部下の育成に必要な6つのリーダーシップとポイントとは?
成績不振に陥っている、遅刻が続いている、同僚とのコミュニケーションが上手くいっていないなど、悪い状況を克服しないとなかなか結果は出せないものです。このような状況には何らかの原因が潜んでいます。
成績不振は、仕事へのモチベーションが上がらないことが主要因であることが多いもの。遅刻は習慣・クセの話で、いやいやモードであれば会社へは足が遠のくものです。うまくいかないコミュニケーションは性格タイプの違いや能力レベルの差もあり、仕事への取り組み姿勢に対する温度差に起因すると考えられます。
以下、部下育成に必要な6つのリーダーシップを掲げていきたいと思います。
その1:目標・目的を明確化する
ビジョンを持った人は強い
みなさんの人生で充実していた時期を思い出していただくとよく分かると思います。自分で定めた目標・目的を達成するために過ごしていた時期は、忙しくてもハリのある日々を送れていたのではないでしょうか。そのハリこそがモチベーションの高い状態です。つまり、目的意識を持って行動することで、自分の行動1つ1つが目指すべき到達点に繋がっていくことが実感でき、やる気がさらに喚起されていきます。
組織という単位で考えた場合、まずリーダーは組織全体の目標を明確化することが必要です。漠然としていて、抽象的な目標では意味がありません。それは、抽象的な目標だと、それを達成するために必要な道筋を具体的に描けないからです。
具体的な道筋が見えてこないと、目標達成のために回り道をしてしまい、モチベーションを維持し続けることも困難になります。部下が明確な目標・ゴールを共有していないと、コミュニケーションもちぐはぐになってしまい、全体としての一体感も生み出すことができなくなります。
そしてもう1つ、組織にとっての目標とメンバーそれぞれ個人の目標とのベクトルが同じ方向を向いていることも重要です。例えば、その目標を追い求めることで、自身の求めているスキルアップが見込めるならば、必然的にモチベーションも上がり、その目標を実現するために行動を起こしてくれることでしょう。そのためにも、対話やコミュニケーションを通じた納得目標であることが求められます
よく野球選手は「3割30本30盗塁」と目標を定量化します。また、「夢に日付をつける」という表現がありますが、自分の目標に日付をつけて具体化することの有効性を説いています。成功している人ほど、定量化されて期限まで設けられた具体的な目標を持っています。これは組織においても同じことがいえるでしょう。
目標・目的を明確化することで、
- 到達点が具体的なため、その達成に向けての戦略も具体化される
- 戦略実行のプロセスで評価しやすい(進捗状況管理がしやすく、成長実感を得やすい)
という2つの効果も期待できます。
最後に、目標を達成するためには、そこにエネルギーを集中させる必要があります。あれもこれもと手を出していてはエネルギーが拡散してしまいます。そのため、何かを捨てる勇気も必要になります。リーダーとしては目標の明確化、すなわち何を選び取って何を捨てるのかをはっきり提示することで組織全体の力を高めていかなければなりません。
その2:共有価値観の創造をする
共通言語で結束力を固めよ
そのような一貫した社内共通言語があれば、組織のメンバーも迷うことなく仕事に没頭でき、モチベーションの維持にも効果があります。
また、「新しい」言葉や概念という部分にもこだわるべきです。新しい言葉による共通言語は独自の世界観を持ち、メンバー内に独自の連帯感を生み出します。独自の連帯感は、日本人の特徴である阿吽の呼吸をもたらし、同じ意識で仕事に取り組むことができ、メンバー同士でモチベーションを高める相互作用が働くことでしょう。リーダーは、その共通言語を自ら生み出すことが大切です。
その3:会社に愛着を持たせる
働く組織に対するブランド意識を、組織に内在化させることもまた重要です。メンバーは、愛着の感じられない組織に対してブランド意識など感じられません。その愛着を醸成させるためには、組織内のコミュニケーションを密にすることが不可欠です。例えば、半年に1回程度でよいので、メンバー全員を集めた会議で、今の組織の強みや弱み、外部にどのように見られているのかなどを議論しましょう。メンバーは、こうした議論を通じて客観的に自らの組織を見つめることができます。さらに、それを踏まえて自分は何をすべきかということが明確に見えてきます。
