社員が迷い、停滞するのはフィードバックがないから
会社に入って数年間は仕事に無我夢中で没頭する時期であり、新しいことを多く学ぶ機会がありますから、やりがいを感じるもの。でも、ちょっと落ち着いたり、次のステップに移動する際にふと我を振り返ると、「自分は何をやっているのか」と考える機会も増えます。また、「一体どこに向かっているのか」「自分は何に向いているのか」という疑問も起こってくる時期でもあります。その原因の多くは、自分がどのような印象や影響を人に与えているのかを認識していないことにあります。すなわち、フィードバックを受ける機会が少ないため、自分が見えないのです。フィードバックをするのはマネージャーの大事な仕事です。そこで、部下をレベルアップさせるフィードバックについて取り上げます。
<目次>
フィードバックは現在地と目標とのズレを伝えること
フィードバックとは、もともと電気工学の用語で「電気回路で出力の一部を入力側に戻る」という意味があり、軍事用語では「砲弾の着弾点が目標からどのくらいずれているかを射手に伝える」という意味で使われています。マネジメントにおいては、自分が組織や集団でどんな役割を担っていてどんな立ち位置にいるか、相手にどのような印象を与えていたり影響を及ぼしているかについて、客観的な事実を当事者に伝える方法として使われます。フィードバックをもらうことで井の中の蛙にならず、多様な視点で物事をみることができ、客観的に現状把握できより成長できる機会になります。
「部下のパフォーマンスが悪い」という問題―部下が怠けていたりやる気がなかったり、積極性に欠けるとしたら、大抵はフィードバック不足にあることが多いものです。
しかし、多くのマネージャーはこう言うでしょう。「業績の数字はいつも見せているし、注意はしている」と。フィードバックとは、過去の行動のデータを用いて、その人の行動を「目標達成するのに必要な行動」に変化させることです。ですから、情報やデータは以下の2つの機能を持つ必要があります。
1.目標に対して現在どこにいるか
業績目標や身に付けるべき能力に対して、現在はどこにいるのかを伝えます。例えば「売り上げ目標1000万円に対し、今は450万円だね」など。
2.目標達成するには何をする必要があるのか
目標を達成する上で今どんな行動をとっているのか、どれくらいずれているのかを伝えます。例えば、「チームを牽引する立場でいるのに、メールへの返事が常に遅いね。レスポンスは3時間以内にしてほしい」など。
フィードバックをする際には、この2つについて伝えることができるよう情報を用意することが必要です。
効果的なフィードバックのタイミング
コミュニケーションにおけるフィードバックとは、「コミュニケーションを交わしている相手が自問自答ではなく、相手に向けて伝えていることをその人に返す」ということですが、フィードバックを伝えるタイミングとして、次のような状況に有効です。■相手が目標に向かって進んでいるとき
うまくいっていることを伝えることで、改めて行動が促進されます。
■相手の行動に微妙な変化が感じられるとき
以前と違った行動をしているとき。それが良い方向に向かっている場合は後押しし、反対に後退しているようだったらすぐに指摘する。
■行動が止まっていると感じられたとき
自分が身動きできないとき、薄々わかっているのに新しいことを始めるきっかけがつかめないもの。それを指摘することで、新しい行動を始めるきっかけ作りとなります。
■フィードバックを求められたとき
フィードバックを求められた時は、本人が課題認識を持っている証拠。いつでもフィードバックできるよう準備していることです。
フィードバックの伝え方
フィードバックを効果的に伝える方法には2種類あります。1.YOUメッセージ(あなたメッセージ)
YOUメッセージは、相手がとっている行動や状態を伝えるメッセージです。「あなたは毎日2分遅刻しています」「あなたは話しかけられても、パソコンの画面から目を離さずに私の話を聞いています」など。できるだけ客観的な事実を鏡のように返します。YOUメッセージは、自分が無意識でやっていることに気づく機会となります。
2.Iメッセージ(私メッセージ)
これは「私」を主語にして伝えることメッセージです。「私はあなたの声を聞くと元気になります」「私はあなたと打ち合わせをするとイライラする」など、その人によって自分が感じる主観的事実を伝えること。Iメッセージは、自分が及ぼしている影響を知る機会となります。
多くの場合、人は自分がしていることや及ぼしている影響についてぼんやりとわかっていながらも、具体的には知らないものです。フィードバックを得ることにより、有益な行動を続け、不必要な行動はやめるという選択をすることができるようになります。
上司、同僚、部下との関係性を知る360度フィードバック
360度フィードバックとは、上司、同僚、部下など、自分を取り巻く身近な人たちからマネジメントスタイルやコミュニケーションの方法についてフィードバックをもらうことです。360度フィードバックを社内で導入している会社は多くありますが、ほとんどの場合は評価用としか使われていません。従って多くの人は、360度フィードバックに拒否反応を示しています。しかし、360度フィードバックは、本人が上司、同僚、部下に及ぼしている影響力について知る有益な機会です。評価のためのツールではなく、結果を踏まえて本人がどのように思っているのか、自分とのギャップは何か、どの行動を続けどの行動をやめるかについて、マネージャーが部下と一緒に話をするためのツールとして使えば、本人の行動をステップアップさせる貴重な機会となります。
未来を予測させるフィードバック方法
フィードバックはすでに起こった事態をもとに伝えるということであれば、先を予測して伝える「フィードフォーワード」もあります。「君のチーム運営は能力の格差によって、理解できない人がいる」がフィードバックであれば、「その方法を続けるとメンバーはどうなるだろうか」と未来に目を向け、方向を修正させることがフィードフォワードです。
マネージャーが的確にフィードバックを行い、未来に向けてのフィードフォワードを実践すれば、部下は自分のことを現在進行形で把握することができ、能力を意識的にフルに活用できるようになります。
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