赤字覚悟でお客を引き寄せる目玉商品
全ての席を0.01ポンド(2円)で販売するわけではないので、経営へのダメージは最小限に食い止めることができます。正確な座席数は表示していませんがおそらく5席未満など非常に少ない限定数で募集しているのではないでしょうか。このような限定座席ということを勘案すれば、0.01ポンドという運賃で多くの顧客の関心を引き、売上を上げるための目玉商品として企画されたものと理解することができます。私達が日常よく見かけるスーパーのチラシで赤字覚悟の目玉商品を提示してお客を引き寄せるのと同じ方法なのです。
価格というものは、商品の要素の中でも非常にパワフルなメッセージ性を持っています。意外性のある価格提示を行うだけで多くの顧客の注意を引き、購入意欲を喚起することができます。ロンドン―ローマ間の航空運賃は同じ日付でブリティッシュ航空のフライトを調べてみると最も安いもので68.5ポンド(約13700円)。0.01ポンド(2円)という運賃が提示されていれば、気をひかないわけがありません。もし、旅行を計画するとしたらひとまず選択肢の1つとして候補に挙げられる可能性は非常に高いのではないでしょうか。
低価格で顧客を引き寄せ値段を吊り上げるマーケティング戦略
人は一旦購入を決めると追加購入に対しては心理的障害が低くなりどんどん購入してしまう! |
たとえば、あなたは車を購入することを決めた時にどんどんオプションを加えてしまい、トータル価格が膨れ上がったという経験はないでしょうか? もしくはジャケットを買うと決めてショップに行ったとしても、シャツやブラウスなど予定以外の商品を追加購入した経験はないでしょうか?
人は購入するまでは心のバリアを高めて非常に慎重な検討を行います。しかし、いざ購入を決定すると、追加購入や支払いに対しては心理的な障壁が低くなってしまうのです。
ただし、驚くべき価格で顧客を引き付けて徐々にトータル価格を引き上げていくマーケティング戦略は両刃の剣。導入する場合には慎重を期す必要があります。最初に提示した価格とあまりに乖離するようなことになれば、顧客が騙されたと感じる危険性が高いからです。そのように騙されたと感じたお客が戻ってくることは二度とありません。
マーケティング戦略の真の目的は、いかに長く顧客と良好な関係を築いていくことにあります。この驚くべき価格で顧客を引き付けて徐々にトータル価格を引き上げていくマーケティング戦略は、確かに短期的には効果を発揮するかもしれません。しかし、長い目でみればビジネスで最も重要な顧客の信頼を失う可能性が高くなるという事実はしっかりと認識する必要があるでしょう。
(注)為替相場はわかりやすいように1ユーロ=160円、1ポンド=200円で計算しています。