メンバーに組織への愛着をもたせるためには、インフォーマルなコミュニケーションを積極的に増やすことが必要です。そのようなインフォーマルな場で行うコミュニケーションは現在減少傾向にあり、仕事と離れた場での社員同士の交流が見直されてきています。
メンバー同士の交流の場を作り出すことで、今まで話すことのなかったような人との交流が生まれ、また意外と新しいアイデアがそこから生まれてくることもあります。そして、組織やメンバーに愛着を感じ、自分がこの組織で働くことの喜びやロイヤリティを再認識できる場となるでしょう。
これらの方法は、自らの仕事への愛着・組織への愛着を生み出し、モチベーションを高めるための方法となります。メンバー個人、組織全体の両方の視点から「モチベーションを高める」ことについて考えていただきたいと思います。
その4:仕事に愛着をもたせる
会社と仕事に愛着を持たせよう
「知るより好く、好くより楽しむ」という言葉があります。これは、日本の資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一氏の名言であり「どんな物事も、知ることより好きであることが必要であり、さらにそれを楽しむことはもっと大切だ」という意味です。仕事が楽しければ自ずとやる気が高まり、より知識を求めるようになります。そして、知識が増えればさらに仕事が楽しくなります。組織内にこのやる気の好循環を生み出すことが必要なのです。
ではどうすればメンバーに「仕事が好き」「仕事が楽しい」と感じされられるのかというと、メンバー1人1人のパーソナルブランドをしっかり確立させることが大切であると考えます。パーソナルブランドを確立させるために、リーダーができる工夫は2つあります。
- メンバーに自分の専門性を磨かせる
- 他者から自分の価値を評価される
その5:自己実現の欲求を満たす
仕事は幸せを運ぶもの
そのためには、「自ら手を挙げて取り組める仕組みを創ること」が何よりも大切となります。リクルート社やGoogle社は、自ら進んで取り組む社員を積極的に奨励し、逆にただ仕事を待っているだけの社員は淘汰されていきます。リーダーはやる気のみなぎる部下のやる気を削いではいけません。そのためにも、「正しい権限委譲」や「否定から入らず、まずは肯定する」という意識を持つ必要があるといえます。
このように、第1に手を挙げて進んで取り組ませる仕組みを創り、第2にその意見を安易に取り下げずまずはやらせてみるという意識、最後に失敗した人を淘汰せず、再チャレンジの機会をもたらすこと。この3つこそが、自己実現の欲求を満たすためのモチベーションを高める方法であると考えます。
その6:「働くこと=幸せ」の公式
部下のニーズを、対話やコミュニケーションを通じて汲み取り、反映させることでモチベーションを高めていくことが重要です。なにもES(従業員満足度)を高めていけばよい、というわけではありません。一般的に、ESを高めるためには、報酬制度であるとか働きやすい福利厚生制度、環境などのインフラ整備を整えることが挙げられます。
そうしたところではなく、仕事そのもののやりがいや面白み、組織に所属することの喜びなど、心理的報酬にあたる部分を重視して考えることで、モチベーションを高め、成果を上げる集団作りに励んでいただきたいと思います。
最終的にお伝えしたいことは、自らが組織のリーダーとして指揮をとるならば、部下に対して「働くこと=幸せ」という公式を持って仕事に取り組んでもらえるように舵取りをしてほしいということです。社会人にとっては、働く時間が一日の中でも最も長く、また部下は上司を選ぶことはできません。そのため、リーダーは部下に対して、ある種の責任を負わなければなりません。ここでいう責任とは、「働くこと=幸せ」という意識を持たせるよう努力することなのです。
リーダーとして、部下が組織に、または仕事に対して求めていることは何かを十分に感じ取り、そこに自分の持つ特性やスキルから、自分としては何を提供できるか、どのような工夫ができるか、どのようなアドバイスを与えることできるかを考えて実行することで、モチベーション向上と組織全体の力を高めていけるように努力していきましょう。
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