年末調整/年末調整の仕組みと注意点

確定申告で遡って申告できるのは過去何年?年末調整のやり直し【動画で解説】

年末調整で申請し忘れた控除があって修正したいなら、確定申告で還付申告するのがおすすめです。還付申告は過去5年間まで遡ることが可能、つまり5年間の猶予期間があります。既に確定申告していたなら「更正の請求」という修正方法もあります。

田中 卓也

執筆者:田中 卓也

税金ガイド

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年末調整の申請し忘れ、確定申告でやり直せる?過去何年まで遡れる?

年末調整の時期が過ぎ、2月になると確定申告シーズンとなります。本来、日本の所得税は申告納税制度といって、納税者が自ら所得と税額を計算することが前提です。そのため、なんらかの事情があって年末調整を受けていなくても、確定申告によって税額が精算されます。

【年末調整をしなかった場合のやり直しは、過去何年分できる?動画で解説】



たとえば、年末調整で配偶者控除配偶者特別控除扶養控除が適用漏れになった場合、あるいは年末調整では処理できない医療費控除の手続きをするには、確定申告をすれば税金を取り戻すことができるのです。
   

やり直しには「再年末調整」という手もあるが、できる手続きは限られる

年末調整で申請し忘れた控除などがあって修正したい際、給与所得者本人に源泉徴収票を交付する翌年の1月末日までであれば、再年末調整という方法もあります。ただし、
  • そもそも年末調整で対応可能な項目は限られてしまう
  • 医療費控除などを受けるには確定申告が必須
  • 勤務先としては、年末調整のやり直しとなると所得税の過不足精算だけでなく、源泉所得税は給与支払報告書の再発行など事務が煩雑になるので歓迎されない
などが注意項目としてあげられるでしょう。

医療費控除のほかにも、雑損控除ふるさと納税などの寄附金控除(注)、適用1年目の住宅ローン控除は年末調整で処理できません。これらの所得控除を受けて税金を取り戻すための確定申告の方法についてみていきましょう。

ワンストップ特例を申し込んだふるさと納税は確定申告は不要ですが、たとえばA、B、C、D、Eの5つの自治体にふるさと納税を行い、A、B、Cにはワンストップ特例申請し、DとEの自治体だけ確定申告をするという対応にはなりません。この場合、A、B、C、D、Eの5つの自治体すべてのふるさと納税の節税手続きを確定申告でやり直す必要が出てきます。
 

確定申告で税金を取り戻す「還付申告」なら過去5年まで遡れる

サラリーマンやパート・アルバイトといった給与所得者は本来、確定申告を提出する必要はありません。ただし、税金を取り戻すための還付申告なら過去5年に遡って可能。つまり「正しい申告をするための猶予期間が5年ある」とも言い換えられます。

税法の規定では、控除漏れがあった翌年の1月1日から5年間はいつでも確定申告書を提出できるとされています。3月15日という確定申告の期限に縛られることもありません。

たとえば、平成30年分の医療費控除などの適用漏れに気づいたとします。この場合、平成31年1月1日から5年間、つまり、令和5年12月末日まで、通常の確定申告書の提出期限である3月15日といった日付けに関係なく、いつでも申告書を受け付けてくれます。なお、この場合に使う確定申告書には還付申告用といった特別な様式があるわけではなく、通常のものに書けばOK。給与所得者なら申告書A様式を使います。
 

すでに確定申告書を提出していると「更正の請求」が必要

ただし、その年分の確定申告をすでに提出してしまっていると、対応方法が異なってきます。

前述のとおり還付申告とは、給与所得者など確定申告の提出義務がない人が、適用漏れになっていた所得控除等を申告し、払い過ぎた税金が還付になるケースを指します。

ここでポイントとなるのが、確定申告書をすでに提出したか提出していないかということ。いったん確定申告書を提出したとなると、税額が過大で還付を受けたい場合は更正の請求をすることになります。
 

同じ更正の請求でも、遡れる期間が5年の場合と1年のみの場合が

確定申告の更正の請求についても、「いつまで遡れるのか」という観点からさらに2区分に分類できます(近年、この更正の請求の手続きができる期間について税制改正がありました。そのため期間を切り分けて理解する必要があるのです)。

法定申告期限(=本来の申告手続きの期限)が平成23年12月2日より前か、平成23年12月2日以降かの2区分です。このいずれかによって、遡れる期間が1年か5年かに分かれるのです。

たとえば、平成22年分あるいは平成23年分の確定申告書を出した後、本来より税額が多いことに気付き、更正の請求をするとします。

●平成22年分の確定申告書
法定申告期限は平成23年3月15日、つまり平成23年12月2日より前だと、1年しか遡れません。したがって、更正の請求の期限は平成23年3月16日から平成24年3月15日の間でした(もう間に合わない)。

●平成23年分の確定申告書
法定申告期限は平成24年3月15日、つまり平成23年12月2日以降だと、5年遡れます。したがって更正の請求は、平成24年3月16日から平成29年3月15日の間に行えばよかった、ということになります。
確定申告遡れるのは過去何年?…… 法定申告期限により、更生の請求で遡れる期間が異なる(出典:国税庁資料) 

法定申告期限により、更正の請求で遡れる期間が異なります(出典:国税庁資料)
 

なお、「税額が過大に計上された申告書をすでに提出してしまっている」という要件を満たさないと、そもそも更正の請求の対象外という取扱いを受けることもあります。

たとえば、「通常の申告書を提出してしまったフリーランスが、後日、上場株式の譲渡損失で繰越控除だけ受けたいことが判明した場合」です。この場合、上場株式の譲渡損失とフリーランスの事業所得は損益通算、つまり、ことなる所得の差し引きができないので納税額に影響を与えません。このような場合、「税額が過大に計上された申告書をすでに提出してしまっている」ということにはならないため、更正の請求の対象案件にはならないのです。
 

所得控除の適用漏れは損、サラリーマンでも確認し必要なら確定申告を

いずれにしても、確定申告書を提出する際は所得控除や税額控除の適用漏れがないよう細心の注意が必要です。

特に給与所得者や公的年金受給者は、給与所得控除や公的年金等控除が個人事業主でいうところの必要経費にあたり、節税効果は大きいもの。所得控除や税額控除の適用漏れがあると税金面で損をするわけです。

なお、更正の請求を行ったからといって、払い過ぎた税金がすぐに還付されるわけではありません。受け取った税務署側が「納税者の主張が正しいのかどうか」と検討し、「確かに納税者の主張に理がある」と判断されれば、減額更正という行政手続きがとられて還付されることになります。

確定申告で税金を取り戻そうと検討しているなら、すべての控除の適用漏れ項目をいまいちどチェックしてみましょう。

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