マーケティング/マーケティング事例

キリン「氷結」に見るブランド進化論(2ページ目)

ブランドとは変えてはいけないものでしょうか?それとも変え続けるべきなのでしょうか?多くの企業がこの問題に頭を悩ませています。今回は10周年を迎えるキリン「氷結」をケースに企業がブランドに対してどのような対応を取るべきかを検証していきます。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

キリン「氷結」に見るブランド進化論とは?
 

商品が溢れる現代、消費者が飽きるのは早い。

商品が溢れる現代、消費者が飽きるのは早い。

一般的にブランドとは、変わらないことによって、消費者の信頼を獲得し、相応のプレミアムを実現することができます。

ただ、現在は商品のライフサイクルが極端に短くなって消費者は次々と市場に投入される商品に飽きが来るサイクルも異常に早まっています。

今やいくらブランドを確立したとしても、消費者の微妙なニーズの変化にいち早く気付いて対応できなければ支持を失い、いかにトップブランドといえども衰退の危機が迫っているのです。正にビジネス界では今、過酷な生存競争が行われていると言っても過言ではないでしょう。

かつてダーウィンは進化論を研究した際に、生物が生き残るための1つの結論に至ります。

「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。唯一生き残るものは、変化できるものである。」

これは取りも直さず現代のビジネスに当てはめることもできます。キリンはRTD市場において最も強く、最も賢い企業です。ただ、油断して市場のニーズを読み間違えれば、2007年にこれまで成功を収め続けてきた「AKB流」でフレーバーを増やした戦略が裏目に出て30%近くの売上減に見舞われたように、いかにトップブランドといえども簡単に坂道を転がるように売上を落とすことが現実に起こり得るのです。

恐らくキリン自体、マーケットシェアトップという地位に驕り、油断していたわけでもなく、消費者のニーズの分析を怠っていたわけでもないでしょう。現にキリンのマーケティング部は市場リサーチ室と連携してマーケティング戦略を練るなど、他社以上に力を入れてマーケティングに取り組んでいます。この事実が物語っているのは、今や多様化した消費者のニーズに的確に対応することがいかに難しいかということでしょう。

市場はその原理として、適切に変化できない企業の生存を許しません。企業は規模の大小を問わず、常に環境に対して変化し、いくら確立されたブランドであっても絶えず進化し続けなければ生き残ることさえ難しいのが現実なのです。今やビジネスはそんな厳しい時代を迎えていると言っても決して過言ではないでしょう。

「ブランドとは変えてはいけないものと変えなくてはいけないものを見極め、市場の変化に応じて進化していかなければならない」

紆余曲折を経て10年を経た今でも、トップブランドに君臨し続けるキリン「氷結」にブランド進化論の神髄を見た気がします。

(データ出典:日経MJ7月19日付朝刊1面『「氷結」10年目原点回帰』)
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