コーチング/モチベーションアップ

部下のモチベーション・やる気を上げる3つのポイント

部下のモチベーションを上げ、仕事そのものに対する自発的なやる気を上げるのは、リーダーや上司の役目です。行動を促す上で大事なのは具体的な目標とリクエスト。ここでは、部下のモチベーションを上げる3つのポイントをそれぞれ解説していきます。

平野 圭子

執筆者:平野 圭子

コーチングマネジメントガイド

部下のモチベーションを上げ、やる気スイッチを押すのは上司の役目

部下のモチベーションを上げるには

モチベーションそのものに働きかけることは難しい

  モチベーションという言葉は、人材育成の場面で常に聞かれます。また、仕事の能力を判断する上で、「あの人はいつもモチベーションが高いから優秀だ」とか「モチベーションが低いからうまくいかない」という言葉も職場でよく使われています。

モチベーションには「動機づけ」や「やる気」という意味があります。チームをリードしているマネジャーにとって、チームメンバーのやる気を上げて目標を達成させることは日常的な課題。ともすれば、毎朝顔を見るたびに、「この人は今やる気があるか、ないか」というのをチェックしていることでしょう。仕事ができる人や業績が高い人に対して「あの人はモチベーションが高いから成功している」「やる気がある人は強い」と評価するのは簡単ですが、では、モチベーションはどうやったら上がるのでしょうか。

ここでは、部下がやる気を出し、目標に向かって行動するための3つの要素を取り上げます。  
 
<目次>
 

部下のモチベーションを上げる方法1:方向性を決める

行き先を明確にすることで動けるようになる

行き先を明確にすることで動けるようになる

学生のころを思い出してみてください。受験勉強や試験勉強に取り組む際、モチベーションを高めることは重要な課題だったことでしょう。ときには勉強しやすい部屋作りに終始したり、勉強をする気になるために音楽を聴いたりして、肝心な勉強に到達するまでに多くの時間を費やしてしまうことも。

鉛筆を持ち教科書を広げればすぐに始められるのに、そこに至るまで多くのエネルギーを消費してしまった経験は誰にもあることでしょう。

これは、モチベーションを上げること自体が目的になってしまったケース。これに似たことが仕事上で起きていないでしょうか。目標が何であるかが明確でないのに、やる気だけに働きかけても時間の無駄。

営業など達成目標が具体的に数値化されている人は目標を意識しやすいのですが、それ以外の業務に携わっている人に自分の仕事の目標は何かと聞いてみてください。「仕事のスピードを上げたい」「顧客の満足度を上げたい」「操作ミスをなくしたい」など、願望を言語化したものくらいしか出てこないことが多いことに気づくでしょう。これでは、行き先が十分に明確ではありません。ゴールが明確でないのに、一所懸命やる気に働きかけても結果は出ないでしょう。

部下のモチベーションが低いとしたら、以下のポイントに注意し、目標を具体化することです。

効果的な目標設定の方法には次のことがあります。
  • 達成したかどうかを測る基準が明確である
  • 目標を数値化する
  • いつまでに達成するかの期限がある
  • 複数の目標に対する優先順位がはっきりしている
  • 重要度が高く、緊急度が低い事柄を選ぶ
  • 目標達成するための行動が明確にあり、数値化している
  • 目標達成する過程で、どのような成長が望めるかが明確である
方向性が見えると、一歩先に進めるもの。部下の動きが鈍かったり、モチベーションが感じられないようでしたら、目標を具体化するところから始めましょう。
 

部下のモチベーションを上げる方法2:リクエストする

効果的なリクエストをすることで相手に冒険をさせることができる

効果的なリクエストをすることで相手に冒険をさせることができる

「成長するには今までやってきたことを乗り越えることだ」。これに似たような言葉を何回も聞いたことがあるでしょう。しかし、私たちが冒険できないのは、勇気や、やる気がないからではありません。今までのやり方で、ここまで無事に生き残ってきたわけですから、これ以上危険なことに身をさらす必要がないのです。これは自然な反応です。このことを理解せずに、「思いっきりやれ」とか「冒険してみろ」というのには無理があります。

それを理解した上で、部下が今までやってきたことのさらに上を目指すには、「リクエスト」することです。「売り上げを2倍にしてほしい」「新商品のアイディアを明日まで出してほしい」など、リクエストとは、人が自分自身で想像したり、単独でできたりする範囲を超えて何かを実現できるように人を指導したり、後押しをすることです。

部下やチームメンバーにリクエストを通じて挑戦させると、人は自分ひとりでは手の届かないところにある可能性に気づき、それをつかみとろうという行動を起こすようになります。このようなリクエストは、相手に想像の限界を超えて成長させることができます。 これこそが行動を起こそうというモチベーションにつながります。

リクエストするタイミングには次のことがあります。
  • 相手を挑戦させることで成長の機会があると見た時
  • 問題を解決するにあたって緊急性が要求される時
  • お互い強い信頼関係があり、リクエストをする土壌がある時
  • 本人自身が気づいていない可能性を伝えたい時
今までやってきた安全な方法から一歩先に行かせることは、そう簡単なことではありません。行動するための動機づけは「まずは安全であること」が基盤にあるからです。ですから、相手のやる気に働きかけるのに必要なのはモチベーションそのものではなく、行き先の具体化と、成長へのあと押しが必要です。
 

部下のモチベーションを上げる方法3:手にしたいものを明確化する

自分がどうなるか、ということに人は関心がある

自分がどうなるか、ということに人は関心がある

  目標が具体化し、あなたが部下の背中を後押ししたとして、最後に大事なのは、「これをすることで私が手にするものは何?」という問いかけへの答えです。これは「WIIFM」といいます。What's in it for me?の頭文字をとった言葉です。(参考文献:「3分間コーチ」158ページ)

どんなに会社や組織の目標を自分のことのように部下が話していたとしても、本当にその人本人にとってどんな価値や意味があるのかを具体化しない限り、それが達成されることはありません。全体の目標を達成することで、自分は何が手に入るのか、個人的なレベルまで落とすことが、モチベーションへの働きかけとなります。

■参考文献
「3分間コーチ―ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術」
伊藤守・著 ディスカヴァー・刊

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