仕事柄取材等を受けるときに、いい二世帯住宅とはどういうものですか、と聞かれることがあります。その時私は、「家族それぞれで異なる同居のスタイルに合った家」と答えることにしています。つまりいい二世帯住宅を建てるには、設計前に同居のくらしをイメージすることが必要なのですが、実際には同居してみるまでわからない、という方が多いのではないでしょうか。
そこで、今回はリアルに同居のくらしをシミュレーションする方法を書いてみたいと思います。

1.共働き子世帯で孫が帰宅するシーン

家族構成

図1:家族構成の想定
この家族で同居のシーンをシミュレーションしてみる

くらしをシミュレーションするときは、まずドラマのシナリオを書くようにシーンを設定し、そのシーンで何が起きるか、家族それぞれがどのように行動するかを想像していきます。これは建築設計の世界では「シナリオ・アプローチ」と呼ばれ、使う人の行動を具体的に想像し事前に的確なシミュレーションが行えるため、常識に捉われずに質の高い建物を造るのに有効な方法と言われています。
今回は、図のような息子夫婦同居の二世帯で、共働きの子世帯が留守の場合に、孫(=子世帯のこどもたち)が学校から先に帰ってくるシーンを設定します。そして、独立二世帯の具体的なプラン上で何が起きるのかを考えてみましょう。

まず、スタートシーンとして平日の15時、孫が帰宅する時間に親世帯夫婦(父・母と呼ぶことにします)が何をしているのかを想像します。とりあえず、父母共に在宅しているとしましょう。父は1階のリビングでTVを見ているかもしれません。このときのTV番組は何でしょうか? TVを見ているということだけでなく、相撲なのか、水戸黄門なのか、そこまで考えることがリアルなシミュレーションのコツになります。番組によって、父だけが見るのか、母も横目で見ているのか、孫も一緒に見るのか、などのシーン展開が変わってきます。何となく同じTVを見ることで、孫が歴史に興味を持った、という話を訪問調査で伺ったことがあります。このような親世帯父母の何気ない生活に触れることが子どもの成長にとっていい影響を与える機会となることがあります。

同様に、母の行動も考えて見ましょう。洗濯物の取り込みをしているのか、夕食の準備を始めているのか、買い物のリストを作っているのか。あるいは家事の間の休息時間で本を読んでいるかもしれませんし、趣味の手芸をしているかもしれません。

プラン

図2:想定するプラン
独立二世帯で玄関2つ、子世帯は主に2階で暮らす。孫の帰宅時にすることを考えながらプラン上で動線を描いてみる。想定したことがうまくできない場合、プランを再検討する。
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このような時間に小1の男の子が帰宅するとき、二世帯住宅で玄関が2つある場合に親世帯子世帯どちらの玄関を使うのでしょうか。調査結果を小学生以下の孫がいるケースで集計してみると、親世帯の玄関を使うケースは子世帯妻が専業主婦の場合でも約4割、フルタイム勤務の場合は8割以上に達しています。カギは親世帯父母、つまり孫の祖父母が開けてくれるか、その時間を見計らって開けてあるのではないかと思います。インターホンが親世帯子世帯で分かれている場合、親世帯の方を押すことになります。

父は孫が帰ってくることを見計らって庭いじりを始めるかもしれません。父が庭に出ていれば、このプランのように庭が道路に面している場合は、帰ってくる孫を出迎える意味もあり、インターホンを押す必要もなくなります。道路にも自然に目が届き通学路としての防犯上、安全性を高める効果も期待できるでしょう。

グラフ

図3:親世帯玄関を使う孫の割合(独立二世帯:玄関2つの場合)
子世帯の妻がフルタイムの共働きの場合、親世帯の玄関を使う割合は84%に達する。それ以外でも4割強が親世帯玄関を使っている。
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