マーケティング/マーケティング事例

SONYはチャレンジャーか?フォロワーか?(4ページ目)

SONYがiPod追撃を目指してウォークマン最高峰のXシリーズを投入した。かつて携帯音楽プレーヤーで圧倒的なリーダーの座に君臨していたSONYであるが、果たしてトップの奪取なるか?その戦略に隠されたものとは?

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

激しいリーダー争いが続けられるゲーム機市場

ipod
Wiiは競争上の地位に応じた戦略のセオリー通りに成功を収めた
ゲーム機市場では、携帯音楽プレーヤー同様激しいマーケットシェア争いが続いている。

もともとゲーム機市場は、1983年に発売された任天堂のファミリーコンピューターが日本における草分け的な存在だ。「スーパーマリオブラザーズ」や「ドラゴンクエスト」などのキラーソフトと共に、1万4800円という手頃な値段にもかかわらず、家庭でゲームセンターと同じようなゲームができるとして大ヒットを記録。任天堂がゲーム機市場でリーダーの座を確固たるものとする。

この任天堂が独走するゲーム機市場に割って入ったチャレンジャーがプレイステーションを擁するSONY。SONYは1994年に卓越した映像技術を売りにしたプレイステーションで任天堂の牙城を切り崩すと、2000年には更なる進化を遂げたプレイステーション2を投入しゲーム機市場を席捲。SONYは任天堂を抜き去り、瞬く間にゲーム機市場のリーダーの座に君臨した。

この両雄が再び熱い次世代ゲーム機戦争を繰り広げたのが2006年。リーダーのSONYがゲーム機市場初のブルーレイディスクを搭載した高機能マシン『プレイステーション3』を投入すると、任天堂はゲームを“体感”するコントローラーが特徴の『Wii』でトップを目指す。

結果はより多くの消費者にゲームの楽しさを伝えることに成功したWiiの圧勝となった。

競争上の地位に応じた戦略のセオリーから言えば、ゲーム機市場でリーダーに君臨するSONYが目指すべきは市場の拡大とマーケットシェアの拡大である。つまり、より一般に受ける商品の投入を図る戦略が定石だ。

ところがSONYは、この定石に反して機能を強化したマニア向けの製品を市場に投入する。価格が安いものでも5万円弱と一般のユーザーには手の届きにくい価格設定も裏目に出た。

一方で任天堂はチャレンジャーの定石どおり、これまでにはなかった直観的に操作できるコントローラーを筆頭に差別化した製品を投入して、これまでゲームに馴染みのなかった女性や年配層まで獲得し、目論見通りにSONYから盟主の座を奪取することに成功した。

一時期SONYのプレイステーション2は80%ものマーケットシェアを確保していたが、戦略を一歩間違えれば、圧倒的なリーダーもその座から転げ落ちることになるのである。

ゲーム機市場では戦略のミスによりリーダーの座から陥落したSONYだが、携帯音楽プレーヤーではどうなるのか?次ページでSONYの戦略を検証していくことにしよう。
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