【前回までの記事】
二世帯で子育てする「孫共育」
新しい傾向!家事融合による共働きスタイル
息子夫婦同居に多い孫共育・家事分離の同居スタイル
孫共育は息子夫婦同居・娘夫婦同居を問わず子育て期の二世帯に共通した傾向です。「孫共育」の回でも触れましたが、孫共育すれば、親世帯が孫の部屋に行く機会も増えます。親世帯が孫の部屋に行く理由を調べてみると、「子世帯の留守時に様子を見る」は半分以上の世帯で見られ「ゲームなどで遊ぶ」「病気の看病」といった項目が息子夫婦同居娘夫婦同居に差がなく行われていました。子世帯が共働きの場合、親世帯と孫で暮らしている昼間の時間帯には、親世帯が孫の世話をすることになりますが、このときの暮らし方には息子夫婦同居、娘夫婦同居で差がありません。(図1)【図1】孫の部屋に行く目的
二世帯同居における「孫共育」調査報告書:旭化成ホームズ(株)くらしノベーション研究所;2010.4発表 より、孫共育に関する調査C(2010.3実施)の結果。親世帯回答。
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しかしながら、「放置されたものを戻す」「洗濯物の収納」「掃除片付け」といった孫がいないときにも行く片付け系の家事については、息子夫婦同居は娘夫婦同居に比べ、大幅に少なくなっています。孫が居るから行く、家事のためだけなら行かないというのが息子夫婦同居に多いスタイルと言えます。
前回の「家事融合スタイル」で触れたように、息子夫婦同居では夕食準備や洗濯での親世帯への家事集約は、子世帯が共働きであっても少ない傾向がありました。特に洗濯では9割近くが別々で娘夫婦同居・共働きでは半分近くが基本的に一緒であったのと大きく異なる傾向でした。このような同居スタイルを「孫共育・家事分離」と呼ぶことにしましょう。
孫共育・家事分離で変わるプランニングの考え方
まず今までのプランニングの中で、「孫共育・家事分離」というくらし方をした時の問題点を考えてみましょう。今までのプランでは孫の部屋は子世帯の奥の方、つまりできるだけ子世帯家族と出会うように造られることが多かったと思います。少年犯罪がクローズアップされるたびに、家族から隔絶された個室中心の間取りが原因の一端と攻撃された影響もあって、(実は学術研究では、間取りが原因で少年犯罪に結びついた例はないと言われているのに)個室と玄関とを近づけることへの抵抗感が生まれ、子供がLDKを動線上必ず通る間取りが良いとされてきました。今まで世帯ゾーン分離のプランでは、親世帯が孫の教育には関わらないことを前提にしていて、親世帯が子世帯の留守中に来ることは想定されていなかった、と言っていいと思います。その結果、「孫共育」で親世帯が孫の様子を見るために部屋に行く時は、子世帯の LDKを通過する間取りが多くなりました。子世帯の特に息子夫婦の場合の妻にとって、親世帯に留守の間にLDKに入られる、というのはいい気持ちではないと思いますし、親世帯の方も遠慮して極力入らないようにしているのではないかと思います。これが結果的に、親世帯から孫の様子が見づらい間取りを生んでいたと思います。
共働きの子世帯が留守の間は、孫と親世帯が一つの家族として暮らしている、と考えれば、親世帯と孫の部屋はできるだけ近づけた方がいいのではないでしょうか。そして子世帯の帰宅後や休日は、孫の部屋には子世帯と密接に関わりができるような配慮も必要です。このような昼と夜で孫の生活圏が移動していくようなくらし方を素直に形にすると、孫のゾーンを親世帯と子世帯との中間に置くことになります。そうすることで、子世帯のLDK を通らずに孫の部屋へ行くことができ、親世帯の気兼ねが減り子世帯のプライバシーが守られやすくなるのではないかと思います。(図2)
では次ページでプラン例を紹介しましょう。