを置きましょうとか、竣工したあと管理組合に防災訓練を必ず呼びかけて参加してもらおうとか。管理会社と一緒に、どうやっていくかのルールを定めたのです。
三井不動産レジデンシャル
都市開発事業部都市開発一部長
兼 商品企画室長
山田貴夫氏
三井不動産レジデンシャル 山田貴夫氏
- 坂根
- 非常用電源を動かすマニュアルは、いいですね。知恵というか、学習効果というか。
- 山田
- そうですね。誰が動かす判断を出せるのか。誰が重油を使っていいかのか。これらをあらためて見直し、防災マニュアルとしてまとめました。今後マンションにお住まいの方はより安心してお住まいいただけるのではないかと思います。
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3-抜本的に見直し、三井不動産レジデンシャルの防災基準
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